5 / 32
4話 第一人間発見!
しおりを挟む
怪我した水竜ちゃんを助けてから数日後。散歩中の私の耳が、聞き慣れない足音を捉えた。
(二足…ゴブリンじゃなさそう?)
聞こえてきた足音的に、相手は二足歩行の生物。一応この洞窟にゴブリンの他にオークっぽいやつなんかもいるのは確認済み。でもそれらの足音とは少し違う気がする。
(まぁ行ったら分かるよね!)
私の姿は今まで水竜ちゃん以外にはバレていないから、見に行くのも気楽でいい。
テクテクと自らの足音は消しながら音を辿る。暫くすると、反響した声が聞こえ始めた。
(もしや人間…?)
言葉を扱う魔物に心当たりは無い。とすれば私は、この世界で初めての人間に遭遇した可能性がある訳で。
……ちょっと緊張してきたけれど、行かなきゃ何も始まらないので進む。
「――――?」
「―――、――――…」
次第に声が鮮明になっていく。音の響き方的に向こうから私に近付いてきているようなので、足を止めて壁際に寄る。
少しして僅かな明かりが通路の向こうから見え始め、明確な言葉が聞こえた。
「ねぇ深すぎない?」
「大丈夫だって。前にも来たんだし」
「そーそー。心配し過ぎ」
……どうやら相手はやはり人間で、それも女性三人組らしい。言葉が理解出来ると分かったのは有難いかもしれないね。
三人はそのまま私の前まで来たけれど、気付くことなく通り過ぎる。でも、その時目に入った物に思わず首を傾げた。
(…あれスマホでは?)
三人のうちの一人が持っていた、小さな光を放つ板。見間違いでなければ、あれはスマホだと思う。
それに先頭の人間が持っていた明かりは、見るからに普通の懐中電灯だった。
……と、取り敢えず後をつけてみようかな…?
音を立てないように、けれど見失わない距離感を維持して慎重に追い掛ける。
三人の身なりはかなり軽装。持っている武器からして、近接一人に遠距離二人かな。
「っ! 来たよ!」
戦闘を歩いていた人が敵の存在を感知して、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。それに呼応して二人が杖と思われる棒を取りだし、一人が何やら呪文っぽいのを詠唱しだした。
「―――【ブレイブ】!」
最後の言葉を言い放った瞬間、薄らと剣を持った人の身体が光った。多分攻撃力とかを上げる魔法なのかな?
「―――【ライト】!」
続けて更に魔法を使って、光る球を生み出した。成程、戦闘中はこれで明かりを確保するんだね。
そうして準備を整えた三人の前に、とうとう敵が現れる。私の耳が正しければ、そう強くもない敵だ。
………と、思っていたんだけど。
「マーダーゴブリン!?」
「しかも三体!?」
現れたのは、この階層でたまに見るタイプのゴブリン。でも人間達の反応的にヤバいやつっぽい? 確かに色は赤色で普通とはちょっと違うけど……ほんとにそれだけよ?
マーダーゴブリンと呼ばれた存在が人間を視認し、一気に駆け出す。それを見て漸く冷静さを取り戻したのか、前衛の人間が剣を構えた。
「―――【アイスランス】!」
後衛の人間が更なる魔法を放つ。生み出された三本の氷の槍が飛び出すが、そのどれもが躱されてしまう。
「はぁぁっ!」
しかしそれでテンポは乱れた。僅かに体勢を崩した個体を見逃さず、剣を振るう。
ガキンッと耳障りな音が響き、ゴブリンの持つナイフと剣がぶつかった。
「―――【フレイム】!」
前衛が一体に気を取られている間、そちらに近付かせないよう他の二体へ向けて火の玉を打ち出して牽制した。でもそれでヘイトが移ってしまったみたい。
「リサ!」
「こっちは大丈夫だから!」
向かってくる二体に対して、リサと呼ばれた人間が更に火の玉を放つ。そしてそれの後ろに隠すようにしてもう一人が放った氷の槍が、躱して体勢を崩した一体へ命中した。
「くっ…!」
残った一体がリサに飛び掛り、手にしていた古びたナイフを振るう。それを杖で辛うじて受け止めるも、だいぶ苦しそうだ。
「アイナ! 先にあっち!」
「分かった!」
その言葉を聞いて、アイナと呼ばれた人間が氷の槍を命中させたゴブリンへと向き直る。どうやらまだ生きていたらしい。
「―――【ボルトランス】!」
バチバチと光を放つ槍が放たれる。名前からして雷属性だろうそれは先程の槍より遥かに速くて、いとも簡単にゴブリンの胴体を貫いた。
最初からこれを使えば良かったのでは? と思うけれど、多分迂闊に使えない理由があるんだろう。
「―――【アースバインド】!」
再度リサに飛び掛ろうとするゴブリンの足元が突如として沈み、その動きを阻害する。そのチャンスを逃さず、至近距離から魔法を撃ち込んでゴブリンの頭を吹き飛ばした。
……私が言うのもなんだけど、容赦無いね?
