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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
38.ポップル記念スタンプ
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「声が大きい」
カンに触ったらしい。マリアはピシャッとゴズメルの頬を打った。
「さぁ、どうするの? 払えるの?」
馬乗りになったマリアからキツい声で詰められ、ゴズメルは目をパチクリさせた。
叩かれた頬がじんじんと痛むし、値段が天文学的すぎて、頭に入ってこない。
だが、冷静に考えれば、答えはすぐに出た。
「いや、なにを考えてんだい。副会長さん」
ゴズメルはきっぱり言った。
「あんたがあたしに何をしたとこで、そんな額になるわけないだろ」
「……なんですって?」
「だから、こんな高そうな部屋でケンカなんてしたかないっつってんだよ。さっ、わかったら早くこの手を放しておくれ。あたしは美人の副会長さんにケガをさせたくないんだ」
マリアは沈黙した。
ゴズメルは困ってしまった。
頭の上で押さえつけられた手がビリビリと痺れて痛痒いうえ、いい考えが何も思い浮かばないのだ。
「今払えって言われても困るけど……そだなぁ、あたしは冒険が得意だよ。今度、ダンジョンでなんか宝物を見つけたらあんたにプレゼントするってのはどうだろう」
「……」
「あー、冒険者協会じゃそういう貢ぎ物はありきたりなんだろうか。じゃっミノタウロスの親戚を勧誘してみるってのは? 実家に手紙を送ってみるよ」
「…………」
「あいつらあたしのこと鼻クソだと思ってるから見ずに焼き捨てると思うけど、副会長さんのお望みとあらば、試してみよう。……おい、聞いてんのかいっ?」
マリアの顔がゆっくりと近づいてくる。だが、ゴズメルはきょとんと瞬くだけだった。
バイコーンの角はミノタウロスと違い、額から生えている。だが、頭突きをする速度ではない。
流血沙汰に持ち込まれるのはなあ、とゴズメルは思った。ミノタウロスは受けたダメージが攻撃力に乗る。今だってマリアを傷つけないように細心の注意を払っているのだ。
魔物相手ならいざ知らず、冒険者協会の役員を負傷させるわけにもいかない。
向こうもそのことはわかっているのだろう。
マリアの角は、ゴズメルの額に軽く触れて止まった。
「私にこうされて、何も感じないと言うの」
「何も、っていうか……」
顔が近い。ゴズメルは自分の鼻息がマリアの前髪を揺らしているのが、申し訳ないような気がする。
角に関しては、筆記具の先を当てられているような、嫌な感覚があるだけだ。
「ゴズメル。あなたは今、私に捕食されようとしているのよ」
「ブハッ」
ゴズメルは思わず吹き出してしまった。
マリアの腕の力がゆるんだのをいいことに、顔を横向きにして、げらげら笑ってしまう。
額を角がかすめてベッドのシーツを血で汚したが、笑えて仕方なかった。
「アハハハハ、おっかない副会長さんだなあ。四つ足のバイコーンがミノタウロスを食うって! うわ、いった!」
マリアの頬に朱が走ったのが見えた、次の瞬間、ゴズメルはガブッと喉に嚙みつかれていた。さすがのゴズメルもこれは笑えない。バイコーン族は肉食で、牙が鋭いのだ。
べっ、とマリアは血まみれの口を離す。微笑んではいるが、その目は怒りに血走っている。
「ふふっ……そう、他種族を見下すその傲慢。あなたもミノタウロス族ということね。バイコーンは闘争や性愛の対象外というわけ……」
「はぁ!? あたしはただ事実を述べただけ。別に傲慢なわけじゃ」
「お黙りなさい」
マリアはゆらりとベッドに膝立ちした。
(……えっ)
自分をまたいだままおもむろにストッキングを脱ぎだす彼女に、ゴズメルは仰天する。
「な、何やってんだい、非常識な。着替えならヨソでやっておくれよ」
「……あなたの顔を、一目見たときから思っていたのよ」
ゴズメルは蛇の脱皮を見させられている気がした。スカートの裾から、黒いストッキングがずりおろされ、健康的な腿があらわになる。
ゴズメルはびっくりして声も出せない。
マリアのストッキングに透ける下着は、なんと純白だった。中央に小さなリボンがあしらわれている。彼女はスカートの裾をぴらっと揺らして笑った。
「あぁ、なんて座りやすそうな顔なのかしら、って……」
「……ハ? え、な、なんて?」
「さあ、雌牛ちゃん。ポップルに来た記念に、顔にスタンプを押してあげるわ……」
「おい待て待て待て! ヤメロッ」
「うふふ。逃げちゃダーメ」
下手に暴れれば、左右の角でマリアの腿はズタズタに避けてしまうだろう。だが、逡巡している間にも、マリアはずりずりと膝を進めてくる。迫りくる拷問スタンプに、ゴズメルは怒鳴ることしかできない。
「おい、ふざけんなよ! 宿代の話をしてたんじゃなかったのかよっ」
「まぁ、怖ぁい。そんなふうに大きな声で怒鳴られたら、私……」
ゴズメルは息を飲んだ。ぶるっ、とマリアが形のいい腰を震わせたからだ。
(この、クソバイコーン……!)
