病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子

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第二部 2章

<4>

当然だがアシュリーたちが手作りクラブに入部することは、校内でもちょっとした注目の的になった。
事前に情報を入手した生徒たちよる入部希望が殺到したそうだが、レイが何かしらの力を使って入部制限を設けたことで部員は元からの生徒と俺たちだけになったらしい。
「よ、ようこそ手作りクラブへ」
記念すべき入部初日、部室で俺たちを迎えてくれたのは、黒縁の眼鏡をかけたブドウ色のフワフワした髪と目の少年だった。
歓迎するように手を広げているのだが可哀想になるほど震ている。レイやユーリの圧にひどく怯えているのが明らかだった。
「ぼ、僕が部長のシェーン・リンチです」
よく見ると他の部員たちも部屋の隅にあるテーブルに固まり、怯えた表情でこちらを窺っている。
「部員はこれで全員か? 自己紹介をしてくれ」
ユーリが周囲をぐるりと見回しながらリンチ部長に視線を向ける。
「は、はいっ! みんな、こっちに集まって」
部長の声に、テーブルの隅に集まっていた部員たちが駆け寄ってくる。
「今年の1年生はまだ入部していないんだ。2年生が3人、それに僕ともう1人3年がいるんだ」
「クラブ成立ぎりぎりの人数じゃん」
ルークの言葉に部長が頷く。
「そうなんです。だから皆さんが入部してくれて感謝しています」
頭を下げた部長にレイが不思議そうな目をする。
「リンチ、おまえ俺と同じクラスだよな? なぜ敬語なんだ」
リンチ部長はビクリと肩を震わせる。
「ぼ、僕の家は田舎の子爵家ですから、同じクラスとはいっても皆さんとは格が違いますので……」
その言葉に、部長の背後に立つ部員たちもコクコクと首を縦に振っている。
「はぁ?」
レイが呆れたような声を出す。本人はただ呆れただけで、とくに怒ったりしているわけではない。だが彼は超名門ヴァイオレット公爵家の次期後継者だ。そのスペックだけでもたいがいの生徒はびびってしまう。
現に部長の顔は可哀想なほどに青ざめている。
(やばい。なんとかフォローしないと)
だが次の瞬間、アシュリーがレイの肩に手を置いた。
「レイ、そんな声を出したら失礼だよ」
「なんだアシュリー。俺はただ聞き返しただけだぞ」
「きみはそうでも、リンチくんにはそうは聞こえていなかったと思うよ。ごめんねリンチくん」
推しが優しく微笑むと、部長の顔が青から赤に変わった。そりゃ超絶美人の推しに微笑みなんて向けられたら赤面不可避だよな、わかる。
「あ、はい……」
部長は顔を真っ赤にしてもじもじしながら返事をした。
(けど推しに恋なんてしたら許さないからな)
「校訓の一つに、セントローズの生徒は身分や爵位に関係なく平等っていうのがあるよね。だからリンチくん、僕らに敬語は使わないでほしいんだ。クラスメイトだし。レイもそれが言いたかったんだと思う。そうだよね?」
推しの言葉にレイが同意する。
「で、でも……いいのでしょうか」
「うん。それにできれば名前で呼び合おう。僕らもリンチくんことはシェーンって呼ぶから、僕のことはアシュリーって呼んでね」
「えっ!?」
驚くリンチ部長にアシュリーは花のように笑った。
「よろしくね、シェーン」
アシュリーは白魚のような美しい手をリンチ部長に差し出した。
「あ、は、はい……」
リンチ部長はアシュリーの手を恐る恐る握ると、これ以上ないくらい真っ赤になって頭から湯気を出している。もしかしてリンチ部長は火の魔力の使い手なのだろうか。
それにしてもこの短時間でクラスメイトも虜にするなんてさすが推し。というか部長が羨ましい。俺にもあの笑顔を向けてほしい。
ライブで隣の席の子が自分の推しにファンサをされたらきっとこんな気分になるのだろうか。そんなことを考えながら推しを眺めていたら、アシュリーが振り返った。視線がうるさかっただろうか。目が合うとすみれ色の瞳が軽く見開かれ、それからゆっくりと細められる。
(お、俺にも笑いかけてくれた……!)
思わず小さく手を振ると、アシュリーも笑いながら小さく手を振ってくれた。
それだけで天にも昇る気分になる。
(アシュリーがもしアイドルだったらツアー全通してグッズも鬼課金してただろうな)
頭の中にアシュリーアイドルパロの妄想が広がっていく。妄想に浸っていると脇腹を小突かれた。
「おい。何ぼーっとしてんだ」
「あ、ごめんごめん。ちょっと妄想を。えへへ」
こうして推しの魅力の素晴らしさを改めて感じながらクラブ活動が本格的に始まろうとしていた。
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