異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第十八章 バロンの城

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 だが衛兵はマティアスが止めるのを無視し、とっとと城の中の方へ入っていってしまった。

「くっ……藪蛇やぶへびだったか」
 マティアスはがっくりと肩を落とす。
「グリモに気付かれる前に、なんとしてでも城内に入ってしまおうと思ったのだが……」

 グリモ男爵が来るまで、もうできることは何もない。
 そこで僕は、男爵についてリナに質問してみることにした。

「あの、リナ様。リナ様はグリモ男爵をご存じなのですか?」

「ええ、一応は」
 リナが答えた。
「ロードラント王国の中でも有名な政治家ですから。……いえ、政治家だった、と言うべきですね」

「……だった?」

「はい。男爵が王府でご活躍されていたころ、私はまだ子供だったので直接お会いしたことはないのですが、それでも非常に優秀な方だったということは聞いています」

「そうだったんですか。でも今はなんでこんな辺境のお城の城主に……?」

「それは――少し話が長くなるのですが……」
 と、リナは周囲に声が漏れないよう、ごく小さな声で言った。
「かつては豊かだったロードラント王国も、長きに渡るゴート帝国との戦争で国庫は疲弊ひへいし、近年では莫大な借金まで抱えるまでになっていました。そこでルドルフ王――アリス様のお父上ですね――が抜擢したのが、当時若手の官僚であったグリモ男爵だったのです」

「なるほど」

「グリモ男爵は王様の期待に応え、財務卿ざいむけいに就任するとすぐにその辣腕らつわんを発揮し、瞬く間に王国の財政を立て直すことに成功しました」

「え!? そんな有能な人が、なんで政治家を辞めたんですか……?」

「いろいろ理由はあると思いますが、一番の原因は上級貴族や豪商、高位の聖職者たちの恨みと反発をかったことです。男爵は王国の財政を再建するため、そういったお金持ちの人たちを狙い撃ちにして重税を課しましたからね」

「でも、グリモ男爵には国王様という強力な後ろ盾があったのでは?」

「ええ、その通りです。ところが……バレてしまったんです」

「バレた?」

「はい……不正が」

「不正!?」

「しっ! 声が大きいです。その話しを大っぴらにするのは、今の王国では禁忌《タブー》となってますから」
 と、リナが口に一本指を当てた。
「確かに男爵は財務卿《ざいむけい》としては有能な人でしたが、男爵自身なかなか奢侈しゃし贅沢ぜいたくを好む人で――」

「……もしかして」

「そうなんです。男爵は、自分が集めた王国の税金の一部を自分のふところに入れてしまったのです。いわゆる不正な蓄財ですね」

 金持ちには厳しいのに、自分はずいぶんちゃっかりしているというか――
 いくら能力がある人でも、それでは仕方ない……。
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