なんてことだ。このままではスタンプ帳どころか便座にされてしまう。
だが、どうすれば逃れられるのか、ゴズメルには見当もつかなかった。
ああ、もうダメだ。ゴズメルの顔面が、マリアのポップルにようこそされてしまう――!
その時、セルフォンの着信音が高らかに鳴り響いた
マリアが舌打ちした。胸にベッタリ座られたゴズメルは(うへぇ)と思ったが、顔よりはマシだ。
セルフォンはいわゆる音声連絡ツールだ。糸電話程度の距離でしか使えないためアルティカではほとんど使われていないが、ポップルでは声を遠くに届かせるため町中に特殊な鉱石を設置している。必然的に普及率は高かった。
仕事の連絡らしい。マリアは耳にセルフォンを当てながら「ええ、何も問題ありませんわ。審査は順調に進んでいます」とうなずいた。
「今ですか? ふふ……太りすぎた駄獣を馴らしていたところですの」
「誰がデブだっ!」
胸や体が大きいからといって太っていると思われるのは、牛扱いされるより心外だ。
キレたゴズメルの鼻を、マリアはうるさいと言わんばかりにつまんでしまった。
「まぁ、本当ですの?」
フガフガとしか文句を言えないゴズメルをよそに、マリアは電話の相手と喋り続けた。
「アルティカ支部に妖精族の生き残りが? ええ、すぐ引き取りに伺います。死にかけているならなおのこと、種の保存にとりかからなければ。……ええ、承知しておりますわ。会長」
ゴズメルは、マリアの酷薄な笑みに、息を呑んだ。
「すべては世界を守るために」
カンに触ったらしい。マリアはピシャッとゴズメルの頬を打った。
「さぁ、どうするの? 払えるの?」
馬乗りになったマリアからキツい声で詰められ、ゴズメルは目をパチクリさせた。
叩かれた頬がじんじんと痛むし、値段が天文学的すぎて、頭に入ってこない。
だが、冷静に考えれば、答えはすぐに出た。
「いや、なにを考えてんだい。副会長さん」
ゴズメルはきっぱり言った。
「あんたがあたしに何をしたとこで、そんな額になるわけないだろ」
「……なんですって?」
「だから、こんな高そうな部屋でケンカなんてしたかないっつってんだよ。さっ、わかったら早くこの手を放しておくれ。あたしは美人の副会長さんにケガをさせたくないんだ」
マリアは沈黙した。
ゴズメルは困ってしまった。
頭の上で押さえつけられた手がビリビリと痺れて痛痒いうえ、いい考えが何も思い浮かばないのだ。
「今払えって言われても困るけど……そだなぁ、あたしは冒険が得意だよ。今度、ダンジョンでなんか宝物を見つけたらあんたにプレゼントするってのはどうだろう」
「……」
「あー、冒険者協会じゃそういう貢ぎ物はありきたりなんだろうか。じゃっミノタウロスの親戚を勧誘してみるってのは? 実家に手紙を送ってみるよ」
「…………」
「あいつらあたしのこと鼻クソだと思ってるから見ずに焼き捨てると思うけど、副会長さんのお望みとあらば、試してみよう。……おい、聞いてんのかいっ?」
マリアの顔がゆっくりと近づいてくる。だが、ゴズメルはきょとんと瞬くだけだった。
バイコーンの角はミノタウロスと違い、額から生えている。だが、頭突きをする速度ではない。
流血沙汰に持ち込まれるのはなあ、とゴズメルは思った。ミノタウロスは受けたダメージが攻撃力に乗る。今だってマリアを傷つけないように細心の注意を払っているのだ。
魔物相手ならいざ知らず、冒険者協会の役員を負傷させるわけにもいかない。
向こうもそのことはわかっているのだろう。
マリアの角は、ゴズメルの額に軽く触れて止まった。
「私にこうされて、何も感じないと言うの」
「何も、っていうか……」
顔が近い。ゴズメルは自分の鼻息がマリアの前髪を揺らしているのが、申し訳ないような気がする。
角に関しては、筆記具の先を当てられているような、嫌な感覚があるだけだ。
「ゴズメル。あなたは今、私に捕食されようとしているのよ」
