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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
81.是諸法「夢」相
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昔々、ミノタウロスがまだクメミ山の上に住んでいた時のことでス。
みんな寒くテ、息も苦しくテ、大変でしタ。
ミノタウロスは大いなる智慧を追い求メ、一心にアジリニ神にお祈りしたそうでス。
「アジリニ様、なにゆえあなたの夢の中であるこの世界に、これほど多くの苦難があるのでしょう」
「ご覧ください。われらではない弱き者どもは踏みにじられ、われら強き者どもさえ、この地で死に絶えようとしています」
「おおアジリニ様、われらになにとぞ智慧をお授けください」
夢を見ているアジリニ神ハ、彼らのまえに姿をあらわすことはできませン。
しかし、この一生懸命なお祈りに応え、光り輝く御使いを来させましタ。
御使いは貧しいミノタウロスにたくさんたくさん智慧を授けてくれましタ。
山を掘リ、集落を築キ、大きな火を与エ、やがて最後の智慧を授けてくれましタ。
「おおミノタウロスよ、この世の一切はアジリニの夢の中にあります。この世の一切は夢として存在しているのです。一切が夢であり、おまえたちの悩み苦しむ心もまた夢なのです」
「おおミノタウロスよ、この世の一切は「夢」。生きることも死ぬことも、清いことも汚いことも、強いことも弱いことも夢。それがわかれば迷うことが無い。迷うことが無いということさえも無くなる」
ミノタウロスたちはこれを聞いて・・・「はぁん!?」ものごっつブチギレましタ。
いや強さに意味がないって、なに!? と思いまス。
これほどまでに鍛えあげたウルトラボディにアジリニ神はなんの価値も見出さないのだろうカ?
そもそもレベルアップ素材とか求めてきたのはそっちのくせニ、と思いましタ。
で、これを機に地上とは決別しよう、俺らこんだけ強いと戦争などを起こすだけで害悪になってしまうし・・・と、種族の方針を定めましタ。
世話になったのは確かだけれど、御使いのことモ、彼をつかわしたアジリニのことモ、もはや信じられませン。
だからミノタウロスはアジリニの眷属としテ、天女様を信じるようになりましタ。
だけど、その一方で・・・御使いより授かった『是諸法夢相』――世の一切は夢であるぞよ、という恐ろしい「夢」の思想――を、ミノタウロスは忘れられなかったでス。
「■■■、■■■」
「オサ は 強さ を 極める と……エート、アー、「夢」ばなんち言いゆうか……「ネテルトキミルヤツ」 の 境地 に 至る と、言って、いまス……それが、ミノタウロス族の、「ホンカイ」である、ト」
リリィは通訳された言葉を、正座して聞いていた。
話者はミノタウロス族の長であるグレン。通訳はグレンの義理の娘にあたるダマキが行っている。
彼女はミギワの妻で、集落の中ではもっとも公用語を扱うのが上手だった。
三人は長の家にある道場にいた。
光る苔を人為的に敷き詰めた空間だ。
座敷牢にあったリングとは反対に、黒い地面を見せることで四角い形を作っている。
リリィは困惑していた。
ゴズメルと引き離され、ここに連れて来られるまでの間、リリィは何度も泣きながら訴えたのだ。
『なぜこんなひどいことをするの!? そんなに私たちのことが気に入らないなら、今すぐ出ていくわ、離して、離してよ……!』
そう訴えた結果が、現状らしい。リリィは恐る恐る訪ねた。
「強さを追求するために、オズヌ一家を……あんな風にいじめる必要があった、と言いたいのですか?」
「……エーット」
ダマキは通訳に窮しているようだった。だが、グレンに促され、ミノタウロス訛りに訳す。
最終的に、グレンはうなずいた。その動じなさに、リリィはぞっとしてしまった。
(……こんなことが、ここでは当たり前なんだわ。ああ、なんてことなの)
傷つけられたオズヌ一家やゴズメルのことを思うと、リリィは悔しくて涙が止まらなかった。
(ゴズメルは、こんな恐ろしいところで育ってきたんだわ。……私はこれまで弱い妖精族であることが恥ずかしかったけれど、たとえ強くなれたとしても、このひとたちのようにはなりたくない。あんなひどいことをして、平気な顔をしていられるなんて……!)
