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28話 私は悪くないのよ?
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さてさてお土産のお披露目も終わったという事で、早速アリーシャさんがお土産を使ってくれるらしい。もう尻尾がブンブン荒ぶりますよ。ついでにリボンもヒラヒラ揺れるから、傍から見ると凄い躍動感がありそう。
「さてと。着けたばかりだけど一旦外しちゃうわね」
「首輪…腕輪も外してしまいましょうね」
そうして言われるがままに尻尾のリボンと右前脚の腕輪を外して貰ったのだけれど、そのままいきなり濡らすのでは無くてまずはブラッシングかららしい。
「まずはブラッシングをして毛に絡まったゴミを取るんですよ」
「それと絡まりを解す為でもあるわね。アヤメは凄く綺麗な毛並みだけど、こうして見ると結構絡まってるわね」
「明日にはギルド長と会う事になりますし、隅々まで磨いてあげますねっ!」
ミリアさんはその言葉通り本当に隅々まで私を綺麗にするつもりのようで、チラリと見えた道具の山には歯ブラシらしきものまであった。……今後は食べ物を口にする機会も増えるだろうし、私自身もちゃんと気を配ろっと。
程良い力加減でブラッシングをされ続ける事暫く。睡眠を必要としない私だから眠気を感じないけれど、多分普通の動物ならもう寝てるんじゃないかと思うくらいには気持ちよかった。
「今後もブラッシングしてあげますね」
「人間みたいに自分で梳くのは難しいでしょうしね。毛繕いはまたちょっと違ったものだし」
そのアリーシャさんの言葉でハッと思い出した。そうじゃん、私この身体になってから毛繕いを一度としてしていないじゃん。まぁやり方なんて知らないから当たり前と言えば当たり前なんだけど……もしかして本来なら本能とかでやり方を知るものなのかな。まぁ考えたって答えは出ないし、今は置いておこう。
「じゃあいよいよ洗っていくわね」
「今更ですけどアヤメは水は大丈夫ですか?」
本当に今更だね? まぁ私は何度も水竜ちゃんの居る湖に潜ってるから、当然ながら水に対する拒否反応は無いよ。
取り敢えず分かりやすいように大きく頷いて答えれば、ほっとミリアさんが安心したような表情を浮かべた。
「じゃあ流していきますね。顔にかからないよう頭は上げておいて下さいね」
まずは身体から洗っていくようで、言われるがままに頭を上げる。すると丁度ミリアさん達を見下ろす形になって、如何に私の身体が大きいかが改めて理解できるね。だって今私地面に伏せてる状態なのに、立った状態のミリアさん達を見下ろしてるんだもん。
どうやって濡らすのかなって思ってたけど、どうやらミリアさんが魔法で水を作り出してそれを使うらしい。パシャっと私の背中で水球が爆ぜると、冷たい水がツツーっと背中から流れていくのを感じた。思わず身震いしそうになったけれど、今したらミリアさん達が悲惨な事になるから我慢する。私は出来る狼だからねっ。
「……キリがないわね」
「アヤメは大きいですからねぇ」
続け様にパシャパシャと水球がぶつけられるんだけど、ぜんぜん濡れたように見えない私の姿にアリーシャさんがそう呟く。すいませんねぇ大きくて。
「ガレフ達も手伝って。ミリアの魔法だけじゃ間に合わないわ」
「分かった」
「しゃーねぇなぁ」
これでは流石に駄目だとなり、アリーシャさんがガレフさん達に救援を求めた。ここには小さめの水場もあるし、そこから汲めば何とかなりそうだね。一応私も魔法で水を出したんだけど、ミリアさんに止められてしまった。これは私に対する労いだから、私に仕事は無いらしい。そう言われてしまったらどうしようもないよね。頑張れ、ガレフさん達。
力強い男達の協力もあって、私の身体は遂にびしょびしょになった。……普通喜ぶ事じゃないよね、これ。
「じゃあ背中から垂らしていくので、じっとしていて下さいね」
そう言いながらミリアさんがキュポンと子気味良い音を立てて瓶の栓を抜き、背伸びをして私の背中へとその瓶を傾ける。踏み台かなにかあれば良かったね…。
角度的に見えないけれど、伝わる感覚からして瓶から垂れてきたのは結構トロトロした液体だね。匂いは爽やかめな…ミント系かな? ちょっと薬っぽい感じがするけど……。
「これは従魔用の洗料なのですが、身体についた虫などの殺虫効果もあるそうですよ」
「アヤメには不要かとも思ったのだけれど、最初に使うならこれがいいとお勧めされてね。どう? 匂いとか気にならない?」
あー…確かに嗅覚が鋭い子達には敬遠されそうではあるかもね。私は別に気にならないから、大丈夫だよという意味を込めて頷いておく。店員さんにお勧めされたのなら安心安全なものだろうし。
十分な量を垂らし終えると、ミリアさんの手が私の背中の毛をわしゃわしゃと揉み始める。すると次第にモコモコと白い泡が山になっていく。いやでもあの…これ垂らしすぎでは…?
「わわっ」
「凄いことになったわね……お腹の方は私がするわ」
あまりの泡立ちようにアリーシャさんが呆れつつ、余分な泡を掬い取ってお腹の方へと持っていく。そして心做しかミリアさんより入念に洗い始めた。……あれだね。ミリアさんがよく私のお腹に涎を垂らすからだね。
その後は脚先から尻尾に至るまで隅々揉みくちゃにされ、またしてもガレフさん達によるバケツリレーによって運ばれた水で洗い流された。ブルブルしていい? いいの? やった!
アリーシャさんからの許しを得た私は、ブルブルと勢い良く身体を振るわせる。すると事前に私がしたい事に気付いて下がっていたアリーシャさん以外がびしょ濡れになった。それを見て爆笑するアリーシャさん、結構いい性格してると思うの。
その後はびしょ濡れになった三人を私とアリーシャさんで乾かしたり、ミリアさんが私の口の中に頭を突っ込んで歯磨きをしたりと色々ありつつも隅々まで磨かれ、明日に向けての準備を整えていった。ギルド長、どんな人かなぁ…好戦的な人じゃなければ良いんだけど。
「さてと。着けたばかりだけど一旦外しちゃうわね」
「首輪…腕輪も外してしまいましょうね」
そうして言われるがままに尻尾のリボンと右前脚の腕輪を外して貰ったのだけれど、そのままいきなり濡らすのでは無くてまずはブラッシングかららしい。
「まずはブラッシングをして毛に絡まったゴミを取るんですよ」
「それと絡まりを解す為でもあるわね。アヤメは凄く綺麗な毛並みだけど、こうして見ると結構絡まってるわね」
「明日にはギルド長と会う事になりますし、隅々まで磨いてあげますねっ!」
ミリアさんはその言葉通り本当に隅々まで私を綺麗にするつもりのようで、チラリと見えた道具の山には歯ブラシらしきものまであった。……今後は食べ物を口にする機会も増えるだろうし、私自身もちゃんと気を配ろっと。
程良い力加減でブラッシングをされ続ける事暫く。睡眠を必要としない私だから眠気を感じないけれど、多分普通の動物ならもう寝てるんじゃないかと思うくらいには気持ちよかった。
「今後もブラッシングしてあげますね」
「人間みたいに自分で梳くのは難しいでしょうしね。毛繕いはまたちょっと違ったものだし」
そのアリーシャさんの言葉でハッと思い出した。そうじゃん、私この身体になってから毛繕いを一度としてしていないじゃん。まぁやり方なんて知らないから当たり前と言えば当たり前なんだけど……もしかして本来なら本能とかでやり方を知るものなのかな。まぁ考えたって答えは出ないし、今は置いておこう。
「じゃあいよいよ洗っていくわね」
「今更ですけどアヤメは水は大丈夫ですか?」
本当に今更だね? まぁ私は何度も水竜ちゃんの居る湖に潜ってるから、当然ながら水に対する拒否反応は無いよ。
取り敢えず分かりやすいように大きく頷いて答えれば、ほっとミリアさんが安心したような表情を浮かべた。
「じゃあ流していきますね。顔にかからないよう頭は上げておいて下さいね」
まずは身体から洗っていくようで、言われるがままに頭を上げる。すると丁度ミリアさん達を見下ろす形になって、如何に私の身体が大きいかが改めて理解できるね。だって今私地面に伏せてる状態なのに、立った状態のミリアさん達を見下ろしてるんだもん。
