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31話 嘘だ
クーリアさんとあった日の夜。早速とばかりに睡眠オプションとしてミリアさんを抱き締めてみたら、逆に興奮したミリアさんが眠れなくなりましたとさ。なんでよ。
「くぅ…くぅ…」
(やっと寝た……)
なんとかミリアさんを宥め賺して窒息するんじゃないかってくらいぎゅぅ~っと抱き締め続けたら、漸くミリアさんから穏やかな寝息が聞こえてきた。これミリアさんにはやっちゃ駄目な行為だね。学んだ。
暫く待っても起きる様子が無かったので、ゆっくりと身体をスライドさせてミリアさんの頭をアリーシャさんが用意してくれた枕に乗せる。コレ、私が夜な夜な出掛けてる事に気付いた時に買ってきてくれたんだよね。いつも地面に下ろすの申し訳無かったからむっちゃ有難いの。
(よしっ)
腕章オッケー。アイテム袋オッケー。水晶は…ガレフさんが腕章に縫い付けてくれたから大丈夫。ほんと手先器用で凄いよねガレフさん。
「…ん、行くの? アヤメ」
「っ!?」
さていざ出発というところでいきなり声を掛けられ、思わずビクッ! と身体が跳ねる。その事にクスクスと忍び笑いを零していたのは、私に声を掛けてきた張本人たるアリーシャさんだ。
「ごめんなさいね、驚かせちゃって。それで準備は大丈夫なの?」
「ガウッ」
「そう。アヤメなら心配要らないでしょうけど、気を付けてね」
純粋に心配してくれたアリーシャさんに頷いて答えつつ、安全地帯を後にする。まぁそもそも私だって毎日負傷者に遭遇している訳じゃないから、今日で実際にギルドの業務を出来るかは分かんないけどね。
たったかたったか洞窟内を駆けながら、ついでに宝箱が無いか確認。おっ、ここは怪しい……
本能的に何処か引っ掛かる壁を見付け、恐る恐る前脚を近付ける。すると案の定ぬるりと壁をすり抜けたので、どうやら私の勘は外れていなかったようだ。
(たのもー! ……って)
ワクワクしながらいざ壁の中へ入った私だったけれど、入った瞬間真っ先に目に飛び込んできたものによって一気に気持ちが急降下する。
偽装された壁によって阻まれていたのか、壁の中には濃い血の匂いが充満していた。そしてその匂いの元を辿れば、宝箱の手前で倒れている人間に行き着く。
(………)
ゆっくり、その人に近付いていく。うつ伏せとなり倒れた人の顔は見えないけれど、その手はまるで最後の希望を求めていたかのように宝箱へと伸びていた。
「…ガウッ」
手を、触れる。その途端伝わってくるのは、硬く、冷たい感触。
……分かっていた。この場所が、人にとって極めて危険な場所である事は。でも忘れていた…ううん、見ない振りをしていた。だってミリアさん達を失う想像なんて、したくなかったから。
だから。
(……)
個体名:西脇 美涼
だから。
大丈夫だって、きっとまた会えるって、信じていた。
状態:死亡
こんなの、嫌だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ…っ!
でも、現実はどこまでも身勝手で、残酷で。全て分かってしまう自分の目が恨めしい。
「………」
鼻先で身体を起こす。血に濡れた顔は、私の記憶と全く同じで。でも、固く閉じられた瞼は、もう開かない。
なんで。なんでよ。どうして。
私が遊んでいたから? もっと早く出ていれば助けられた?
……ううん、きっと結果は同じだった。それでも、と思わざるを得ない。それでもと、思いたい。
こんな結末は認めない。絶対に、認めない。
傷を治す。ポーションなんて必要無い。
傷を治す。また私の名前を呼んでよ。
傷を治す。お願いだから。
傷が、塞がる。ねぇ。
――――帰ってきてよ。
「くぅ…くぅ…」
(やっと寝た……)
なんとかミリアさんを宥め賺して窒息するんじゃないかってくらいぎゅぅ~っと抱き締め続けたら、漸くミリアさんから穏やかな寝息が聞こえてきた。これミリアさんにはやっちゃ駄目な行為だね。学んだ。
暫く待っても起きる様子が無かったので、ゆっくりと身体をスライドさせてミリアさんの頭をアリーシャさんが用意してくれた枕に乗せる。コレ、私が夜な夜な出掛けてる事に気付いた時に買ってきてくれたんだよね。いつも地面に下ろすの申し訳無かったからむっちゃ有難いの。
(よしっ)
腕章オッケー。アイテム袋オッケー。水晶は…ガレフさんが腕章に縫い付けてくれたから大丈夫。ほんと手先器用で凄いよねガレフさん。
「…ん、行くの? アヤメ」
「っ!?」
さていざ出発というところでいきなり声を掛けられ、思わずビクッ! と身体が跳ねる。その事にクスクスと忍び笑いを零していたのは、私に声を掛けてきた張本人たるアリーシャさんだ。
「ごめんなさいね、驚かせちゃって。それで準備は大丈夫なの?」
「ガウッ」
「そう。アヤメなら心配要らないでしょうけど、気を付けてね」
純粋に心配してくれたアリーシャさんに頷いて答えつつ、安全地帯を後にする。まぁそもそも私だって毎日負傷者に遭遇している訳じゃないから、今日で実際にギルドの業務を出来るかは分かんないけどね。
たったかたったか洞窟内を駆けながら、ついでに宝箱が無いか確認。おっ、ここは怪しい……
本能的に何処か引っ掛かる壁を見付け、恐る恐る前脚を近付ける。すると案の定ぬるりと壁をすり抜けたので、どうやら私の勘は外れていなかったようだ。
(たのもー! ……って)
ワクワクしながらいざ壁の中へ入った私だったけれど、入った瞬間真っ先に目に飛び込んできたものによって一気に気持ちが急降下する。
偽装された壁によって阻まれていたのか、壁の中には濃い血の匂いが充満していた。そしてその匂いの元を辿れば、宝箱の手前で倒れている人間に行き着く。
(………)
ゆっくり、その人に近付いていく。うつ伏せとなり倒れた人の顔は見えないけれど、その手はまるで最後の希望を求めていたかのように宝箱へと伸びていた。
「…ガウッ」
手を、触れる。その途端伝わってくるのは、硬く、冷たい感触。
……分かっていた。この場所が、人にとって極めて危険な場所である事は。でも忘れていた…ううん、見ない振りをしていた。だってミリアさん達を失う想像なんて、したくなかったから。
だから。
(……)
個体名:西脇 美涼
だから。
大丈夫だって、きっとまた会えるって、信じていた。
状態:死亡
こんなの、嫌だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ…っ!
でも、現実はどこまでも身勝手で、残酷で。全て分かってしまう自分の目が恨めしい。
「………」
鼻先で身体を起こす。血に濡れた顔は、私の記憶と全く同じで。でも、固く閉じられた瞼は、もう開かない。
なんで。なんでよ。どうして。
私が遊んでいたから? もっと早く出ていれば助けられた?
……ううん、きっと結果は同じだった。それでも、と思わざるを得ない。それでもと、思いたい。
こんな結末は認めない。絶対に、認めない。
傷を治す。ポーションなんて必要無い。
傷を治す。また私の名前を呼んでよ。
傷を治す。お願いだから。
傷が、塞がる。ねぇ。
――――帰ってきてよ。
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