ぽろぽろと涙をこぼすリリィを前に、ダマキは慌てた様子だった。
義父とリリィの顔を交互に見る。そしてグレンがなにも言わないのを見てとると、スッとリリィの隣へ来て「コワイ? コワクナイヨ。ダイジョブヨ」と、背中をさすってくれる。
その手つきの優しさが、壊れやすい人形を扱うのと同じであることにリリィは気がついていた。自分が殴られずに済んでいるのは、おそらくひとより弱弱しく見えるからなのだろう、と。
「■、■■■■。■■■■?」
グレンが低く呼びかけてくる。ダマキは「エッ?」と聞き返した。
だが、グレンの問いかけは同じだった。ダマキは泣いているリリィにそっと尋ねた。
「……オサ は『あなたは光り輝く御使い、その仲間か?』と 、聞いていまス」
「???」
リリィは目に涙をためたまま首をかしげた。
聞かれている意味がわからない。先ほどの昔話の登場人物が、なぜ自分にかかわりがあるのだろう。
グレンは深く嘆息した。
その時、リリィは彼の発する言葉を理解できた。彼の言葉とダマキの通訳を交互に聞いていたからだろうか、それとも、ゴズメルの口からその単語を聞いたことがあったからだろうか。
グレンは太い指でリリィを指さして、こう言った。
「しゃいん?」
みんな寒くテ、息も苦しくテ、大変でしタ。
ミノタウロスは大いなる智慧を追い求メ、一心にアジリニ神にお祈りしたそうでス。
「アジリニ様、なにゆえあなたの夢の中であるこの世界に、これほど多くの苦難があるのでしょう」
「ご覧ください。われらではない弱き者どもは踏みにじられ、われら強き者どもさえ、この地で死に絶えようとしています」
「おおアジリニ様、われらになにとぞ智慧をお授けください」
夢を見ているアジリニ神ハ、彼らのまえに姿をあらわすことはできませン。
しかし、この一生懸命なお祈りに応え、光り輝く御使いを来させましタ。
御使いは貧しいミノタウロスにたくさんたくさん智慧を授けてくれましタ。
山を掘リ、集落を築キ、大きな火を与エ、やがて最後の智慧を授けてくれましタ。
「おおミノタウロスよ、この世の一切はアジリニの夢の中にあります。この世の一切は夢として存在しているのです。一切が夢であり、おまえたちの悩み苦しむ心もまた夢なのです」
「おおミノタウロスよ、この世の一切は「夢」。生きることも死ぬことも、清いことも汚いことも、強いことも弱いことも夢。それがわかれば迷うことが無い。迷うことが無いということさえも無くなる」
ミノタウロスたちはこれを聞いて・・・「はぁん!?」ものごっつブチギレましタ。
いや強さに意味がないって、なに!? と思いまス。
これほどまでに鍛えあげたウルトラボディにアジリニ神はなんの価値も見出さないのだろうカ?
そもそもレベルアップ素材とか求めてきたのはそっちのくせニ、と思いましタ。
で、これを機に地上とは決別しよう、俺らこんだけ強いと戦争などを起こすだけで害悪になってしまうし・・・と、種族の方針を定めましタ。
世話になったのは確かだけれど、御使いのことモ、彼をつかわしたアジリニのことモ、もはや信じられませン。
だからミノタウロスはアジリニの眷属としテ、天女様を信じるようになりましタ。
だけど、その一方で・・・御使いより授かった『是諸法夢相』――世の一切は夢であるぞよ、という恐ろしい「夢」の思想――を、ミノタウロスは忘れられなかったでス。
「■■■、■■■」
「オサ は 強さ を 極める と……エート、アー、「夢」ばなんち言いゆうか……「ネテルトキミルヤツ」 の 境地 に 至る と、言って、いまス……それが、ミノタウロス族の、「ホンカイ」である、ト」
リリィは通訳された言葉を、正座して聞いていた。
話者はミノタウロス族の長であるグレン。通訳はグレンの義理の娘にあたるダマキが行っている。
彼女はミギワの妻で、集落の中ではもっとも公用語を扱うのが上手だった。
三人は長の家にある道場にいた。
光る苔を人為的に敷き詰めた空間だ。
座敷牢にあったリングとは反対に、黒い地面を見せることで四角い形を作っている。
リリィは困惑していた。
ゴズメルと引き離され、ここに連れて来られるまでの間、リリィは何度も泣きながら訴えたのだ。
『なぜこんなひどいことをするの!? そんなに私たちのことが気に入らないなら、今すぐ出ていくわ、離して、離してよ……!』
そう訴えた結果が、現状らしい。リリィは恐る恐る訪ねた。
「強さを追求するために、オズヌ一家を……あんな風にいじめる必要があった、と言いたいのですか?」
「……エーット」
ダマキは通訳に窮しているようだった。だが、グレンに促され、ミノタウロス訛りに訳す。
最終的に、グレンはうなずいた。その動じなさに、リリィはぞっとしてしまった。
(……こんなことが、ここでは当たり前なんだわ。ああ、なんてことなの)
傷つけられたオズヌ一家やゴズメルのことを思うと、リリィは悔しくて涙が止まらなかった。
(ゴズメルは、こんな恐ろしいところで育ってきたんだわ。……私はこれまで弱い妖精族であることが恥ずかしかったけれど、たとえ強くなれたとしても、このひとたちのようにはなりたくない。あんなひどいことをして、平気な顔をしていられるなんて……!)
ぽろぽろと涙をこぼすリリィを前に、ダマキは慌てた様子だった。
義父とリリィの顔を交互に見る。そしてグレンがなにも言わないのを見てとると、スッとリリィの隣へ来て「コワイ? コワクナイヨ。ダイジョブヨ」と、背中をさすってくれる。
その手つきの優しさが、壊れやすい人形を扱うのと同じであることにリリィは気がついていた。自分が殴られずに済んでいるのは、おそらくひとより弱弱しく見えるからなのだろう、と。
「■、■■■■。■■■■?」
グレンが低く呼びかけてくる。ダマキは「エッ?」と聞き返した。
だが、グレンの問いかけは同じだった。ダマキは泣いているリリィにそっと尋ねた。
「……オサ は『あなたは光り輝く御使い、その仲間か?』と 、聞いていまス」
「???」
リリィは目に涙をためたまま首をかしげた。
聞かれている意味がわからない。先ほどの昔話の登場人物が、なぜ自分にかかわりがあるのだろう。
グレンは深く嘆息した。
その時、リリィは彼の発する言葉を理解できた。彼の言葉とダマキの通訳を交互に聞いていたからだろうか、それとも、ゴズメルの口からその単語を聞いたことがあったからだろうか。
グレンは太い指でリリィを指さして、こう言った。
「しゃいん?」
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