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第22話 おはよ
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早朝に、少し睡眠時間が足りなくて、それでも身体が起きろと言う時のように少しずつ、少しずつ僕の意識はハッキリとしていった。
「おはよう、サルサ。ごめんね?心配かけちゃって。」
サルサの顔には涙の跡。
意識が戻ったとはいえ傷は塞がったばかりらしく身体がとても重い。
もうこれでもかと言うほどにキツく、とてもキツく抱きしめられた。
頬にあたる彼女の猫特有の細い毛がちょっとくすぐったい。
「汚れるから離して。」
と言っても彼女はまるで言うことを聞いてくれない。
相変わらず目は片方無いし右腕もない。
抱き返す腕がないというのはこれ程までにもどかしく、辛いものなのだと感じる。
ただこれは後で治せるから良しとしよう。
治した後でまたいっぱい抱きしめて貰うのだ。
そう考えるだけでなんだかワクワクしてくる。
僕は彼女を見上げて言う。
何よりまず彼女に伝えたかった事だ。
彼女は泣くのをやめたようでやっと僕をじっと見てくれた。
そして言葉の意味を理解出来たのか瞳を大きく見開き、それから目を細めていった。
それから彼女の目から大量の涙が流れてきた。
僕は泣きながら笑い、そんな僕の顔を見てサルサもつられるようにして笑っていた。
なんとも幸せな時間だった。
僕がずっと求めていた時間。
こんな時間を過ごせている幸せを改めて噛み締めた。
そして、ああ、本当に死んでもいいと思ったけど……
今は、まだ生きて、彼女とこうしていたいなあと思えていたんだ。
それに死んでもいいなんて口にしたらまたどこかの誰かさんに文句を言われるかもしれない。
とりあえず身体を起こそうとした瞬間………
「あ、待って、サルサ助けて。血がくっついて起きれない。」
___________
「これ……何があったの?」
僕は自分のお腹を見て呟く。
確かに僕の傷は塞がってはいるが………
なんというかとても痛々しい傷跡が残ったままである。
「エイルっつー冒険者が来てくれたんだ。」
彼女はまた涙を浮かべながら話し始めた。
なんでも僕が以前治した冒険者がお礼のために診療所を訪れたとのこと。
診療所が見える前から濃い血の臭い、窓にはどう考えてもただ事では無い血飛沫があったという。
彼女はどうやら勇気を出して診療所に押し入るが、そこはもう見るも無惨な血の海。
すぐに外に出てしまったらしい。
だがそこで這いずるような血の跡を見つける。
辿ると小さな家の中から悲鳴と鳴き声が。
いても立っても居られなくなった彼女は強引に家に押し入ったらしい。
そこにはもうなぜ生きているかも分からない僕と、僕を抱きかかえるサルサがいたらしい。
彼女は治癒士の冒険者。
すぐに僕を治療しようとしてくれた。
だが普通の人間なら確実に死んでいる出血量。
それでも先程まで意識を繋いでいたこと、そして僕が凄腕の治癒士という条件から彼女は僕が必死に血を造っていると信じ、傷を塞ぐことを最優先にしたそうだ。
だが切り傷というには余りにも傷口が大きすぎる。
繋ぎ合わせるための皮膚が足りないのだ。
彼女は自身の力量では傷を閉じるだけの皮膚の再生は行えないと判断。
そこで彼女は治癒魔術で強引に皮膚を伸ばし、縫合のように皮膚と皮膚を繋ぐのではなく強引に皮膚を螺旋状に繋げあわせること傷を塞いだのだという。
普通なら絶対にできない芸当だ。
なぜならこれは本来であれば致命的ミスなのだ。
このやり方は後々大きな後遺症の可能性がある。
元来治癒魔術というものはいわば修復作業である。
理屈は発見されてはいないが治癒魔術による治療では古すぎる傷が治らず、傷跡と共に皮膚が再生される。
このように治癒魔術ではどこかしらから身体の造りの記憶を引っ張って修復しているのであろう。
