ジョーク集

柊谷

文字の大きさ
344 / 345

トラバント 2

しおりを挟む
前回トラバントを紹介した。

 東ドイツの存在がジョークであってほしいと言われた車だ。

「最も偉大な哲学者を教えてください」

「それはトラバントの運転達です。彼らは自分が運転しているものが自動車かどうか常に考えていますから」

 ソ連は戦後賠償の一環として東ドイツの工場から資材などを次々に持ち去り、イデオロギーに基づく計画経済を押し付けた。トラバントが産声を上げたのはちょうどそんな混乱期が一段落して、もはや戦後ではなくなった1958年のことだ。天然資源に乏しい東ドイツの経済を救うため、ドイツ車のブランドを取り戻すことは早急の命題であった。

「トラバントはどうしてプラスチック製なのですか?」

「鉄はすべてカーテンの材料にしてしまったからです」

 トラバントのボデイの主成分である繊維強化プラスチックは安全性を度外視すれば軽くて生産性が高いという魅力的な品だった。当時としては、まだ扱いにくくて手探りの部分が多かった素材だが、東西陣営ともに可能性を見出して研究を続けていた。

 ところがしばらく作っていると現場から様々な問題点があがってきた。

 そもそも大衆車で軽量化を追求する意味が薄い。
 原材料が揃ってきた今となっては奇をてらわずに金属で作った方が生産が楽っぽい。

 しかし、生産がようやく軌道に乗ってきたのと余った金属はソ連に強奪されたため東ドイツはむきになってトラバントの生産を続行した。

「軽快に走り出したトラバント止めるものはなにもない」

「ブレーキでさえも・・・」


 トラバントは30年近く大きな変化がなく、さながらタイヤのついたシーラカンスみたいな車だったが。これまたシーラカンスの如く微妙な進化はしている。

 P50・P60という初期型トラバント
 P601という後期型トラバントに大まかに二分できる。
 初期型の方がちょっと丸っこい。
 東ドイツでトラバントといえば、生産期間の長かった後期型のP601を指すことが多かった。

「トラバントP601とはどんな意味ですか?」

「600人が注文して一人が手に入れることができるプラスチックという意味です」

 プラスチック加工の関係で表面がざらつき独特の臭気がしたことが、トラバントがダンボール製などと揶揄された理由である。本当にダンボール製だったわけではない末期までは・・・

 しかし、なんだかんだトラバントは東ドイツ国民に愛された。

 屋根付きスパークプラグ
 個人所有できる公害
 自走尿路結石粉砕機
 悪臭が車の形をとったもの
 ヤギの餌
 国の恥
 共産主義の体現車
 鉄のカーテンに負ける車
 人が乗るパンジャンドラム

 などのユニークな愛称にはことかかない。

「なあ、あんたのトラバントとをバナナ一房と交換してくれよ」

「お前、俺を馬鹿にしてんのか?まず実の数を言えよ話はそれからだ」

 余談だが、トラバントは重力で燃料をエンジンに供給する構造なので燃料タンクがエンジンの上にある。したがって車の貧弱さもあわせて事故ると大変なことになるので要注意だ。日本で車検が通らない理由でもある。

「トラバントとミサイルの違いを教えてください」

「まず姿が見えて、遅れて轟音が聞こえ、最後に爆発するのがミサイル。一番と二番が逆なのがトラバントです」

 トラバントは極限状況で生まれた車である。したがって環境に対する考慮など微塵もない。2ストロークガソリンエンジンの搭載のこの車は環境毒性の高い排気ガスを放出し続け東欧諸国に深刻な汚染を引き起こした。このことを察知した東ドイツ政府はシュタージを使って国内の環境保護論者を始末して事なきを得た。

「世界一大きな車を教えてください」

「それはトラバントです。車体が3メートル、排気ガス50メートル、全長53メートルの超大型者です」

 自動車産業について、当初は東西ドイツは大差なかった。しかし、末期には残酷すぎるほどの差がついた。東ドイツでは年間約600万台の注文があったができたトラバントは約15万台であった。一方そのころ西ドイツでは様々な車を年間400万台作っていた。

 あるとき東ベルリンで銀行強盗が発生した。立てこもった強盗たちは包囲している警官隊に要求した

「人質の命がおしければ逃走用のトラバントを2台用意しろ。俺達は気が短いだ長くは待たない。10年以内にもってこい」

 作りが単純なので、素人でも簡単に修理できることがトラバントの数少ない利点である。

「トラバントを3回レストアしたらどうなりますか?」

「アウディになります」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦 そしてそこから繋がる新たな近代史へ

処理中です...