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最終章EX 星の英雄
158.火星戦線(3)
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「『雷の咆哮』」
Guoooooo!
現れた溶岩龍を、ゾートのスキルで砕くと、ボンガの『鉱物精製』スキルで、ジークと同じくらいの大きさの“岩人形”を造り、結界で覆って逆方向、今来た上方へと射出する。
ゼン自身は、ジークの気配を“隠形”で隠し、更に地割れの奥底、先へと進む。
「あの、出来の悪い人形は何じゃ?」
「身代わり。今、相手は機械的なセンサーが使えないみたいだ。こちらを気配とか、原始的な感覚で追っている。空を飛んでも行く先が解らなかったのは、そのせいみたいだから」
星の核であれ、溶岩であれ、機械をつけて武装は出来ないのだろう。
「長くは誤魔化せんじゃろう」
長く誤魔化せる程に頭は悪くない筈だ。それでも、時間稼ぎは必要だ。
「もう外殻は通り抜けている。岩石からなるマントル層は、地下深くになる程、温度と密度が高くなるらしいけど、ボンガの『鉱物分解』でなら、砂の中を進むようなものだから。
そして、外核にさえたどり着けば、そこは流体、液体金属だ。温度は四千から六千度」
(どのぐらいの熱さか、まるで分からないけど、耐熱障壁を、大き目の結界にして、二重三重、いや、何重にもして内側から、消えたら補充する無限障壁にするんだ。力が有限なのだから、無限はあり得ないけれど……)
ゼンは詰め込まれた知識は最大限活用する。本当に合っているかどうかの確証はないが。
外核まで行ければ、溶岩龍は光弾を使えなくなる。海の中で水鉄砲を撃つようなもの……で例えが合ってるかどうかは分からないが、つまりは遠距離攻撃が出来なくなる。
恐らく、実体でぶつかって来る、より原始的な戦闘法のみになるだろう。そこに、『流水』の強みが出る。
地中でも似た様なものではあるが、光弾は岩石が溶かせる。
それと、地上では漠然と感じていて、何か分からなかった感覚が、今地下深くに来て、やっと分るようになった事がある。
地上では、分散したヴォイドの気配もあって、それと混ざり、意味不明だった音。
声が、聞こえていた。
小さくか細いが、助けを求める声、だ。
「……星の核が、助けを求める、なんてあるんですか?」
それは、何故かゼンのみに聞こえていた様だ。
アルティエールも神々も、誰もその声の事を指摘しないのだから。
【……お主にそれが、聞こえるのなら、それは“星霊”の声じゃな】
【星の生命と共に、成長、進化を遂げる星の御霊だ。母星では、精霊王(ユグドラシス)がそれにあたる】
「……え”?」
ほとんど無意識レベルでゼンは、顔をしかめ、嫌な表情を浮かべている。
【お主とアレに確執があるのは知っておるが、そう露骨に嫌がるものではない。星の核から芽吹き、裏側から星を支えているのが世界樹(ユグドラシル)。その意志じゃぞ】
【もし、星霊の声が聞こえるのなら、完全に吸収されてはおらんのかもしれん】
「……そうですね」
話をしながらも、先に進む。
溶岩龍達が戻って来る気配があるが、ジークの方が速い。後ろは振り切れるだろう。
周囲から集まって来るのは別だ。
『鉱物分解』で行く道を切り開く。ついでに、進んだ後に岩を精製して、こちらに気づいた後方の溶岩龍が来にくくする。穴が開きっぱなしなら、後ろから光弾を撃たれてしまうだろう。
【もし、星霊が失われれば、この星は内部からも冷えて凍えた、生命の息吹が途絶える、死の惑星となるかもしれんな】
神の思わせぶりな一言。
「……だから、何ですか?」
【救えるのなら、ついでに救ってやって欲しいのだが……】
「倒せるかどうかすら分からないのに、さらに救え、ってどんな無理難題ですか!
