魔王様、仕事して下さい!

家具屋ふふみに

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歴史から忘れ去られた存在

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「マリの種族は狼族。それは間違いないの。でもね、狼族って実は2種類いるんだ」
「2種類?」
「うん。というべきかな……基本的に狼族は身体能力が高く、本能的に身体強化を使いこなすの。でも身体能力が高い分、魔力は少なめ」
「じゃあ身体強化はそう長くできないんですか?」
「そうなる。でもね、それを克服した狼族もいたんだ」
「克服…?」
「うん。まぁ身体能力は純粋な狼族に劣るんだけど、魔力が多くてそれを身体強化で補えるようになった。それが、狼族のもう1つの種族、【銀狼族】」
「銀狼族…」
「そう。あなたのことだよ、マリ」
「…え?」

 わたしが、銀狼族…?確かに毛並みは銀色かもしれないけれど…

「前に自分が不器用だと言ってたね」
「は、はい…他のヒトからも言われました」
「その不器用って言葉なんだけど、要するにマリが銀狼族で他のヒトより身体能力が劣ってたから、そう言われてたんだよ」
「……」

 まさか今になって自分が不器用と呼ばれていた原因が分かるとは…

「そして銀狼族は魔力が多い影響で、獣と会話出来たんだ。銀狼族の中でも数は少なかったんだけどね」
「なるほど…それがわたしが会話できた理由という訳ですか」
「うん、そう」
「…でも、どうして過去形なのですか?」

 ユーリ様が話す内容は、全て過去形だった。

「…その銀狼族はね、純粋な狼族から嫌われていたんだ」
「嫌われていた?」
「魔力が多いことを羨んだんだよ」

 でも銀狼族は純粋な狼族より身体能力で劣るのだから、そんなことを羨む必要は無いと思うんだけど…

「…力はより強い力に支配される。それが掟だ。物理だけでは、魔法には勝てないんだよ」
「………」

 だから、羨んだ。憎んだ。

「…そしてある日、争いが起きた」
「………」
「数で勝る狼族に劣勢となりながらも、銀狼族は必死で抗った。………そして、その争いはある日突然終わりを告げた」
「……どうなったんです?」
「…、銀狼族は負けたことになっている」

 世間的…?

「本当は話したらダメなんだけど…同族だしね。銀狼族は世間的には絶滅したことになってる。もう500年以上前の話。でも少数ながら生きていよ」

 また、過去形…

「寿命でね。命を繋ぐことが出来なかったんだ。だから、この世界にいる銀狼族は、マリ。あなただけなの」
「わたし、だけ…」
「所謂先祖返りみたいなことだね。まぁ深く考える必要は無いよ。銀狼族は歴史から忘れ去られた存在でもあるからね。バレることはほぼない」
「…どうして、歴史から?」

 どこまでの規模かは分からないけれど、大きな争いであったことに間違いはないはずだ。それなのに忘れ去られるって…

「…忘れ去られた理由。それは、都合が悪かったから」
「都合が悪かった?」
「争いを起こした狼族にとってね、その存在は都合が悪かったんだ。だから歴史から消された。そして、そのことすら忘れ去られた。それが真実だよ」
「そう、ですか…」

 …あれ?じゃあその真実をユーリ様が知ってるのは何故…?

「…ほらっ!お仕事頑張ってね!じゃっ!」
「あっ!」

 まるで逃げるようにして、ユーリ様が転移してその場から消えた。
 ……あ、その時に生きてたからか。年齢言いたくなかったのね……



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