異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第十五章 信条と約定

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「とにかく今はマティアス様を助けます」

 僕は魔法を唱えようと、強引にマティアスに向けて両手をかかげた。
 ところがそれは、シャノンが構えを解き、刀身を鞘に納めたのとほぼ同じタイミングだった。

「私の負けね」
 シャノンが大きなため息をついた。
「今、あなたとやり合うつもりはない」

「それは賢明だな」
 ヒルダも杖を下ろす。

「ただし一つ条件があるわ」
 シャノンがヒルダに鋭いまなざしを向けて言った。
「王女を連れて帰るのは邪魔しないけど、彼女にこれ以上酷いことをしないと約束して」

 ヒルダは少し考え、渋々と返事をした。

「……まあ、いいだろう。それは約束してやる」

 その瞬間、二人の殺気に満ちたオーラがすっかり消えた。
 森の中がシンと静まり返る。

「ではシャノン、話がまとまったところで残りの竜騎士どもを一気に片付けるぞ」

「ちょっと待ってヒルダ、もう一つだけ。あの白魔法使いの少年のことだけど、彼も助けてあげて――」

 と、シャノンが森の中を見回す。

 ダメだ、時間が足りない!

 魔法を唱えながら二人の会話を聞いていた僕は、マティアスと一緒に戦うことを断念した。
 治療はまだ始まったばかり。
 マティアスは剣を取ることはおろか、立つのがやっとの状態だからだ。

 ヒルダが『リカバー』を使いマティアスを治療する僕に気付いたのは、それからすぐのことだった。

「ちっ! ザコが、させるかっ!!」
 ヒルダは怒鳴って杖をふりかざした。

『――ダークフレア!!』

 闇の爆破魔法!

 ヒルダの持つ杖の先から、太陽の黒点のような球状の黒いマグマが発生し、こちらに向かって飛んでくるのが見えた。

『ダークフレア』は、『ストーン』や『デス』と違い、物理的な攻撃魔法。
 今のマティアスに、あのマグマが当たれば確実に命を失ってしまう。

 ええい、こうなったら、なるようになれ!

 僕は『リカバー』を唱えるのを中断し、前に飛び出して、マティアスを庇うように大きく両手を広げた。

 次の瞬間――

「バンッ!」という鼓膜に響く大きな爆発音がして、視界が黒煙で遮られた。
 すべてを焼き尽くすドス黒い炎に、僕は包み込まれてしまったのだ。
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