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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
60.チッチ
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ゴズメルは懐かしい夢を見た。
実家の夢だ。
「ごーずーめーるー!」
子供のゴズメルはなんとかして一緒に寝ようと母親の寝床にもぐりこむのだが、力ではかなわない。
毛布のはしを持ち上げられると、ゴズメルは埃や糸と一緒にコロコロと転がり落ちてしまう。
母親は腰に手を当ててゴズメルを叱った。
「あんたは兄つぁと一緒に寝らんちいけんよ!」
「やんた、兄つぁはみんなイビキがひどい」
ゴズメルはぴいぴいとゴネて母親のふところにもぐりこむ。
「婆っちゃは?」
「婆っちゃは歯ぎしりする」
「お父つぁは」
「いっちゃんやんた! お父つぁの足くさい!」
「フフッ。そんなに母ちゃがいいか」
「うん、うん」
これは添い寝してもらえる、と子ども心にわかったゴズメルは、安心して寝床に横になった。
ミノタウロス族の女性はみんなそうだが、ゴズメルの母親もとても胸が大きかった。
添い寝してもらうとフカフカした肌触りのいい毛布にくるまれているような気がする。
ムキムキの二の腕に腕枕されるのも最高で、この楽しみをなくすことになるなら、ゴズメルはいつまでも角が生えなくていいとさえ思っていた。
だが母親のほうは、ゴズメルの発育を気にしているようだった。
「あんた、今日は勝てたんか」
「オズヌとごっつ(※同じくらい)」
「ハァ~ア、芋掘りのオズヌと、またどんけつ争いか」
腕枕した手で、頭をゴシゴシ撫でてくれる。ゴズメルはちゃっかり兄の意地悪を言いつけた。
「あんね、兄つぁがうちをハナクソち言いよる。チッチもかけようとする。うち、兄つぁとっても好かん」
「好かんなら負かしちゃり! チッチもかけかえすちゃ」
母はきっぱり言って、ゴズメルの背中をはたいた。ゴズメルはくすんと鼻を鳴らした。
からだの大きい兄に勝つのがまず不可能だが、そのうえ負かした相手にチッチ――小便をかけるなど、後が怖すぎて想像もできない。ゴズメルは母の胸に顔を埋めて訴えた。
「チッチばっちい。かけんのもかけられんのも、そーとーやんた」
「またそげん事言いよる。負けるよりいけんよ」
いやなんでだよ、そんなの絶対おかしいだろ! ・・・と、思わず標準語でツッコミを入れたところで、ゴズメルはハッと目を覚ました。
まだ早朝だった。
横で眠るのはパワフルな母親ではなく、ほっそりとした妖精のリリィだ。
子供の頃のゴズメルと同じように腕枕されて、気持ちよさそうに寝息を立てている。
裸の胸に、バラの花弁を散らしたようなキスマークがあった。
今はふとんに隠れているが、同じ痕が肩や背中、臍や腿の付け根に至るまで残されているはずだ。昨夜、結婚の約束をしたリリィを、ゴズメルはたっぷりと愛した。
夜もすがら、敷いておいたタオルがぐっしょりと濡れるほど深く交わったのだ。
喘ぐ体力すら失ったリリィが、低く呻く声が、まだ鼓膜に残っている。
指を出し入れするたびに愛液で陰毛をべっとりと濡らすさまは、とても淫らで、とても可愛かった。
(早く祈願できる態勢を整えなきゃな……)
ゴズメルは、リリィの頬に静かに唇をつけた。眠り姫のように薄目を開けたリリィが、くすっと笑う。
「ゴズメル、睫毛がくすぐったいわ」
「ふーん、そうかい? 睫毛じゃなくてベッドに悪い虫がいるのかもしれないよ?」
こちょこちょと脇腹をくすぐると、リリィはますます笑った。ゴズメルは唇に軽く口づけた。
「おはよう、リリィ」
「おはよう……」
「……良かったら、ひとっ風呂浴びない?」
「素敵ね。覚えてる? 朝ごはんにショートブレッドもあるのよ」
「最高じゃん。はー……準備したらチェックアウトかぁ」
居心地のいいホステルを去るのは名残惜しかったが、精霊との約束は守らなければならない。
二人はゆっくりと支度を整え、玄関のドアを開けた。
すとんと草地に降りてから「お世話になりました」と、頭を下げる。
顔を起こすと、そこにもうドアはなかった。青い水を湛えた沢に、巨大風信子が立つばかりだ。
気持ちのいい陽気で、ゴズメルは大きく伸びをした。横でリリィが「あら!」と大きな声を上げる。
「ゴズメル、ほこらの口が閉じているわ。昨日は開いていたのに」