「ブハッ」
ゴズメルは思わず吹き出してしまった。
マリアの腕の力がゆるんだのをいいことに、顔を横向きにして、げらげら笑ってしまう。
額を角がかすめてベッドのシーツを血で汚したが、笑えて仕方なかった。
「アハハハハ、おっかない副会長さんだなあ。四つ足のバイコーンがミノタウロスを食うって! うわ、いった!」
マリアの頬に朱が走ったのが見えた、次の瞬間、ゴズメルはガブッと喉に嚙みつかれていた。さすがのゴズメルもこれは笑えない。バイコーン族は肉食で、牙が鋭いのだ。
べっ、とマリアは血まみれの口を離す。微笑んではいるが、その目は怒りに血走っている。
「ふふっ……そう、他種族を見下すその傲慢。あなたもミノタウロス族ということね。バイコーンは闘争や性愛の対象外というわけ……」
「はぁ!? あたしはただ事実を述べただけ。別に傲慢なわけじゃ」
「お黙りなさい」
マリアはゆらりとベッドに膝立ちした。
(……えっ)
自分をまたいだままおもむろにストッキングを脱ぎだす彼女に、ゴズメルは仰天する。
「な、何やってんだい、非常識な。着替えならヨソでやっておくれよ」
「……あなたの顔を、一目見たときから思っていたのよ」
ゴズメルは蛇の脱皮を見させられている気がした。スカートの裾から、黒いストッキングがずりおろされ、健康的な腿があらわになる。
ゴズメルはびっくりして声も出せない。
マリアのストッキングに透ける下着は、なんと純白だった。中央に小さなリボンがあしらわれている。彼女はスカートの裾をぴらっと揺らして笑った。
「あぁ、なんて座りやすそうな顔なのかしら、って……」
「……ハ? え、な、なんて?」
「さあ、雌牛ちゃん。ポップルに来た記念に、顔にスタンプを押してあげるわ……」
「おい待て待て待て! ヤメロッ」
「うふふ。逃げちゃダーメ」
下手に暴れれば、左右の角でマリアの腿はズタズタに避けてしまうだろう。だが、逡巡している間にも、マリアはずりずりと膝を進めてくる。迫りくる拷問スタンプに、ゴズメルは怒鳴ることしかできない。
「おい、ふざけんなよ! 宿代の話をしてたんじゃなかったのかよっ」
「まぁ、怖ぁい。そんなふうに大きな声で怒鳴られたら、私……」
ゴズメルは息を飲んだ。ぶるっ、とマリアが形のいい腰を震わせたからだ。
(この、クソバイコーン……!)
なんてことだ。このままではスタンプ帳どころか便座にされてしまう。
だが、どうすれば逃れられるのか、ゴズメルには見当もつかなかった。
ああ、もうダメだ。ゴズメルの顔面が、マリアのポップルにようこそされてしまう――!
その時、セルフォンの着信音が高らかに鳴り響いた
マリアが舌打ちした。胸にベッタリ座られたゴズメルは(うへぇ)と思ったが、顔よりはマシだ。
セルフォンはいわゆる音声連絡ツールだ。糸電話程度の距離でしか使えないためアルティカではほとんど使われていないが、ポップルでは声を遠くに届かせるため町中に特殊な鉱石を設置している。必然的に普及率は高かった。
仕事の連絡らしい。マリアは耳にセルフォンを当てながら「ええ、何も問題ありませんわ。審査は順調に進んでいます」とうなずいた。
「今ですか? ふふ……太りすぎた駄獣を馴らしていたところですの」
「誰がデブだっ!」
胸や体が大きいからといって太っていると思われるのは、牛扱いされるより心外だ。
キレたゴズメルの鼻を、マリアはうるさいと言わんばかりにつまんでしまった。
「まぁ、本当ですの?」
フガフガとしか文句を言えないゴズメルをよそに、マリアは電話の相手と喋り続けた。
「アルティカ支部に妖精族の生き残りが? ええ、すぐ引き取りに伺います。死にかけているならなおのこと、種の保存にとりかからなければ。……ええ、承知しておりますわ。会長」
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