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妹と掃除をしたワケ
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床を見渡す。とりあえず、落ちているものはないし動線も確保してある。机とベッドの上に服やら本やらが積み上がっているのはご愛嬌だが、それも後であるべき場所に戻せばいい。
掃除完了と言ってもいいだろう。
俺は今、大掃除をしていた。人生を賭けた大掃除である。
自分の部屋とリビングの掃除を終えた俺は、ラスボスに対峙する。意を決して『香澄の部屋』というボードが掲げてある扉をノックした。
「香澄、開けるぞ」
返事がない。普通なら入るべきではないが、香澄に限っては入っても良いという意味だろう。そう信じて扉を開けた。
「おに~、お疲れ~」
そこには、アニメ柄のTシャツにスウェットを履いた妹がビーズクッションにうつ伏せで突っ伏していた。
「掃除は、してないよな。知っていたよ」
「えへへ~」
散らかり放題の部屋で妹がなぜか誇らしげに笑う。我ながら妹を甘やかしすぎな気もするが、この笑顔を見ると厳しく接する気にはなれない。
しかし、今日ばかりは別だ。なにせ人生がかかっている。
「いいか、もし母さんにこの生活を見られたらどうなると思う?」
「生活感があるな~、って思う?」
この妹は生活感のある部屋と汚部屋を混同している節があるが、ここで言いたいのはそういうことではない。
「だらしないって思われるんだよ。母さんにだらしないって思われたらまずいだろ」
「そっか、確かにまずいね。じゃあこうしようよ。お母さんが来たら、わたしがおにいに部屋に行く」
「それで?」
「おにいが香澄の部屋にいて、この部屋はおにいの部屋ということにする。全て解決」
我が妹は本気で解決したと思っているらしく、ビーズクッションごと寝返りをうってビーズクッションの下に隠れてしまった。
「それじゃダメなんだよ。ただでさえ俺たちは未成年二人だけで暮らしているんだから、少しでもだらしないって思われたらこの生活を続けられなくなるんだ」
そう、妹はわかっていない。この生活がいかに脆いものかを。今回の急な母親の帰国も俺たちを父親の赴任先に連れて行こうというのが目的に違わないのだ。
「おにい、」
「なんだ?」
「おにいは香澄を捨てちゃうの?」
「いや。別に捨てるとか、そういう話じゃなくて」
すでに香澄は泣きそうになっていた。
「ごめんね。香澄がいるせいで、おにいは彼女ができなくて。そのまま結婚ができずに中年になって、結局一生妹を養うために生きるのは香澄のせいだよね」
「いや、別に香澄がいるから彼女ができないわけでは、じゃなくて俺一生養わなきゃいけないの?」
「だめ?」
ここはキッパリと「だめ」と言わなきゃいけないところだ。しかし、俺はいうことができない。さっきは否定をしたが、なんとなく今後もずっと妹の面倒を見て行くんだろうなという予感はしている。
「一生は、わからないけど。当面は俺が守ってやるよ」
「ありがと」
「だから掃除はしような。手伝ってやるから」
妹は「どうしてもやらなきゃダメ?」とか「立ち上がるの手伝って」とか言いながらやっとのことで掃除に取り掛かった。しかし、妹の部屋の掃除は難しい。ゴミだと思ったものが貴重のコレクションだったりする。かと思えば妹はエアコンのスイッチをゴミ袋に投げ入れようとするからそちらも目を離せない。
「おい、このペットボトル中身残ってるぞ?」
「あ、それね。おにい飲んでいいよ。不味かったけど」
そんな感じで軽口を叩きながら掃除をしていると、インターホンがなった。
「何か通販頼んだか?」
「どうだろう?頼んだかもしれないし、頼んでないかもしれない」
通販だろうと思い、インターホンの通話ボタンを押す。
『母で~す!』
咄嗟に通話停止ボタンを押してしまった。嘘だ、こんな早く来るなんて聞いていない。妹の部屋の掃除はまだ終わっていないし、自分の部屋も机の上やベッドの上が片付いていない。
「嵌められた」
「どうしたの?おにい」
妹が様子を見に来た。
「母さんが来た。鍵を持ってるはずだからすぐに上がってくる」
鍵が開けられる音がした。扉が開く。
「も~。ひどいじゃない。いきなり切るなんて!」
そう言いながら俺たち兄妹の母親は家に上がった。