「うん。そりゃ、あれだけサービスすりゃねえ。たぶん一年くらいは休業するんじゃないか?」
「……えっ?」
「そうか、あんた仕組みがよくわかってないんだね」
ゴズメルは地面に図を描いて説明してやった。
「つまり、精霊はプレイヤーからお供えや感謝の気持ちがほしいわけだ。感謝してほしいから、対価に見合ったサービスを提供する」
「ええ、それはわかるけど……」
ゴズメルはぽいっと木の枝を手放して笑った。
「あたし達にたくさん感謝されて満足したから、しばらくはホステルなんてやらないってこった」
この説明は、リリィに大きな衝撃を与えたようだった。
ゴズメルたち冒険者が最低限の要求で済ませるのは、リソースが有限であることを理解しているためでもある。自分たちのパーティーが精霊を満足させてしまったら、後続の冒険者が困ってしまうからだ。
リリィは震え声で言った。
「も……もしかして、私はとんでもない掟破りをしてしまったの? ゴズメル」
「いや、別にそんなことないよ。ここは本当に客が来ないみたいだし、精霊も困ってたんだと思うね」
客引きに応えただけの自分たちが気にする必要はない、とゴズメルは思う。
だがリリィは考えてしまうようだった。
「とても素敵なホステルだから、地元のひともぜひ利用したらいいと思ったのだけど……」
「いやいや、利用者が多くなると、精霊もちょっとの対価で満足できなくなっちまうのさ。場所によっては、足元を見るような対価をふっかけてくることだってあるんだよ」
「なんて難しい問題なのかしら……」
歩きながら頭を悩ませるリリィに、ゴズメルは軽く体当たりした。
「クヨクヨ考えるんじゃないよ、ほら、見てごらん。でっかい山だろう」
木々の生い茂る森を抜けると、クメミ山が姿をあらわす。
実際にはまだまだ距離があるのだが、とても大きな山なので近くにあるように見える。
「あたしのキャンプの腕前だって、超高級ホテルに負けず劣らずなんだからね。楽しみにしてな」
ゴズメルは大きく胸を張って言った。
「山の空気はきれいだから、月や星もよく見えるんだよ。まあ巨大風信子ほどのインパクトはないかもしれないけど……」
空を仰いだゴズメルは、ぎくっとした。
太陽がさんさんと照らす空に、ひそやかに月が浮かんでいる。
その月のかたちがほとんど真円だった。
(やばい、もうひと月経つってことを忘れてた! 生えちまったら戦うどころじゃない。もし冒険者教会のやつらに見つかったら……)
満月の夜が、近づいていた。
実家の夢だ。
「ごーずーめーるー!」
子供のゴズメルはなんとかして一緒に寝ようと母親の寝床にもぐりこむのだが、力ではかなわない。
毛布のはしを持ち上げられると、ゴズメルは埃や糸と一緒にコロコロと転がり落ちてしまう。
母親は腰に手を当ててゴズメルを叱った。
「あんたは兄つぁと一緒に寝らんちいけんよ!」
「やんた、兄つぁはみんなイビキがひどい」
ゴズメルはぴいぴいとゴネて母親のふところにもぐりこむ。
「婆っちゃは?」
「婆っちゃは歯ぎしりする」
「お父つぁは」
「いっちゃんやんた! お父つぁの足くさい!」
「フフッ。そんなに母ちゃがいいか」
「うん、うん」
これは添い寝してもらえる、と子ども心にわかったゴズメルは、安心して寝床に横になった。
ミノタウロス族の女性はみんなそうだが、ゴズメルの母親もとても胸が大きかった。
添い寝してもらうとフカフカした肌触りのいい毛布にくるまれているような気がする。
ムキムキの二の腕に腕枕されるのも最高で、この楽しみをなくすことになるなら、ゴズメルはいつまでも角が生えなくていいとさえ思っていた。
だが母親のほうは、ゴズメルの発育を気にしているようだった。
「あんた、今日は勝てたんか」
「オズヌとごっつ(※同じくらい)」
「ハァ~ア、芋掘りのオズヌと、またどんけつ争いか」
腕枕した手で、頭をゴシゴシ撫でてくれる。ゴズメルはちゃっかり兄の意地悪を言いつけた。
「あんね、兄つぁがうちをハナクソち言いよる。チッチもかけようとする。うち、兄つぁとっても好かん」
「好かんなら負かしちゃり! チッチもかけかえすちゃ」
母はきっぱり言って、ゴズメルの背中をはたいた。ゴズメルはくすんと鼻を鳴らした。
からだの大きい兄に勝つのがまず不可能だが、そのうえ負かした相手にチッチ――小便をかけるなど、後が怖すぎて想像もできない。ゴズメルは母の胸に顔を埋めて訴えた。
「チッチばっちい。かけんのもかけられんのも、そーとーやんた」
