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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
62.蛮族
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「ねえゴズメル、本当に私がお伺いしていいのかしら……」
「……何が?」
「ああもう、想像してみてちょうだい。格式高い純種のご家庭に育ったお嬢さん――つまりゴズメル、あなたが――こんな背の低い、戦闘力皆無の羽虫を連れて帰ったら、ご家族はがっかりしてしまうのではない?」
「がっかりするどころか、あたしを殺してあんたを我がものにしようとするかも」
「もう、おかしな冗談ばかり言わないでちょうだい。せめて何かお土産を用意したほうがいいわよね、ああ、何を持っていったら気に入ってもらえるのかしら……!」
茂みをノロノロと掻き分けていたゴズメルは、はぁーっと深いため息をついた。
ミノタウロス族の里を訪ねると決めてから、リリィはずっとこの調子だ。家族を紹介してもらえると思って、浮き沈みを繰り返している。
「リリィ、あんたはきっとミノタウロス族がどういうやつらかわかってないんだろうね」
「知ってるわ! 私の大好きな恋人は、素敵なミノタウロス族なのだもの」
「うーん……」
二人は登山道を大きく迂回して、山の右岸側を歩いていた。
沢を確認したところで、ゴズメルは「よし」と言って立ち止まる。体調が悪くて、こまめに休憩を取る必要があった。
「じゃ、ミノタウロス族について、ここらで軽く説明しといてやろう」
「ええ、お願いするわ!」
「シッ」
ゴズメルはわざとリリィの頭を押さえ、声を低めた。
「大きな声を出すんじゃないよ。やつらの縄張りだって言っただろ。誰が聞き耳立ててるかわからないんだ」
「わ、わかったわ……!」
リリィが緊張したようにうなずく。
ミノタウロス族は山の地下に穴を掘って暮らしている。こんな離れたところで話をしても聞かれる心配などないのだが、どうにかしてリリィにミノタウロス族の危険性を理解させる必要があった。
ただでさえミノタウロス族は他種族との折り合いが悪い。隙を見せれば、本当に食われてしまいかねない。
他種族からしたら一番ひく話はなんだろうと考えた時、思い浮かぶのは、やはり結婚の話題だった。
「ミノタウロス族が、ガキの頃からなんでも強さで格付けするって話は、もうしたよね」
「ええ、そうね……」
「結婚式でも、それをやるんだ」
「え?」
「両家がケンカして勝負をつける。ええと、はじめは前座みたいなかたちで友達や家族同士の勝負なんだけどね、最終的には花嫁と花婿が殴り合う」
「……殴り合うフリとかではなく? 本当に?」
「うん。死人を出さないためのステゴロさ。まあ、それでも何年かに一度は年寄りが死んだとかいう話は出るけど」
「な、なんのためにそんな危険なことを……」
「めちゃくちゃ頭の悪い蛮族だからだよ」
ゴズメルはパッとそう返事してから、自分のことをも悪く言っていることに気づいて言い直した。
「ええと……あえて言うなら、両家がその後ケンカせずに済むように、だね。後から変に揉めないよう、先に徹底的にやりあっとくわけさ」
「まぁ……それは、なんというか……」
なかなか効果があったようだ。額を押さえるリリィに、ゴズメルはさらに言葉を続けた。
「で、花嫁と花婿が殴り合いをするだろ」
「はい……」
「そのあと、勝ったほうが、負けたほうに小便をかける」
「なぜ結婚式でそんなことを!?」
リリィは叫んでから、慌てて両手で口を押さえた。
ゴズメルは内心でガッツポーズをしながら「やつらは、格付けのためにそれが必要だと考えている」と、固い声で説明した。
「まあ、あんたも知っての通りミノタウロス族のメスは月イチで生えるからね。その気になれば旦那のケツを掘ることもできるわけだ。どっちが偉いか先に決着をつけておいた方が、余計な争いを生まずに済む」
「話し合いで解決できないのかしら……」
「さてね。少なくともご先祖様はできなかったから、そういう意味不明な伝統を生み出したんだろうけど」
「……ゴズメル」
「うん?」
「私、もしかしてあなたの友達としてお伺いしたほうがいいのかしら」
「ン……」
おそらくその方が安全なのだろうとゴズメルは思った。ミノタウロス族はとにかく他種族に対して強引なところがある。
彼らも別に悪意を持ってやっているわけではないのだが、その独特な精神構造をこの場で説明することは難しかった。
ゴズメルは肩をすくめた。
「気にしないでいいよ。あたしはとうの昔に里を出た余所者なんだ。嫁を連れてきたなんて言っても、やつらにとっては世迷言でしかない。……そんな顔する必要ないんだよ。あんたはただ普通にしてればいいんだ」
リリィが悲しげに結んだ唇を、ゴズメルは親指の腹で撫でた。
「でも、変に仲良くしようとか気に入られようとかするのはやめた方がいいってこと。とにかく独特な考え方をする種族だからさ。わかった?」