貴方方は、ヴォイドの被害が他の次元に及ばない様に、俺等や師匠まで斬り捨てるつもりだった癖に、そんな事まで言い出すんですか?」
【……そうじゃな。ここは、太陽や月と違って、母星に与える影響は、ほぼないと言える。無慈悲に見捨てても、それは致し方なし、か……】
「わざとそういう言い方するの、止めてくれませんか?!俺は。無慈悲だから、どうのの話じゃなく、ほぼ無理そうだから出来ないって言ってるんですよ!」
「ほぼ、では、救える可能性がある、と言っているようなものじゃぞ?」
アルティエールまで余計な事を言い出す。
「出来るようならやる!出来ないなら諦める!それ以上はしないですからね!」
ゼンはもう、それ以上の問答は無駄、と打ち切った。
外核にたどり着いたのだ。
「結界に、対閃光防御フィルターを……いや、ジークの視界を調整すればいいのかな?」
「わかった、任せるのじゃ」
そして、とんでもない熱さの流体金属の中に潜航する。
やはり、龍達は光弾が撃てないようだ。動きも鈍くなった。
だがこれからは、先へ進めば進む程に熱くなる。
【ゼン、『次元シールド』の準備だ】
「はいはい、分ってます」
収納空間から出すのは、ジークのただ一つの専用装備。最初から左腕についていた小盾だ。
ゼン自身は盾を使わないので仕舞っていたが、これは機神(デウス・マキナ)を造ったアシモフが唯一、開発していた装備で、その性能は、受けた攻撃のエネルギーを次元の狭間に逃がす、という特殊な仕様のもだった。
次元間には、狭間、と呼称される、何も存在しない、次元と次元の緩衝地帯のような空間が存在する事は、ムーザルの様な科学の進んだ文明では観測され、認知されていたが、次元間移動そのものが、ありえない程のエネルギーを必要とし、実現不可能に近い技術であり、その間にある狭間には何もないが故に、何の有効利用も見出されていなかったが、ただ一人、アシモフ博士のみが、防御において、その狭間を、受けた力の逃げ道として利用する事を思いつき、開発されたのが次元シールドだった。
普通の場所での攻撃であれば、ゼンが『流水』で逸らしも反射も出来るのだが、今回のような地下空間全ての熱量が全方位で来るような場合、どこに逃がしても意味はない。
そこで、仕舞った盾をわざわざ出して使おう、という訳っだった。
狭間の容量は、測定不能なので、理論上は無限に力を吸い込めるのでは、と疑問符付の但し書きが取り扱い説明書にあるぐらいで、それが本当かは甚だ怪しいと言わざるを得ない。
それでも、気休め以上の物ではあるのだろう、と引っ張り出したのだ。これが後で、とても役に立つ事が分るが、それはまだ後の話だ。
今は、熱気の充満する流体金属の中で、また四方八方から集まって来る龍達を躱しつつ、ゼンはジークを進ませる。
海中等よりも余程抵抗がある筈だが、ジークはそれをものともせずに進む。
溶岩龍達よりも余程動きが速いため、敵は無数にいるが、躱してさばくのもそれ程苦ではなかった。
結界内に溜まって来る熱気も、次元シールドの指定を熱エネルギーのみ、とするだけで、中の熱気はすぐになくなり、逆に冷えて来る。
【熱エネルギーに指定したのだから、ゼロ度まで下がるのじゃろう】
融通の利かないシステムだった。
これだけ邪魔をして来るのだから、核(コア)を吸収したのは確かだろう、と思われるのだが、ならば相手は、この先の巨大な金属核が相手となるのだろうか、と推測したゼンの考えは、半分当たっていて、半分間違っていた。
外核を抜けたその先に、巨大な球形の空洞があり、ジークはその空き空間に、突如放り出されたのだ。
慌てて姿勢制御スラスターで態勢を立て直すと、その空間の中央に、まるで太陽の様に輝く巨大な球体を確認し、ゼンはアルティエールの言った、地下帝国にでも迷い込んでしまったのかと勘違いしてしまった。
だが、勿論そうではなかった。
その太陽の様な高エネルギーの球体から、紛れもなくヴォイドの強い反応を感知したからだ。そして、星霊の助けを呼ぶか細い声も、そこから聞こえていた。
「まさか、あれが核(コア)を吸収したヴォイド?じゃあ、この空間は何だ?」
【……恐らく、核(コア)が巨大だったので、圧縮して取り込んだのじゃろう】
縮めた分の空いた空間、と言う事らしい。
余りに眩しく強く、放射される熱エネルギーを次元シールドの盾を構えて取り込み、対峙する、ヴォイドと機神(デウス・マキナ)。
前代未聞の戦いの幕が切って落とされようとしていた。
(これを助けるって、何をどうしたらいいんだよ……?)
アドバイザーとしてついて来た筈の二柱の神々は、黙して語らない……。
*******
オマケ
ゼ「聞こうと思ってたんですが、女神の加護を受ける時、なんでサリサを連れて来たんですか?」
ミ【黒髪美女に、魔族の美女二人が良かった、と?】
ゼ「じゃなくて!なんでその立方体の器で来なかったのかな、と!」
ミ【ああ、これはもうこの二つしか、機能する物が残っておらんのじゃよ】
テ【神界と戦おう、と言うのだからな。神殿は取り潰され、器も壊され、廃棄されたのだ。この二つは、信心深い神官が、自宅の地下に隠していた物だ】
ゼ「成程……」
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