「またそげん事言いよる。負けるよりいけんよ」
いやなんでだよ、そんなの絶対おかしいだろ! ・・・と、思わず標準語でツッコミを入れたところで、ゴズメルはハッと目を覚ました。
まだ早朝だった。
横で眠るのはパワフルな母親ではなく、ほっそりとした妖精のリリィだ。
子供の頃のゴズメルと同じように腕枕されて、気持ちよさそうに寝息を立てている。
裸の胸に、バラの花弁を散らしたようなキスマークがあった。
今はふとんに隠れているが、同じ痕が肩や背中、臍や腿の付け根に至るまで残されているはずだ。昨夜、結婚の約束をしたリリィを、ゴズメルはたっぷりと愛した。
夜もすがら、敷いておいたタオルがぐっしょりと濡れるほど深く交わったのだ。
喘ぐ体力すら失ったリリィが、低く呻く声が、まだ鼓膜に残っている。
指を出し入れするたびに愛液で陰毛をべっとりと濡らすさまは、とても淫らで、とても可愛かった。
(早く祈願できる態勢を整えなきゃな……)
ゴズメルは、リリィの頬に静かに唇をつけた。眠り姫のように薄目を開けたリリィが、くすっと笑う。
「ゴズメル、睫毛がくすぐったいわ」
「ふーん、そうかい? 睫毛じゃなくてベッドに悪い虫がいるのかもしれないよ?」
こちょこちょと脇腹をくすぐると、リリィはますます笑った。ゴズメルは唇に軽く口づけた。
「おはよう、リリィ」
「おはよう……」
「……良かったら、ひとっ風呂浴びない?」
「素敵ね。覚えてる? 朝ごはんにショートブレッドもあるのよ」
「最高じゃん。はー……準備したらチェックアウトかぁ」
居心地のいいホステルを去るのは名残惜しかったが、精霊との約束は守らなければならない。
二人はゆっくりと支度を整え、玄関のドアを開けた。
すとんと草地に降りてから「お世話になりました」と、頭を下げる。
顔を起こすと、そこにもうドアはなかった。青い水を湛えた沢に、巨大風信子が立つばかりだ。
気持ちのいい陽気で、ゴズメルは大きく伸びをした。横でリリィが「あら!」と大きな声を上げる。
「ゴズメル、ほこらの口が閉じているわ。昨日は開いていたのに」
「うん。そりゃ、あれだけサービスすりゃねえ。たぶん一年くらいは休業するんじゃないか?」
「……えっ?」
「そうか、あんた仕組みがよくわかってないんだね」
ゴズメルは地面に図を描いて説明してやった。
「つまり、精霊はプレイヤーからお供えや感謝の気持ちがほしいわけだ。感謝してほしいから、対価に見合ったサービスを提供する」
「ええ、それはわかるけど……」
ゴズメルはぽいっと木の枝を手放して笑った。
「あたし達にたくさん感謝されて満足したから、しばらくはホステルなんてやらないってこった」
この説明は、リリィに大きな衝撃を与えたようだった。
ゴズメルたち冒険者が最低限の要求で済ませるのは、リソースが有限であることを理解しているためでもある。自分たちのパーティーが精霊を満足させてしまったら、後続の冒険者が困ってしまうからだ。
リリィは震え声で言った。
「も……もしかして、私はとんでもない掟破りをしてしまったの? ゴズメル」
「いや、別にそんなことないよ。ここは本当に客が来ないみたいだし、精霊も困ってたんだと思うね」
客引きに応えただけの自分たちが気にする必要はない、とゴズメルは思う。
だがリリィは考えてしまうようだった。
「とても素敵なホステルだから、地元のひともぜひ利用したらいいと思ったのだけど……」
「いやいや、利用者が多くなると、精霊もちょっとの対価で満足できなくなっちまうのさ。場所によっては、足元を見るような対価をふっかけてくることだってあるんだよ」
「なんて難しい問題なのかしら……」
歩きながら頭を悩ませるリリィに、ゴズメルは軽く体当たりした。
「クヨクヨ考えるんじゃないよ、ほら、見てごらん。でっかい山だろう」
木々の生い茂る森を抜けると、クメミ山が姿をあらわす。
実際にはまだまだ距離があるのだが、とても大きな山なので近くにあるように見える。
「あたしのキャンプの腕前だって、超高級ホテルに負けず劣らずなんだからね。楽しみにしてな」
ゴズメルは大きく胸を張って言った。
「山の空気はきれいだから、月や星もよく見えるんだよ。まあ巨大風信子ほどのインパクトはないかもしれないけど……」
空を仰いだゴズメルは、ぎくっとした。
太陽がさんさんと照らす空に、ひそやかに月が浮かんでいる。
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