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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
85.消災呪
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道場でリリィがグレンに向かって必死に話しかけているのを、ゴズメル、ミギワ、ダマキの三人は引き戸のすきまからコッソリ覗いていた。
「ね、言ったとおりだろう。リリィとあたしはラブラブなのさ。早くこの縄をといておくれ」
「黙れ」
縄のはしを掴んだミギワが、ボカッとゴズメルの頭を殴る。
ダマキは見ているだけでも痛いとでも言わんばかりに首を縮めた。
「あんた、またオサに打たれるき、そのへんにしといたら……」
「そうだそうだ」
仲裁してくれるダマキに便乗してゴズメルは言った。
「いくら誤解していたからって、オズヌ一家に対してあの仕打ちはないだろう。あれはミノタウロスがしちゃいけない弱いものいじめだった。親父に殴られたのは自業自得じゃないか」
言い切る前に、ゴズメルは固い拳骨を食わされていた。
(こ、この、暴力野郎……!)
ゴズメルはムカッときて、逆にミギワの手に噛みついた。お互いに手の次は足が出る、縄を抜ければ頭突き合いになる。無言で埃を立てまくる二人に、ダマキは「よせ、よさんかいね、いい年の兄妹が」と声をあげた。
ダマキにとってゴズメルは義妹だ。ミギワの指を食いちぎろうとしているゴズメルを、彼女は諭した。
「ゴズ、ぬしの兄つぁは責任をとったちゃ。ミギワはオサの言いつけで、オズヌの旦那の手当やらなんやら全部やらされたんよ。オサのチッチで流したことばい。勘弁しちゃり」
「モガモゴモゴガモガモガ(あたしにもちゃんと謝れ!)」
「しゃーしい、謝るのはキサンのほうちゃ! キサンがまっすぐ帰らんからこげにダリいことになった!」
その時、引き戸が向こうから開いた。黒い影のように立つグレンに見下ろされ、三人は揃って蒼褪める。
だが、グレンの脇には小さなリリィも顔を覗かせていた。
緑の瞳にゴズメルの存在を認めると、ぱぁっと表情を明るくして飛びついてきた。
「ゴズメル!」
ゴズメルはミギワをぶっとばしてリリィを抱きとめた。リリィは周りにいるミノタウロスが目に入らないかのようにゴズメルを抱きしめ、角と額に流れ星のようなキスを降らせた。
「あぁ、ゴズメル、ゴズメル、これは夢ではないのね? 私はあなたの腕の中にいるのよね? もっと強く抱きしめて、お願い……!」
「リリィ……! あたし、すごくあんたに会いたかった……!」
ゴズメルは恋人の求めに従った。死の危機を乗り越えて再会した二人にとっては、それが身内の前だなんてことは関係ない。熱い抱擁とキスで互いを確かめ合う。
花を散らすようにむつみあう二人に、ミノタウロス族は唖然としていた。
「■■■?」
だが、グレンの一声で、リリィは我に返ったようにゴズメルの胸を押す。
「ごめんなさい。お父さま、恥ずかし気もなく」
「■■■、■■■」
「いえ、あの、おかまいなく……! 今のはつい感極まってしまっただけですの」
ゴズメルはきょとんとした。
「リリィ、あんた、親父と会話できるのかい」
「ええ……なんとなくだけれど。二人きりになりたいかと聞いてくれたのでしょう?」
「……驚いたな」
ちょっとニュアンスは違うが、だいたい合っている。思い返してみると、リリィは風信子――精霊の言葉もわかるようだった。妖精族の固有スキルか何かなのかもしれない。
グレンは『まぐわうのか』『時間がかかるなら席を外す』と言ったのだった。ゴズメルは急に恥ずかしくなってきた。家出して以来会っていない父に性事情を知られるのは気まずい。
ゴズメルとグレンは、リリィを間に無言で睨みあった。
(どんな理由があったとしても、コイツが母ちゃを殺した事実は変わらない。里の誰もがそれを受け入れているとしても、あたしだけは絶対に親父を許すべきじゃない)
誰か一人でもグレンを憎み続けなければ、死んだ母親と妹がかわいそうすぎると思うからだ。
だが――。
(……老けたな)
ゴズメルは目の前にいる父を見て、素直にそう思った。長であるグレンは確かに怪物じみた強さと、群れのために妻を殺す残酷さを備えている。その狂暴ぶりはゴズメルなど及びもつかない。
だが十年前はもっと強かった。もっと恐ろしかった。そう感じるのは、ゴズメルが成長したからだろうか?
