異世界からきた青年医師に恋した剣士が こじらせ片想いを成就させるまで     【恋煩い編】

素麺えす

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第5章 −紫に染まりかけて−※R有

㉞俺がずっと守るから

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「『異次元の旅人』は、知らない人が突然どこかから現れて⋯⋯でしょ? カヤミも多分そうだと思うんだけど」
「まぁ⋯⋯そう」

 カヤミ自身も、突然自分に起きた現象について全て理解出来ているわけではないので、曖昧な返答になる。

「正体、身分がわからないことを逆手に取って、犯罪に巻き込まれやすいって聞いてる。いなくなっても誰も探したりしないからバレない貴重な使える存在だって」
「!」
「脅して犯罪に加担させるとか、監禁して奴隷にするとか」
「単純にもの珍しさもあって重宝されるみたいよ⋯⋯
若い方がより高値で取引される」

 ルシーとカペラ、2人揃って神妙な面持ちで生々しい詳細を説明をしていくと、それを聞かされたカヤミの顔色が徐々に悪くなっていく。しばらくするとロティルも口を開いた。

「俺もカヤミと会ってから、分かる範囲で調べたんだけど⋯⋯そういう事件は殆どが表沙汰にならないから城の連中が捜索しても見つけられていないらしい。情報も あやふやで⋯⋯
『異次元の旅人』が具体的に何人いるかなんて、全く把握出来ていないんだろうし」
「来た人 全員が無事に保護されて助けてもらえる環境とは限らないからね。親切に助けて信用させておいて、犯罪組織に売るヤツだって、きっといる」

 こっちの世界は居心地が良い⋯⋯そうカヤミが感じているのは間違いないが、様々な人間がいるのは どちらも同じ。そのことに改めて気付かされ、色々な感情が入り混じった表情になる。

「⋯⋯ジゼやポーラみたいな人ばかりじゃないんだな。そういえば海辺の町で、遠い親戚なんでしょ って誰かに言われたことがある。周囲に俺について、そう説明してくれてるってことか⋯⋯」
「ん⋯⋯万が一 カヤミが危険な目に合わないように、そういうことにしてくれって⋯⋯俺が頼んだ」
「ロティルが⋯⋯?」

 ジゼとポーラは『異次元の旅人』を知ってはいたが、まさか狙うような輩がいるとは思っていなかったらしい。
 治療院の患者は、カヤミの事を新しい医者くらいの認識で、関係性を特に聞いてくる人はいなかった。ロティルからの忠告がなければカヤミが『異次元の旅人』だと、そのうち漏らしていた可能性も無くはない。

「会った時から、そういう悪い噂も少しだけ知ってはいたから、すぐ伝えた。不安にさせるからカヤミには言わないようにも」
「⋯⋯そんなに前から⋯⋯ 俺は運が良かったんだな。助けてくれる人ばかりに恵まれて。一歩間違っていたら⋯⋯」
「カヤミ⋯⋯」
 
 医者として治療院で働きながら、衣食住も保証され、こうして外出先で食事をしつつ談笑を楽しむ、なんて出来ていなかったかもしれない。
 助けてもらうどころか元の世界の方が、あんな場所でもまだ良かったと思えるくらい想像を絶する暗い未来もあったかもしれない。
 
 ──── ロティルとも会えていない未来
 俯いたカヤミは自身の膝をグッと握り、黙り込んだ。

「ロティルカレアも信頼されてるからカヤミのこと任されてるんだよ。すごく優しいでしょ。ねぇ、カヤミ?」
「ん⋯⋯ 会ったばかりの頃から俺は知らない内にロティルに守ってもらってたのか⋯⋯
会えたのが⋯⋯ロティルで良かったと思う」

 ルシーから聞かれ、カヤミがロティルへ伝える。いつもロティルがするように真っ直ぐに目を見つめて。大好きな人からの切なく潤んだ眼差しと、その言葉にロティルが また顔を赤らめた。

「お 俺も良かったって思ってる!
カヤミと会えて⋯⋯っ 本当に、すごく⋯⋯⋯⋯
もう いないのは考えられない⋯⋯」
「⋯⋯ロティル⋯⋯いつも、ありがとな」
「お礼なんか⋯⋯  俺が、ずっと守るから」

 ルシーとカペラはいつの間にかカウンターの方へと帰っており、また遠目から2人を眺めていた。

「カペラちゃん、かなり良い雰囲気なんだけど?? 
2人の世界に入っちゃってるかなぁ」
「そうねぇ~ もっと、お手伝い出来るかしら~」
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