「シオンは!?」
おっと。最後の名前はシオンか。全部響きとしては日本人っぽいし…やっぱり私の前提が間違っている説が濃厚?
シオンは何個か切り傷を貰っていたけれど、無事倒し切ったようだ。焦っていた割には、そこまで深刻な事態にならなかったのは良かったのかな。
「痛い?」
「ちょっとね。でも大丈夫」
「無理はしないでよ? あんたがやられると総崩れなんだから」
そうして三人が少し会話を交わしていると、次第にゴブリンの死体が消えていく事に気付いた。その現象は、私が初めて見るもので。
(ほほぅ…?)
私は倒してから直ぐに食べていたから、今までそれを見る事が無かったのかも。これは新しい発見だ。
「ほら結晶回収して帰るよ」
「だね。もう魔力限界だよ…」
彼女らが結晶と呼んだのは、ゴブリンの死体があった場所に残されていたキラキラ光る石だ。これが恐らく彼女達の収入源なんだろう。
(これ使って仲良くなれないかな…?)
今の私ならこの程度集めるなんて簡単だ。人間と敵対したい訳でも無いし、仲良くなれる口実があるのならそれに超したことは無い。
(二足…ゴブリンじゃなさそう?)
聞こえてきた足音的に、相手は二足歩行の生物。一応この洞窟にゴブリンの他にオークっぽいやつなんかもいるのは確認済み。でもそれらの足音とは少し違う気がする。
(まぁ行ったら分かるよね!)
私の姿は今まで水竜ちゃん以外にはバレていないから、見に行くのも気楽でいい。
テクテクと自らの足音は消しながら音を辿る。暫くすると、反響した声が聞こえ始めた。
(もしや人間…?)
言葉を扱う魔物に心当たりは無い。とすれば私は、この世界で初めての人間に遭遇した可能性がある訳で。
……ちょっと緊張してきたけれど、行かなきゃ何も始まらないので進む。
「――――?」
「―――、――――…」
次第に声が鮮明になっていく。音の響き方的に向こうから私に近付いてきているようなので、足を止めて壁際に寄る。
少しして僅かな明かりが通路の向こうから見え始め、明確な言葉が聞こえた。
「ねぇ深すぎない?」
「大丈夫だって。前にも来たんだし」
「そーそー。心配し過ぎ」
……どうやら相手はやはり人間で、それも女性三人組らしい。言葉が理解出来ると分かったのは有難いかもしれないね。
三人はそのまま私の前まで来たけれど、気付くことなく通り過ぎる。でも、その時目に入った物に思わず首を傾げた。
(…あれスマホでは?)
三人のうちの一人が持っていた、小さな光を放つ板。見間違いでなければ、あれはスマホだと思う。
それに先頭の人間が持っていた明かりは、見るからに普通の懐中電灯だった。
……と、取り敢えず後をつけてみようかな…?
音を立てないように、けれど見失わない距離感を維持して慎重に追い掛ける。
三人の身なりはかなり軽装。持っている武器からして、近接一人に遠距離二人かな。
「っ! 来たよ!」
戦闘を歩いていた人が敵の存在を感知して、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。それに呼応して二人が杖と思われる棒を取りだし、一人が何やら呪文っぽいのを詠唱しだした。
「―――【ブレイブ】!」
最後の言葉を言い放った瞬間、薄らと剣を持った人の身体が光った。多分攻撃力とかを上げる魔法なのかな?
