人を治さばベッドが2つ

あいいろの布団

文字の大きさ
8 / 39

第8話 拾ったキャンパスは…

しおりを挟む
先日の健康診断の帰りのヴェーラさんとの会話が未だに僕の脳裏に張り付いている。

_______

それは健康診断の帰りの事だった。

路地に入った途端ヴェーラさんが両手首を掴みながら僕を壁に押し付ける。

「ねぇシオくん?君、自分が何をしてるか分かってる?」

疲労と驚きで言葉が出ない。少し身体も震えている。嫌な記憶が段々と脳みそを支配していく。

「ごめんごめん、脅すつもりはないの。ただ君はもう少し自分が何をやっているか分かった方がいい。」

両手首を離された僕は身体の力が抜けてしまい地面にへたりこんでしまった。

ヴェーラさんは慣れた手つきでタバコに火をつけ僕の隣にもたれ掛かる。

「誰かから魔法と魔術について聞いたことはある?」

「うん、僕が使ってるのは魔法で、それが希少ってことは一応……」

「じゃあもう少し踏み込んで。
シオくん、あれ、どこで身につけた?」

「わ…分かんない、いつの間にか使えるようになってた……」

「はぁ、ますます怒れないじゃん。ハッキリ言うね。シオくんの使っているあの魔法はいわゆる神聖魔法の類。治癒魔法とも違う。この辺だとアンデルセン神父みたいな超がつく上級の神官が扱う門外不出の魔法だよ。もしあれを神官や神官騎士に見つかったら大変なことになる。」

「どうなるの?」

「確実に殺される。あそこはそういうところだからね。才能がありすぎるやつ、上を脅かすやつはいつだってそうなる運命なんだ。」

「それとねシオくん。君診察のとき魔力を流して身体の弱い所を探してたろ。」

「うん……」

「あれは禁術ってやつだよ。」

「は?……なんでよ…」

「あの魔法の本当の使い方は『病の処方』だ。身体の弱っている所を探し劣化した、あるいは歪んだ魔力を送り込むことで病を意図的に引き起こす外道の魔法だ。」

「え…………」

「大丈夫、君はまだ子供だ。その力を正しく使う術を身に付ければいいんだよ。まぁまずは治癒魔術からだね。大丈夫、魔法が使える君なら一瞬だよ。大丈夫、君は大丈夫だ。」

そう言いながらヴェーラさんは長い間僕を後ろから抱きしめ続けた。

________

最近ウチに加わった少年シオくん。なんでもとても腕の良い治癒士らしい。特に再生や解毒に優れていて教会から客を奪っているだとか。いい気味ね。

新しい仕事で組むことになり顔合わせでまぁびっくり。シャノとつるんでギャンブルや荒事に突っ込む話をよく聞くからもっと荒っぽい子だと思っていた。目の前にいるのは小さい少年。幼くて純粋で私なんかが触って穢れないか心配だ。

実益と趣味で触ってみた感じこの辺の子じゃない。恐らくもっと遠い所……違う大陸の血ね。この骨格の感じ、少なくとも私は見たことがない。似た人種は見たことあるけどその子とは顔の造りが違う。個人差?いえ、それ以前の違いね。喉仏や肩や腰の骨の感じからもう成長期は迎えていて、それなりに時間が経っている?ハーフリングなどの血が混ざっている可能性……いえ、手足は完璧に人族そのものだから却下。やっぱり流れの子かしら。それとも奴隷商あたりから逃げ出した、或いはその子供か……

にしても可愛い顔してるわね~

嫌になっちゃう、職業病ね。怪しすぎて逆に怪しくないわ。

はぁ怪しくないって言葉、撤回するわね。何なのよあの子。めちゃくちゃ重要な祭事でしか見れないような神聖魔法を連発するんじゃないわよ全く。完全に度が過ぎた代物ね。水を飲むために湖を1つ干上がらせるようなものよ。それにあの魔力量尋常じゃない。それに加え禁術。全くどこに埋まってたのよあんな子。

幸いなのは穏やかな気質と素直な性格。ただ演技の可能性も考慮して少し詰めてみようかしら。

………………

失敗ね。あの目、怯え方。暴力に晒されて育ったのね。タバコへの恐怖も。性知識にしてもシャノあたりに吹き込まれたと思ってたけど恐らく性虐待……
身体に火傷や裂傷の跡は無かった…そりゃ治すわよね……そもそも傷が原因で魔法が発現?………有り得ない話じゃないわ……圧倒的魔力量に方向は違えど独力で禁術に辿り着く外道魔法のセンス……はぁ、やっぱり神様は居ないのね…………
そして普段の落ち着きよう、あの社交性………
1人の冒険者と生活しているらしいけど安心できる場所を見つけたのね……………
シオくん、それは依存よ……
でもそのおかげで安定はしている。
もしその牙城が崩れたら…………いえ、その先はいけないわ。

それよりまずは治癒術の基礎からね。

この子は汚されたキャンパス。

だけれどまだまだ多くの余白を残している。

誰かに、或いは自分で塗りつぶす前に…………
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...