ちなみに魔法では傷跡の修復も可能である。
このような修復作業において術者が自我を出し、あれこれ変えようとすると先程も言った通り後遺症が残る可能性が高い。
上手く血管から血が流れなくなり患部が壊死したり、文字通り身体中がボロボロになったり、恐らく魔術による細胞の変質による自己免疫疾患あたりであろう。
このような症状をヴェーラさんから聞いている。
だが驚くことに僕のこの傷にはそのような淀みは全く見つからなかった。
血の流れも正常、細胞の変質も無し。
僕の病の処方の禁術で異常が見当たらないのだ。
無理やり塞いだため薄くなった皮膚もいずれは元の厚みを取り戻すであろう。
僕でも分かる、きっと彼女は紛れもない天才だ。
今はまだ治せる範囲、量の面で課題を抱えているが質に関しては申し分ない。
貰い物で紛い物の僕では到底届きそうにない。
そして今現在はポーション類をかき集めてきてくれているそうだ。
正直に言うとポーション死ぬほど不味いからあまり飲みたくないんだけどね。
エイルがエマを連れ、ポーションを腕いっぱいに持って帰ってきてくれた。
僕が意識を取り戻したのを見た途端に泣き崩れたエイルに僕は礼を言う。
そしてすぐに飲めそうなものだけ飲んでいく。
うぇ……苦っ! やっぱマズイなぁ。
だけどこれでなんとかなるだろう。
僕の中で魔力の起こりを感じる。
一般では怪我のために利用されるポーション。
主に錬金術師や一部の薬師が作っている。
怪我の治癒の他に多少の気力、体力の回復に加え魔術のための魔力回路、魔法使いのための魔力そのものの回復にも役に立つ優れもの。
僕はいつものように自分の肩口に残った左手を当てる。
習った魔術ではなく魔法で少しずつ腕を生やしていく。
自分で自分の腕を生やすのは初めてで不思議な感触だった。
腕が治り動きの確認をしようとした途端、再びサルサが飛んで抱きついてきた。
今度は抱きしめ返す腕がある。
結局二人の目もはばからずに熱いハグを交わしてしまった。
僕の名はシオ。
ちょっと幸せな闇医者だ。
「おはよう、サルサ。ごめんね?心配かけちゃって。」
サルサの顔には涙の跡。
意識が戻ったとはいえ傷は塞がったばかりらしく身体がとても重い。
もうこれでもかと言うほどにキツく、とてもキツく抱きしめられた。
頬にあたる彼女の猫特有の細い毛がちょっとくすぐったい。
「汚れるから離して。」
と言っても彼女はまるで言うことを聞いてくれない。
相変わらず目は片方無いし右腕もない。
抱き返す腕がないというのはこれ程までにもどかしく、辛いものなのだと感じる。
ただこれは後で治せるから良しとしよう。
治した後でまたいっぱい抱きしめて貰うのだ。
そう考えるだけでなんだかワクワクしてくる。
僕は彼女を見上げて言う。
何よりまず彼女に伝えたかった事だ。
彼女は泣くのをやめたようでやっと僕をじっと見てくれた。
そして言葉の意味を理解出来たのか瞳を大きく見開き、それから目を細めていった。
それから彼女の目から大量の涙が流れてきた。
僕は泣きながら笑い、そんな僕の顔を見てサルサもつられるようにして笑っていた。
なんとも幸せな時間だった。
僕がずっと求めていた時間。
こんな時間を過ごせている幸せを改めて噛み締めた。
そして、ああ、本当に死んでもいいと思ったけど……
今は、まだ生きて、彼女とこうしていたいなあと思えていたんだ。
それに死んでもいいなんて口にしたらまたどこかの誰かさんに文句を言われるかもしれない。
とりあえず身体を起こそうとした瞬間………
「あ、待って、サルサ助けて。血がくっついて起きれない。」
___________
「これ……何があったの?」
僕は自分のお腹を見て呟く。
確かに僕の傷は塞がってはいるが………
なんというかとても痛々しい傷跡が残ったままである。
「エイルっつー冒険者が来てくれたんだ。」