テンションが高く、社交的な声に騙されてはいけない。俺たちの母親はとても計算高い人だ。
「久しぶり、母さん」
妹は俺の後ろに隠れてしまっている。
「香澄は元気?あら、そんなところに隠れてたの?」
母親に見つかった妹が俺の後ろから出てくる。
「ママは、香澄たちを連れて行くの?香澄を一人にしちゃうの?」
「連れて行く?一人に?どういうこと?」
視線で説明を求められた俺は、俺たちが今の生活を守りたいこと、父親の赴任先には引っ越したくないことなどを説明し、掃除が行き届いていないことを謝罪した。
「まあ、そんなことを気にしてたの?心配しなくていいわよ。もし貴方達を連れて行ったら私が夫婦喧嘩をした時に行く場所がなくなっちゃうじゃない」
掃除完了と言ってもいいだろう。
俺は今、大掃除をしていた。人生を賭けた大掃除である。
自分の部屋とリビングの掃除を終えた俺は、ラスボスに対峙する。意を決して『香澄の部屋』というボードが掲げてある扉をノックした。
「香澄、開けるぞ」
返事がない。普通なら入るべきではないが、香澄に限っては入っても良いという意味だろう。そう信じて扉を開けた。
「おに~、お疲れ~」
そこには、アニメ柄のTシャツにスウェットを履いた妹がビーズクッションにうつ伏せで突っ伏していた。
「掃除は、してないよな。知っていたよ」
「えへへ~」
散らかり放題の部屋で妹がなぜか誇らしげに笑う。我ながら妹を甘やかしすぎな気もするが、この笑顔を見ると厳しく接する気にはなれない。
しかし、今日ばかりは別だ。なにせ人生がかかっている。
「いいか、もし母さんにこの生活を見られたらどうなると思う?」
「生活感があるな~、って思う?」
この妹は生活感のある部屋と汚部屋を混同している節があるが、ここで言いたいのはそういうことではない。
「だらしないって思われるんだよ。母さんにだらしないって思われたらまずいだろ」
「そっか、確かにまずいね。じゃあこうしようよ。お母さんが来たら、わたしがおにいに部屋に行く」
「それで?」
「おにいが香澄の部屋にいて、この部屋はおにいの部屋ということにする。全て解決」
我が妹は本気で解決したと思っているらしく、ビーズクッションごと寝返りをうってビーズクッションの下に隠れてしまった。
「それじゃダメなんだよ。ただでさえ俺たちは未成年二人だけで暮らしているんだから、少しでもだらしないって思われたらこの生活を続けられなくなるんだ」
そう、妹はわかっていない。この生活がいかに脆いものかを。今回の急な母親の帰国も俺たちを父親の赴任先に連れて行こうというのが目的に違わないのだ。
「おにい、」
「なんだ?」
「おにいは香澄を捨てちゃうの?」
「いや。別に捨てるとか、そういう話じゃなくて」
すでに香澄は泣きそうになっていた。
「ごめんね。香澄がいるせいで、おにいは彼女ができなくて。そのまま結婚ができずに中年になって、結局一生妹を養うために生きるのは香澄のせいだよね」
「いや、別に香澄がいるから彼女ができないわけでは、じゃなくて俺一生養わなきゃいけないの?」
「だめ?」
ここはキッパリと「だめ」と言わなきゃいけないところだ。しかし、俺はいうことができない。さっきは否定をしたが、なんとなく今後もずっと妹の面倒を見て行くんだろうなという予感はしている。
「一生は、わからないけど。当面は俺が守ってやるよ」
「ありがと」
「だから掃除はしような。手伝ってやるから」
妹は「どうしてもやらなきゃダメ?」とか「立ち上がるの手伝って」とか言いながらやっとのことで掃除に取り掛かった。しかし、妹の部屋の掃除は難しい。ゴミだと思ったものが貴重のコレクションだったりする。かと思えば妹はエアコンのスイッチをゴミ袋に投げ入れようとするからそちらも目を離せない。
「おい、このペットボトル中身残ってるぞ?」
「あ、それね。おにい飲んでいいよ。不味かったけど」
そんな感じで軽口を叩きながら掃除をしていると、インターホンがなった。
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「嵌められた」
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妹が様子を見に来た。
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