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オスの三毛猫「しらぬい」の診療カルテ①パークサイド動物病院
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さくらが務めるパークサイド動物病院は関西のO区にある。獣医師2名、看護師2名受付1名計5人で営むホームドクター的な病院である。
公園そばにあるため来院は犬が多いが野生動物やエキゾチックアニマルと言われる小動物も診療している。
毎日バラエティに富んだペットと飼い主たちに出会えるので今の病院をさくらは気に入っている。
「松本先生おはようございます!」
「おう堂島、おはよ!昨日の夜間に急患が来て院長が一人で対応したみたいなんだ。」
「えッまたですか?診療時間内か私たちが居る時に来ればいいのに!」
「それがこの子ですか・・・」
中の動物を怖がらせないようカーテンで目隠しされた入院室のドアポケットには佐伯の几帳面な字で書かれた情報カードが差し込まれていた。入院日時は今朝の3時になっている。
「飼い主欄は、浄行寺青島?お寺の地域猫かしら」
そっとカーテンを開けると目の大きい小さな三毛猫が居た。
「シャ―ッッッヴヴヴヴヴ――ッ!」
「あ、ごめんごめん」
「堂島。その子オスなんだぜ」
「オスの三毛猫!!すごい、私初めてみた」
「ま、院長のカルテが間違っていなければ、なんだけどな。とにかく俺が来た時からずっと怒ってるんでまだ身体検査していないんだ。引継ぎ欄に朝の検診不要、とあるし」
さくらは驚いた。カルテの中が空白である。
「えっ?」と声に出すと獣医師の松本もそうなんだよね、と同意する。
「まあいつもどおり深夜のお客様には何か事情があるんだろうね」
そうこうしていると院長の佐伯美樹が2階の自宅から降りてきた。
「おはようございます。今日は予定していた手術に加えて1件手術の準備をお願いします。」
さくらが声のした方を振り向くと佐伯と目が合った。不自然なほど無表情だ。夜間診療があった日はたいていそうだな、とさくらは思う。
「おはようございます!なんのセットを準備したら良いですか?」さくらが気にしても仕方のないことだ。なるべく元気な声を出し佐伯に答える。
「会陰尿道ろうの手術を行います。避妊手術のセットにガーゼを20枚追加、電気メスを使います」
さくらはメモを取るこの状況に感謝した。事務的に朝礼を行う佐伯の顔を見ずに済むからだ。夜間診療の翌日、無表情を装う佐伯の目の奥には深い哀しみを隠しているように感じるのだ。
プルルルルー、と一番乗りの電話が鳴った。「さあ今日も怪我の無いようにお願いします」
さくらは今朝から姿が見えない自分の飼いネコ2匹のことがチラリと頭がよぎったが、どうせ部屋のどこかで寝ているのだろう、と深くは考えずそのことはすぐに忘れてしまった。
公園そばにあるため来院は犬が多いが野生動物やエキゾチックアニマルと言われる小動物も診療している。
毎日バラエティに富んだペットと飼い主たちに出会えるので今の病院をさくらは気に入っている。
「松本先生おはようございます!」
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「えッまたですか?診療時間内か私たちが居る時に来ればいいのに!」
「それがこの子ですか・・・」
中の動物を怖がらせないようカーテンで目隠しされた入院室のドアポケットには佐伯の几帳面な字で書かれた情報カードが差し込まれていた。入院日時は今朝の3時になっている。
「飼い主欄は、浄行寺青島?お寺の地域猫かしら」
そっとカーテンを開けると目の大きい小さな三毛猫が居た。
「シャ―ッッッヴヴヴヴヴ――ッ!」
「あ、ごめんごめん」
「堂島。その子オスなんだぜ」
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「ま、院長のカルテが間違っていなければ、なんだけどな。とにかく俺が来た時からずっと怒ってるんでまだ身体検査していないんだ。引継ぎ欄に朝の検診不要、とあるし」
さくらは驚いた。カルテの中が空白である。
「えっ?」と声に出すと獣医師の松本もそうなんだよね、と同意する。
「まあいつもどおり深夜のお客様には何か事情があるんだろうね」
そうこうしていると院長の佐伯美樹が2階の自宅から降りてきた。
「おはようございます。今日は予定していた手術に加えて1件手術の準備をお願いします。」
さくらが声のした方を振り向くと佐伯と目が合った。不自然なほど無表情だ。夜間診療があった日はたいていそうだな、とさくらは思う。
「おはようございます!なんのセットを準備したら良いですか?」さくらが気にしても仕方のないことだ。なるべく元気な声を出し佐伯に答える。
「会陰尿道ろうの手術を行います。避妊手術のセットにガーゼを20枚追加、電気メスを使います」
さくらはメモを取るこの状況に感謝した。事務的に朝礼を行う佐伯の顔を見ずに済むからだ。夜間診療の翌日、無表情を装う佐伯の目の奥には深い哀しみを隠しているように感じるのだ。
プルルルルー、と一番乗りの電話が鳴った。「さあ今日も怪我の無いようにお願いします」
さくらは今朝から姿が見えない自分の飼いネコ2匹のことがチラリと頭がよぎったが、どうせ部屋のどこかで寝ているのだろう、と深くは考えずそのことはすぐに忘れてしまった。
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