どうやって濡らすのかなって思ってたけど、どうやらミリアさんが魔法で水を作り出してそれを使うらしい。パシャっと私の背中で水球が爆ぜると、冷たい水がツツーっと背中から流れていくのを感じた。思わず身震いしそうになったけれど、今したらミリアさん達が悲惨な事になるから我慢する。私は出来る狼だからねっ。
「……キリがないわね」
「アヤメは大きいですからねぇ」
続け様にパシャパシャと水球がぶつけられるんだけど、ぜんぜん濡れたように見えない私の姿にアリーシャさんがそう呟く。すいませんねぇ大きくて。
「ガレフ達も手伝って。ミリアの魔法だけじゃ間に合わないわ」
「分かった」
「しゃーねぇなぁ」
これでは流石に駄目だとなり、アリーシャさんがガレフさん達に救援を求めた。ここには小さめの水場もあるし、そこから汲めば何とかなりそうだね。一応私も魔法で水を出したんだけど、ミリアさんに止められてしまった。これは私に対する労いだから、私に仕事は無いらしい。そう言われてしまったらどうしようもないよね。頑張れ、ガレフさん達。
力強い男達の協力もあって、私の身体は遂にびしょびしょになった。……普通喜ぶ事じゃないよね、これ。
「じゃあ背中から垂らしていくので、じっとしていて下さいね」
そう言いながらミリアさんがキュポンと子気味良い音を立てて瓶の栓を抜き、背伸びをして私の背中へとその瓶を傾ける。踏み台かなにかあれば良かったね…。
角度的に見えないけれど、伝わる感覚からして瓶から垂れてきたのは結構トロトロした液体だね。匂いは爽やかめな…ミント系かな? ちょっと薬っぽい感じがするけど……。
「これは従魔用の洗料なのですが、身体についた虫などの殺虫効果もあるそうですよ」
「アヤメには不要かとも思ったのだけれど、最初に使うならこれがいいとお勧めされてね。どう? 匂いとか気にならない?」
あー…確かに嗅覚が鋭い子達には敬遠されそうではあるかもね。私は別に気にならないから、大丈夫だよという意味を込めて頷いておく。店員さんにお勧めされたのなら安心安全なものだろうし。
十分な量を垂らし終えると、ミリアさんの手が私の背中の毛をわしゃわしゃと揉み始める。すると次第にモコモコと白い泡が山になっていく。いやでもあの…これ垂らしすぎでは…?
「わわっ」
「凄いことになったわね……お腹の方は私がするわ」
あまりの泡立ちようにアリーシャさんが呆れつつ、余分な泡を掬い取ってお腹の方へと持っていく。そして心做しかミリアさんより入念に洗い始めた。……あれだね。ミリアさんがよく私のお腹に涎を垂らすからだね。
その後は脚先から尻尾に至るまで隅々揉みくちゃにされ、またしてもガレフさん達によるバケツリレーによって運ばれた水で洗い流された。ブルブルしていい? いいの? やった!
アリーシャさんからの許しを得た私は、ブルブルと勢い良く身体を振るわせる。すると事前に私がしたい事に気付いて下がっていたアリーシャさん以外がびしょ濡れになった。それを見て爆笑するアリーシャさん、結構いい性格してると思うの。
その後はびしょ濡れになった三人を私とアリーシャさんで乾かしたり、ミリアさんが私の口の中に頭を突っ込んで歯磨きをしたりと色々ありつつも隅々まで磨かれ、明日に向けての準備を整えていった。ギルド長、どんな人かなぁ…好戦的な人じゃなければ良いんだけど。
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