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第二十四章 油断

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 僕はリナとグリモ男爵に事情を簡単に説明した。

「実はお二人が戦いの様子に気を取られている間、この『炎の壁ファイアウォール』を打ち消すため何度か『ブレイク』という白魔法を唱えてみたんです。けれどミュゼットの魔力が強くて、どうしても壁を壊すことができませんでした。かといって無理にでも乗り越えようとしたら、みんな確実に焼け死にます』

「あら、それならユウちゃん」
 と、男爵が言った。
「ここから壁越しに魔法を唱えればいいんじゃない? ミュゼットまで届く何かいい魔法はないの?」

「いいえ男爵様、それも残念ながら無理なんです。このファイアウォールはただの炎の壁じゃない。強固な結界になっていて、僕がどんな魔法を使おうがすべてかき消されてしまいます」

「ええっ、そうなの!?」

「はい、つまり今、ミュゼットさんとハイオークは高い壁に囲まれた箱庭の中で戦っているようのもので、こちらからは一切手出しができません。だから何とか彼女に結界を解除してほしいんですが……」

「そうよねぇ。でもあの子、意地っ張りだから……」
 男爵が顎に手を当ててため息を漏らす。

 すると、僕と男爵の会話を聞いていたリナが、突如壁の前に駆け寄りミュゼットに大声で呼びかけた。

「ミュゼットさん!! いいですか? ハイオークの弱点は頭ですよ!! そこをよーく狙ってください!!」

「んー!」
 ミュゼットは相当疲れが出てきらしく、はぁはぁと肩で息をしながら返事をした。
「そんなことボクもとっくに分かってるよ~。でもコイツ、頭に魔法を当ててもビクともしないんだもん!」

 その通り、確かにミュゼットは、さっきから『フレイムショット』の炎の弾丸をハイオークの顔と頭に何発か命中させていた。

 が、それでもハイオークはへっちゃらだった。
 おそらく、特効武器の『オーク殺し』ですら貫通できなかった固い皮膚と頭蓋骨に阻まれ、唯一の急所である脳まで炎の弾丸が届いていないのだろう。
 
 となると、今のままでは限りなくまずい。
 ミュゼット一人では、ハイオークは絶対に倒せないということからだ。
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