彼女はまた涙を浮かべながら話し始めた。
なんでも僕が以前治した冒険者がお礼のために診療所を訪れたとのこと。
診療所が見える前から濃い血の臭い、窓にはどう考えてもただ事では無い血飛沫があったという。
彼女はどうやら勇気を出して診療所に押し入るが、そこはもう見るも無惨な血の海。
すぐに外に出てしまったらしい。
だがそこで這いずるような血の跡を見つける。
辿ると小さな家の中から悲鳴と鳴き声が。
いても立っても居られなくなった彼女は強引に家に押し入ったらしい。
そこにはもうなぜ生きているかも分からない僕と、僕を抱きかかえるサルサがいたらしい。
彼女は治癒士の冒険者。
すぐに僕を治療しようとしてくれた。
だが普通の人間なら確実に死んでいる出血量。
それでも先程まで意識を繋いでいたこと、そして僕が凄腕の治癒士という条件から彼女は僕が必死に血を造っていると信じ、傷を塞ぐことを最優先にしたそうだ。
だが切り傷というには余りにも傷口が大きすぎる。
繋ぎ合わせるための皮膚が足りないのだ。
彼女は自身の力量では傷を閉じるだけの皮膚の再生は行えないと判断。
そこで彼女は治癒魔術で強引に皮膚を伸ばし、縫合のように皮膚と皮膚を繋ぐのではなく強引に皮膚を螺旋状に繋げあわせること傷を塞いだのだという。
普通なら絶対にできない芸当だ。
なぜならこれは本来であれば致命的ミスなのだ。
このやり方は後々大きな後遺症の可能性がある。
元来治癒魔術というものはいわば修復作業である。
理屈は発見されてはいないが治癒魔術による治療では古すぎる傷が治らず、傷跡と共に皮膚が再生される。
このように治癒魔術ではどこかしらから身体の造りの記憶を引っ張って修復しているのであろう。
ちなみに魔法では傷跡の修復も可能である。
このような修復作業において術者が自我を出し、あれこれ変えようとすると先程も言った通り後遺症が残る可能性が高い。
上手く血管から血が流れなくなり患部が壊死したり、文字通り身体中がボロボロになったり、恐らく魔術による細胞の変質による自己免疫疾患あたりであろう。
このような症状をヴェーラさんから聞いている。
だが驚くことに僕のこの傷にはそのような淀みは全く見つからなかった。
血の流れも正常、細胞の変質も無し。
僕の病の処方の禁術で異常が見当たらないのだ。
無理やり塞いだため薄くなった皮膚もいずれは元の厚みを取り戻すであろう。
僕でも分かる、きっと彼女は紛れもない天才だ。
今はまだ治せる範囲、量の面で課題を抱えているが質に関しては申し分ない。
貰い物で紛い物の僕では到底届きそうにない。
そして今現在はポーション類をかき集めてきてくれているそうだ。
正直に言うとポーション死ぬほど不味いからあまり飲みたくないんだけどね。
エイルがエマを連れ、ポーションを腕いっぱいに持って帰ってきてくれた。
僕が意識を取り戻したのを見た途端に泣き崩れたエイルに僕は礼を言う。
そしてすぐに飲めそうなものだけ飲んでいく。
うぇ……苦っ! やっぱマズイなぁ。
だけどこれでなんとかなるだろう。
僕の中で魔力の起こりを感じる。
一般では怪我のために利用されるポーション。
主に錬金術師や一部の薬師が作っている。
怪我の治癒の他に多少の気力、体力の回復に加え魔術のための魔力回路、魔法使いのための魔力そのものの回復にも役に立つ優れもの。
僕はいつものように自分の肩口に残った左手を当てる。
習った魔術ではなく魔法で少しずつ腕を生やしていく。
自分で自分の腕を生やすのは初めてで不思議な感触だった。
腕が治り動きの確認をしようとした途端、再びサルサが飛んで抱きついてきた。
今度は抱きしめ返す腕がある。
結局二人の目もはばからずに熱いハグを交わしてしまった。
僕の名はシオ。
ちょっと幸せな闇医者だ。
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