ゴズメルは目を伏せ、グレンに深々と一礼する。
「ミノタウロスぬオサ、グレン。よそもんがソウジョウしてワリかったちゃ。許してつかあさい」
ダマキがハッとした顔でミギワを見る。だがミギワは無言で首を振った。
娘としてではなく、あくまで里を出たよそ者として礼を尽くそうとするゴズメルを、グレンはじっと見つめた。
「■■■、■■■■」
『かまわない、誤解は解けた』と言う。それから低く続けられた言葉にゴズメルは目を細める。
リリィは古い言い回しを理解できなかったようだ。
歩き出す一同に流されながら「なんと言ったの? どういう意味?」と尋ねてきた。
「……『天女があなたたちを気に入った。山の子におなりなさい』と言ったんだよ。泊まっていけってさ」
「ね、言ったとおりだろう。リリィとあたしはラブラブなのさ。早くこの縄をといておくれ」
「黙れ」
縄のはしを掴んだミギワが、ボカッとゴズメルの頭を殴る。
ダマキは見ているだけでも痛いとでも言わんばかりに首を縮めた。
「あんた、またオサに打たれるき、そのへんにしといたら……」
「そうだそうだ」
仲裁してくれるダマキに便乗してゴズメルは言った。
「いくら誤解していたからって、オズヌ一家に対してあの仕打ちはないだろう。あれはミノタウロスがしちゃいけない弱いものいじめだった。親父に殴られたのは自業自得じゃないか」
言い切る前に、ゴズメルは固い拳骨を食わされていた。
(こ、この、暴力野郎……!)
ゴズメルはムカッときて、逆にミギワの手に噛みついた。お互いに手の次は足が出る、縄を抜ければ頭突き合いになる。無言で埃を立てまくる二人に、ダマキは「よせ、よさんかいね、いい年の兄妹が」と声をあげた。
ダマキにとってゴズメルは義妹だ。ミギワの指を食いちぎろうとしているゴズメルを、彼女は諭した。
「ゴズ、ぬしの兄つぁは責任をとったちゃ。ミギワはオサの言いつけで、オズヌの旦那の手当やらなんやら全部やらされたんよ。オサのチッチで流したことばい。勘弁しちゃり」
「モガモゴモゴガモガモガ(あたしにもちゃんと謝れ!)」
「しゃーしい、謝るのはキサンのほうちゃ! キサンがまっすぐ帰らんからこげにダリいことになった!」
その時、引き戸が向こうから開いた。黒い影のように立つグレンに見下ろされ、三人は揃って蒼褪める。
だが、グレンの脇には小さなリリィも顔を覗かせていた。
緑の瞳にゴズメルの存在を認めると、ぱぁっと表情を明るくして飛びついてきた。
「ゴズメル!」
ゴズメルはミギワをぶっとばしてリリィを抱きとめた。リリィは周りにいるミノタウロスが目に入らないかのようにゴズメルを抱きしめ、角と額に流れ星のようなキスを降らせた。
「あぁ、ゴズメル、ゴズメル、これは夢ではないのね? 私はあなたの腕の中にいるのよね? もっと強く抱きしめて、お願い……!」
「リリィ……! あたし、すごくあんたに会いたかった……!」
ゴズメルは恋人の求めに従った。死の危機を乗り越えて再会した二人にとっては、それが身内の前だなんてことは関係ない。熱い抱擁とキスで互いを確かめ合う。
花を散らすようにむつみあう二人に、ミノタウロス族は唖然としていた。
「■■■?」
だが、グレンの一声で、リリィは我に返ったようにゴズメルの胸を押す。
「ごめんなさい。お父さま、恥ずかし気もなく」
「■■■、■■■」
「いえ、あの、おかまいなく……! 今のはつい感極まってしまっただけですの」
ゴズメルはきょとんとした。
「リリィ、あんた、親父と会話できるのかい」
「ええ……なんとなくだけれど。二人きりになりたいかと聞いてくれたのでしょう?」
「……驚いたな」
ちょっとニュアンスは違うが、だいたい合っている。思い返してみると、リリィは風信子――精霊の言葉もわかるようだった。妖精族の固有スキルか何かなのかもしれない。
グレンは『まぐわうのか』『時間がかかるなら席を外す』と言ったのだった。ゴズメルは急に恥ずかしくなってきた。家出して以来会っていない父に性事情を知られるのは気まずい。
ゴズメルとグレンは、リリィを間に無言で睨みあった。
(どんな理由があったとしても、コイツが母ちゃを殺した事実は変わらない。里の誰もがそれを受け入れているとしても、あたしだけは絶対に親父を許すべきじゃない)
誰か一人でもグレンを憎み続けなければ、死んだ母親と妹がかわいそうすぎると思うからだ。
だが――。
(……老けたな)
ゴズメルは目の前にいる父を見て、素直にそう思った。長であるグレンは確かに怪物じみた強さと、群れのために妻を殺す残酷さを備えている。その狂暴ぶりはゴズメルなど及びもつかない。
だが十年前はもっと強かった。もっと恐ろしかった。そう感じるのは、ゴズメルが成長したからだろうか?
ゴズメルは目を伏せ、グレンに深々と一礼する。
「ミノタウロスぬオサ、グレン。よそもんがソウジョウしてワリかったちゃ。許してつかあさい」
ダマキがハッとした顔でミギワを見る。だがミギワは無言で首を振った。
娘としてではなく、あくまで里を出たよそ者として礼を尽くそうとするゴズメルを、グレンはじっと見つめた。
「■■■、■■■■」
『かまわない、誤解は解けた』と言う。それから低く続けられた言葉にゴズメルは目を細める。
リリィは古い言い回しを理解できなかったようだ。
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