ミナミ商店は今日も無許可で営業中

池堂海都

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 その時だった、それまで全く人の気配がしなかった下の階から足音がした。
 俺はさりげなく看板に手をかけ、いつでも隠せるように身構えた。
 足音はゆったりとした足取りで迷いなく階段を登ってきた。
「よ!」
 現れたのは、ミナミと同じくらいの背丈の女子生徒だった。奇怪なのはその服装で制服の上から黒いマントを羽織り、通常のものより大きめなフードを目元近くまで被っていた。そのせいで素顔は見えない。
「なんだ、情報屋か」
「おい、ミナミン。アタシがくるって知らせてなかったのか?」
「聞かれなかったからな」
 情報屋は校内でミナミ商店と並んで極めて高い信頼度で存在が噂されている存在だ。特徴は黒いマントと大きなフード。以前ミナミと「なぜ情報屋はあんな格好をするのか」という話をしたことがあるが、どうやら情報屋としてインパクトのある姿のイメージを流布することで普段の情報収集をしやすくするのが目的らしい。そのおかげで、情報屋の正体に関しては、美少女、美少年、人外、幽霊など様々な噂が存在する。
「それで、頼んだ調査はどうだった?」
「ガムの件だね。ミナミンの見立て通りだったよ」
 こいつ、俺より前に情報屋に相談してたのか。
「やっぱり。誰の仕業かわかるか?」
「そこまでは、取引の概要は掴んだが正体を巧妙に隠してある」
「覆面調査って頼めないかな?」
「それは無理だな。情報屋としてのリスク許容度を上回る。その代わり、取引の方法はまとめておいた」
 そう言って情報屋はメモをミナミに手渡した。
 
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