「―――【ライト】!」
続けて更に魔法を使って、光る球を生み出した。成程、戦闘中はこれで明かりを確保するんだね。
そうして準備を整えた三人の前に、とうとう敵が現れる。私の耳が正しければ、そう強くもない敵だ。
………と、思っていたんだけど。
「マーダーゴブリン!?」
「しかも三体!?」
現れたのは、この階層でたまに見るタイプのゴブリン。でも人間達の反応的にヤバいやつっぽい? 確かに色は赤色で普通とはちょっと違うけど……ほんとにそれだけよ?
マーダーゴブリンと呼ばれた存在が人間を視認し、一気に駆け出す。それを見て漸く冷静さを取り戻したのか、前衛の人間が剣を構えた。
「―――【アイスランス】!」
後衛の人間が更なる魔法を放つ。生み出された三本の氷の槍が飛び出すが、そのどれもが躱されてしまう。
「はぁぁっ!」
しかしそれでテンポは乱れた。僅かに体勢を崩した個体を見逃さず、剣を振るう。
ガキンッと耳障りな音が響き、ゴブリンの持つナイフと剣がぶつかった。
「―――【フレイム】!」
前衛が一体に気を取られている間、そちらに近付かせないよう他の二体へ向けて火の玉を打ち出して牽制した。でもそれでヘイトが移ってしまったみたい。
「リサ!」
「こっちは大丈夫だから!」
向かってくる二体に対して、リサと呼ばれた人間が更に火の玉を放つ。そしてそれの後ろに隠すようにしてもう一人が放った氷の槍が、躱して体勢を崩した一体へ命中した。
「くっ…!」
残った一体がリサに飛び掛り、手にしていた古びたナイフを振るう。それを杖で辛うじて受け止めるも、だいぶ苦しそうだ。
「アイナ! 先にあっち!」
「分かった!」
その言葉を聞いて、アイナと呼ばれた人間が氷の槍を命中させたゴブリンへと向き直る。どうやらまだ生きていたらしい。
「―――【ボルトランス】!」
バチバチと光を放つ槍が放たれる。名前からして雷属性だろうそれは先程の槍より遥かに速くて、いとも簡単にゴブリンの胴体を貫いた。
最初からこれを使えば良かったのでは? と思うけれど、多分迂闊に使えない理由があるんだろう。
「―――【アースバインド】!」
再度リサに飛び掛ろうとするゴブリンの足元が突如として沈み、その動きを阻害する。そのチャンスを逃さず、至近距離から魔法を撃ち込んでゴブリンの頭を吹き飛ばした。
……私が言うのもなんだけど、容赦無いね?
「シオンは!?」
おっと。最後の名前はシオンか。全部響きとしては日本人っぽいし…やっぱり私の前提が間違っている説が濃厚?
シオンは何個か切り傷を貰っていたけれど、無事倒し切ったようだ。焦っていた割には、そこまで深刻な事態にならなかったのは良かったのかな。
「痛い?」
「ちょっとね。でも大丈夫」
「無理はしないでよ? あんたがやられると総崩れなんだから」
そうして三人が少し会話を交わしていると、次第にゴブリンの死体が消えていく事に気付いた。その現象は、私が初めて見るもので。
(ほほぅ…?)
私は倒してから直ぐに食べていたから、今までそれを見る事が無かったのかも。これは新しい発見だ。
「ほら結晶回収して帰るよ」
「だね。もう魔力限界だよ…」
彼女らが結晶と呼んだのは、ゴブリンの死体があった場所に残されていたキラキラ光る石だ。これが恐らく彼女達の収入源なんだろう。
(これ使って仲良くなれないかな…?)
今の私ならこの程度集めるなんて簡単だ。人間と敵対したい訳でも無いし、仲良くなれる口実があるのならそれに超したことは無い。
38
あなたにおすすめの小説
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
妖精の森の、日常のおはなし。
華衣
ファンタジー
気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?
でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。
あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!?
「僕、妖精になってるー!?」
これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。
・毎日18時投稿、たまに休みます。
・お気に入り&♡ありがとうございます!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる