マジカルメタモルショータイム!

夜狐紺

文字の大きさ
7 / 36
第1章 アニマル☆サーカス

第6話 とっておき

しおりを挟む
「ぴいっ! きゅうっ、るる! きゅうう! きゅうん!」
『あたし、どうぶつじゃないよ、かーばんくる、なんかじゃない!』
  カーバンクルにされた女の子――ゆうねちゃんに、ロコちゃんが魔法を掛けると、聞えてきた言葉。
 ! この声は……。
 間違いない。人間の声と、カーバンクルの鳴き声が、一緒に聞こえてくる?!
「ロコちゃんはね、動物とお話しできる、『おはなし魔法』が使えるんだよ!」
 えっへんと、フィーが胸を張る。これが、ロコちゃんの、魔法。確かにこんなことは、フィーの魔法では起こっていなかった。
「手を重ねて、ロコちゃんの魔力をフィーとうさぎさんにも分けて貰ったんだ!」
 うさぎの手を開いたり閉じたりして確かめる。だけど、外見は特に、ロコちゃんと手を重ねる前と変わりはなかった。おはなし魔法……動物の言葉が分かる、魔法。
「聞えているみたいですね」
 ロコちゃんはわたしたちの様子を見て、緊張していた表情をちょっと緩めて。
「あ、あの……」
 それから、ゆうねちゃんに話し掛けた。
『な、なに……って、しゃべれるようになってる?』
「はい。これなら、もう大丈夫ですよね!」
『ううっ、だいじょうぶなんかじゃ、ない! にんげんにもどしてっ!』
「えっ、喋れなくなったから、泣いていたんじゃ……?」
『それも、そうだけど、そうじゃない! しゃべれたって、ちがうもん!』
「とってもかわいいカーバンクルに、なったのに、ですか? それにこれからは、楽しい楽しいサーカスにも出られるんですよ……?」
『こんな、こんなへんなどうぶつなんて、ちっともかわいくないっ! いやだ、きらい、きらいっ!』
「魔法でお空を飛んだり、動物の仲間たちと遊んだりもできるんですよ……?」
『そんなへんな、どうぶつみたいなことしたくない! にんげんはそんなのしないもん!』
「そ、そんな……」
『あたしはどうぶつじゃないもん、にんげんだもん! ののはちゃんもわたしも、はやくにんげんにして!』
「あの……ゆうねちゃんは、おかしは好きですか?」
『おかし? う、うん、すき、だけど……』
「それならきっと、ゆうねちゃんが大好きなおかしになれて、ののはちゃんもきっとよろこんでるはずですよ……!」
『な、なにいってるの? ののはちゃんに、おかしになんかなってほしくないのに……』
「ゆうねちゃんは、ののはちゃんが大好きな動物に変身できて、嬉しくないんですか……?」
『そんなの、そんな!』
「でも、ののはちゃんはきっと、あなたが動物になってくれたらなって、ずっと願っていたんじゃ……」
『うそだ! そんなのちがう! たすけて、だれか、たすけて……!』
 あ、ロコちゃんは、何を言っているんだろう……? 動物が好きだからって、友達を動物に変えたくなったり、友達の大好きな動物になりたいって思うなんてこと、有る訳ないのに。
『もうやだっ! かえりたい、まほうなんて、どうぶつなんてやだっ……!』
「ど、どうしても、嫌なんですか……?」
 ゆうねちゃんに、ロコちゃんが戸惑いながら尋ねる。
『いやっ! 人間に戻りたいっ! うわああああん……』
 ゆうねちゃんがロコちゃんに吠えて、ぽろぽろと涙をこぼす。
 だけど、フィーのことを見てきたから、嫌でも知っている。この魔法の世界の魔法使い達は……ロコちゃんでも、誰でも、相手を戻せない。
 それに例え戻せるとしても、きっと戻したりなんかしない……。
「そんな……」
 ロコちゃんは悲しそうに俯くと、近くに置いてあったおもちゃ箱から、そっとある物を取り出した。
「す、ステッキ?」
 それは、青と白色の縞模様の描かれた、とても長いステッキだった。フィーが普段使っているピンク色の物よりももっと長くて、七十センチぐらいは有るかもしれない。持ち手の部分がくるんと、しっぽのように丸まっている。
 でも、どうして、ロコちゃんは今、ステッキを……? だってロコちゃんはさっきまで、フィーの様に、道具無しに自分の力だけで魔法を使えていたはずなのに。
 もしかして、魔法に使うためのステッキじゃ、なくて。
「……!」
 ある可能性に行き着いて、がたがたと体が震えてくる。
 魔法に使うためのステッキじゃないのなら、まさか。
 ま、まさかあのステッキでゆうねちゃんを叩いたりして、無理矢理言うことを聞かせる、とか……? 
 いや、ロコちゃんはそんなこと、しないだろうけど。でも、もしも、万が一本当にそうなら、流石にそれは、それだけは、止めなきゃ!
「い、いえっ、そ、そんな乱暴なこと、しませんよ……!」
 だけど、わたしが口を開くと同時に、ロコちゃんは気配を察したのか、すぐに否定した。
「た、大切なサーカスの仲間に、そんな、そんなひどいこと……」
 想像するだけでも恐ろしいという風に、がたがたと震えて目を閉じるロコちゃん。
 その様子は、本当にカーバンクル――ゆうねちゃんのことを思いやっているみたいで……確かに、ロコちゃんはステッキで叩いたりなんかする子じゃないって、はっきりと伝わってくる。
 ロコちゃんは、優しい子なんだな……と思うと同時に、混乱する。
「もー、ロコちゃんは、そんなことしたりしないもん」
 フィーがちょっと頬を膨らませて、わたしに言う。 
 だけど、それなら、あのステッキは何に使う物なんだろう。
「ロコちゃん、マジカルステッキ、ずっと大切にしているんだね!」
 するとフィーが、はしゃぎながらロコちゃんに話し掛ける。
「うん! もしかして、フィーちゃんも……?」
「学校にいた時とおんなじだよ! ほら!」
 そしてフィーはいそいそと、短めのステッキを取り出した。
「えへへ、おそろいの模様!」
「フィーちゃんと一緒……!」
 そして二人はこつん、と短いステッキと長いステッキを交差させて嬉しそうに笑った。その縞模様は色以外は本当にそっくりで。
 きっと、色々な思い出が詰まっているんだろうな……。
「ぴい、ぴいいっ!」
 と、そこで。ゆうねちゃんの甲高く訴える様な泣き声が聞こえてきて。
「あっ……」
 と、ロコちゃんが囁いて、ゆうねちゃんの方を向いて。マジカルステッキを手にしながら、一歩近付いた。
「マジカルステッキはね、とっておきの、秘密の魔法の時に使うんだよ!」
 フィーがわくわくしながら目を輝かせて、そう説明する。
 秘密の魔法?
「本当は……こっちの魔法は、動物さんに使いたくないんですが……ごめんなさい…………」
 ロコちゃんが、寂しそうにステッキをじっと眺めて、それから視線をゆうねちゃんに戻す。
『止めて! ぶたないで! いたいのはやだあっ!』
「こ、怖がらなくても、平気です! 絶対にぶつけたりなんかしませんから……!」
『うそつきっ! しんじないもん、まほうつかいのいうことなんて……!』
 申し訳なさそうに、ロコちゃんが更に一歩、ゆうねちゃんに近付く。
『や、やだ、やめて……』
「な、泣かないで……すぐに終わるから」
 そして、ステッキをゆっくりと持ち上げて……。
「それっ……!」
 ロコちゃんが、こつん、と、ステッキの先っぽを自分の足元に本当に弱く、物凄く弱く、床に打った。
 ゆうねちゃんには、ちっとも当たっていないし、かすりもしなかった。
 だけど。
「――!!!」
 その瞬間、ゆうねちゃんの足元に、模様が細かく描かれた何重もの円が現れて。
 そして、ぼんやりと暗いサーカスのテントの中で、青い光を発して輝き始めた。
 これは……魔法陣? 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...