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~Legends~ 出会いの第1レーン
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逃した。あと少しだった。
全国大会決勝、男子100m。初出場とはいえあと少しで表彰台だったのに。
多加美高校3年の瀬川広夢(せがわひろむ)は4位で高校最後の大会を終えた。
スタートは完璧だった。持ち前のスタートダッシュで差は広げたが、後半の伸びはあまりよくないのが自分の特徴だ。最後の20mではさっきまで横目で見えていた上位3人はもう自分の前にいた。
その3人とは白鴎山学園の3年の北王翔(ほくおうしょう)、栄光学園3年の犀川天心(さいかわてんしん)、海山高校3年の和嶋賢太(わじまけんた)だ。
北王翔は100mに続き、200mでも優勝。
犀川天心は110mHで優勝。
和嶋賢太は100m第2位だ。
当然勝てるわけもなかった。初出場の自分は陸上界で有名なこの3人と決勝を走れただけ十分だった。
小さい頃から何事も遅咲きだった自分はいつも置いてかれていたから、せめて何かひとつ、誰よりも優れる何かが欲しかった。そんな時だった。昔、小学校で自分の夢を書くという授業があった。最初は思いつかなかったが、走ることが好きという理由で陸上選手を目指すことにした。その当時自分は走ることだけは誰よりも速く、誰よりも楽しんでいた。横から抜かす優越感、先頭の景色、顔に当たる気持ちのいい風、その時だけは幸せを感じるほど走るという単純な動作に心奪われていた。これが全ての始まりだった。
そこからは努力の日々だった。たくさん学び、たくさん怪我をし、たくさん悩んだ分、最後には結果に現れた。
そして高校最後の県大会の100m決勝、今日も心地よい風は僕の背中をそっと押してくれた気がした。セットの時の沈黙、そこから鳴り響くピストルの音と同時に蹴られるスタブロ、そして歓声の声、あっという間に、わずか10秒程で決着が着く。あぁ、僕が1番なんだ。初めて全国の切符を手にした。歓声の声と同時に吹いていた風もまるで僕を祝福しているかのようだった。
だが全国大会は甘くなかった。それでもこの瞬間をいつまでも味わいたい。全力で、されどいつも通りの走りで、そうしたら決勝まで進めた。でもやっぱりこの3人は強かった。だとしても表彰台に乗りたかった。4位より3位、3位より2位、2位より1位。壁は高かった。でも願ったところで結果は変わらない。僕の陸上は終わったのだ。
ある日、学校の校長室に呼ばれた。君に会いたい人がいると。ドアを開け、校長室にいたのは校長先生、そしてどこかで見たことのあるような人。席に座り名刺をもらうとそこには日本陸上競技会と書かれていた。僕は聞いた。
「私への要件とは何ですか?」
その人は答えた。
「私は日本陸上競技会会長を担当しております北王翔馬と申します。単刀直入に言いますと、君をU18日本代表選手として招集したいのです。」
驚いた。まさか自分に声が掛けられるなんて。
その瞬間止まりかけた陸上の歯車はまた動き始めた。
無論断る理由などない。僕は二つ返事で参加を決めた。
内容は西日本にある栄光学園での練習、続いて同じく西日本にある海山高校、東日本の白鴎山学園でのそれぞれ別れての練習だった。
全国大会決勝、男子100m。初出場とはいえあと少しで表彰台だったのに。
多加美高校3年の瀬川広夢(せがわひろむ)は4位で高校最後の大会を終えた。
スタートは完璧だった。持ち前のスタートダッシュで差は広げたが、後半の伸びはあまりよくないのが自分の特徴だ。最後の20mではさっきまで横目で見えていた上位3人はもう自分の前にいた。
その3人とは白鴎山学園の3年の北王翔(ほくおうしょう)、栄光学園3年の犀川天心(さいかわてんしん)、海山高校3年の和嶋賢太(わじまけんた)だ。
北王翔は100mに続き、200mでも優勝。
犀川天心は110mHで優勝。
和嶋賢太は100m第2位だ。
当然勝てるわけもなかった。初出場の自分は陸上界で有名なこの3人と決勝を走れただけ十分だった。
小さい頃から何事も遅咲きだった自分はいつも置いてかれていたから、せめて何かひとつ、誰よりも優れる何かが欲しかった。そんな時だった。昔、小学校で自分の夢を書くという授業があった。最初は思いつかなかったが、走ることが好きという理由で陸上選手を目指すことにした。その当時自分は走ることだけは誰よりも速く、誰よりも楽しんでいた。横から抜かす優越感、先頭の景色、顔に当たる気持ちのいい風、その時だけは幸せを感じるほど走るという単純な動作に心奪われていた。これが全ての始まりだった。
そこからは努力の日々だった。たくさん学び、たくさん怪我をし、たくさん悩んだ分、最後には結果に現れた。
そして高校最後の県大会の100m決勝、今日も心地よい風は僕の背中をそっと押してくれた気がした。セットの時の沈黙、そこから鳴り響くピストルの音と同時に蹴られるスタブロ、そして歓声の声、あっという間に、わずか10秒程で決着が着く。あぁ、僕が1番なんだ。初めて全国の切符を手にした。歓声の声と同時に吹いていた風もまるで僕を祝福しているかのようだった。
だが全国大会は甘くなかった。それでもこの瞬間をいつまでも味わいたい。全力で、されどいつも通りの走りで、そうしたら決勝まで進めた。でもやっぱりこの3人は強かった。だとしても表彰台に乗りたかった。4位より3位、3位より2位、2位より1位。壁は高かった。でも願ったところで結果は変わらない。僕の陸上は終わったのだ。
ある日、学校の校長室に呼ばれた。君に会いたい人がいると。ドアを開け、校長室にいたのは校長先生、そしてどこかで見たことのあるような人。席に座り名刺をもらうとそこには日本陸上競技会と書かれていた。僕は聞いた。
「私への要件とは何ですか?」
その人は答えた。
「私は日本陸上競技会会長を担当しております北王翔馬と申します。単刀直入に言いますと、君をU18日本代表選手として招集したいのです。」
驚いた。まさか自分に声が掛けられるなんて。
その瞬間止まりかけた陸上の歯車はまた動き始めた。
無論断る理由などない。僕は二つ返事で参加を決めた。
内容は西日本にある栄光学園での練習、続いて同じく西日本にある海山高校、東日本の白鴎山学園でのそれぞれ別れての練習だった。
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