「わかったわ……」
「いい子だ」
二人はせせらぎのそばで、そっと口づけあった。これから自分たちを待ち受ける苦難のことを、まだ何も知らなかった。
「……何が?」
「ああもう、想像してみてちょうだい。格式高い純種のご家庭に育ったお嬢さん――つまりゴズメル、あなたが――こんな背の低い、戦闘力皆無の羽虫を連れて帰ったら、ご家族はがっかりしてしまうのではない?」
「がっかりするどころか、あたしを殺してあんたを我がものにしようとするかも」
「もう、おかしな冗談ばかり言わないでちょうだい。せめて何かお土産を用意したほうがいいわよね、ああ、何を持っていったら気に入ってもらえるのかしら……!」
茂みをノロノロと掻き分けていたゴズメルは、はぁーっと深いため息をついた。
ミノタウロス族の里を訪ねると決めてから、リリィはずっとこの調子だ。家族を紹介してもらえると思って、浮き沈みを繰り返している。
「リリィ、あんたはきっとミノタウロス族がどういうやつらかわかってないんだろうね」
「知ってるわ! 私の大好きな恋人は、素敵なミノタウロス族なのだもの」
「うーん……」
二人は登山道を大きく迂回して、山の右岸側を歩いていた。
沢を確認したところで、ゴズメルは「よし」と言って立ち止まる。体調が悪くて、こまめに休憩を取る必要があった。
「じゃ、ミノタウロス族について、ここらで軽く説明しといてやろう」
「ええ、お願いするわ!」
「シッ」
ゴズメルはわざとリリィの頭を押さえ、声を低めた。
「大きな声を出すんじゃないよ。やつらの縄張りだって言っただろ。誰が聞き耳立ててるかわからないんだ」
「わ、わかったわ……!」
リリィが緊張したようにうなずく。
ミノタウロス族は山の地下に穴を掘って暮らしている。こんな離れたところで話をしても聞かれる心配などないのだが、どうにかしてリリィにミノタウロス族の危険性を理解させる必要があった。
ただでさえミノタウロス族は他種族との折り合いが悪い。隙を見せれば、本当に食われてしまいかねない。
他種族からしたら一番ひく話はなんだろうと考えた時、思い浮かぶのは、やはり結婚の話題だった。
「ミノタウロス族が、ガキの頃からなんでも強さで格付けするって話は、もうしたよね」
「ええ、そうね……」
「結婚式でも、それをやるんだ」
「え?」
「両家がケンカして勝負をつける。ええと、はじめは前座みたいなかたちで友達や家族同士の勝負なんだけどね、最終的には花嫁と花婿が殴り合う」
「……殴り合うフリとかではなく? 本当に?」
「うん。死人を出さないためのステゴロさ。まあ、それでも何年かに一度は年寄りが死んだとかいう話は出るけど」
「な、なんのためにそんな危険なことを……」
「めちゃくちゃ頭の悪い蛮族だからだよ」
ゴズメルはパッとそう返事してから、自分のことをも悪く言っていることに気づいて言い直した。
「ええと……あえて言うなら、両家がその後ケンカせずに済むように、だね。後から変に揉めないよう、先に徹底的にやりあっとくわけさ」
「まぁ……それは、なんというか……」
なかなか効果があったようだ。額を押さえるリリィに、ゴズメルはさらに言葉を続けた。
「で、花嫁と花婿が殴り合いをするだろ」
「はい……」
「そのあと、勝ったほうが、負けたほうに小便をかける」
「なぜ結婚式でそんなことを!?」
リリィは叫んでから、慌てて両手で口を押さえた。
ゴズメルは内心でガッツポーズをしながら「やつらは、格付けのためにそれが必要だと考えている」と、固い声で説明した。
「まあ、あんたも知っての通りミノタウロス族のメスは月イチで生えるからね。その気になれば旦那のケツを掘ることもできるわけだ。どっちが偉いか先に決着をつけておいた方が、余計な争いを生まずに済む」
「話し合いで解決できないのかしら……」
「さてね。少なくともご先祖様はできなかったから、そういう意味不明な伝統を生み出したんだろうけど」
「……ゴズメル」
「うん?」
「私、もしかしてあなたの友達としてお伺いしたほうがいいのかしら」
「ン……」
おそらくその方が安全なのだろうとゴズメルは思った。ミノタウロス族はとにかく他種族に対して強引なところがある。
彼らも別に悪意を持ってやっているわけではないのだが、その独特な精神構造をこの場で説明することは難しかった。
ゴズメルは肩をすくめた。
「気にしないでいいよ。あたしはとうの昔に里を出た余所者なんだ。嫁を連れてきたなんて言っても、やつらにとっては世迷言でしかない。……そんな顔する必要ないんだよ。あんたはただ普通にしてればいいんだ」
リリィが悲しげに結んだ唇を、ゴズメルは親指の腹で撫でた。
「でも、変に仲良くしようとか気に入られようとかするのはやめた方がいいってこと。とにかく独特な考え方をする種族だからさ。わかった?」
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「いい子だ」
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