病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子

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第二部 2章

<5>

俺たちが手作りクラブに入部して、あっという間に2ヶ月が経過した。制服も夏服になり、デザインはそのままに、白に変わった。
部員たちともすっかり仲良くなり、人間関係の輪は確実に広がっている。
推し離れができているとは言い難い。だが一気に離れるのではなく、少しずつ慣らしながら適切な距離を取っていく方向に切り替えた。
来月は7月で、その後は待ちに待ったサマーバケーションだ。だがその前、7月11日は推しの誕生日という一大イベントが控えている。
この前の週末、帰宅したとき、家では推しの誕生日の話が出た。
『去年のアシュリーの誕生日はちょうど週末だったから当日祝うことができたが、今年は難しいな。サマーバケーション中に盛大なパーティーを開こう』
父上の言葉に母も頷く。
『それがいいですわね! もちろんお誕生日プレゼントは当日、寮に届けますから楽しみにしていてね』
『父上、母上、ありがとうございます。プレゼント、楽しみにしています。パーティーはそんなに大きなものはちょっと恥ずかしいです、もう僕も小さな子どもじゃないですし』
そう言って笑うアシュリーの顔を眺めていたとき、天啓がひらめいた。
(そうだ! 今年は寮で一緒にいられるんだから俺が推しの誕生日を祝おう!)
今の自分にどんなお祝いができるかをあれこれ考えた結果、俺はクラブ活動を利用して手作りの何かをプレゼントすることにしたのである。
ちなみに参考までにアーノルドにも意見を聞いたところ、「クソ兄貴にプレゼントしたいものなんてタイマン勝負しかない」と言われてしまった。
ユーリやレイ、ルークに相談したらすぐに推しにバレてしまいそうなので、クラブの他の先輩方を頼ることに決めたのだ。
「お疲れ様です!」
「……っス」
アーノルドと二人、部室のドアを開ける。ちなみにクラブ活動に行く前も、教室まで迎えに来るという推しやレイを俺たちはなんとか押し切った。
「あれ? 今日は3年の先輩たちはまだなんですね」
いつも誰よりも早いリンチ部長の姿も見えないのはめずらしい。
「今日、3年生は高等部への説明会があるはずだよ」
部屋の窓際に設置されたキッチンで小麦粉をふるいながら、オーウェン先輩が答えてくれる。ピンクベージュにはちみつ色の大きな猫目が特徴的な2年生で、公爵家の末っ子だ。
食べることと作ることが大好きで、いつもキッチンで何かを作っている。料理が趣味の貴族はレアで、アシュリーとも仲が良い。なので正直、最近ちょっと俺としては警戒している人物でもある。
「そうなんですね、ありがとうございます」
礼を言うとオーウェン先輩は人懐っこい笑顔で俺を見ると、再び視線を小麦粉に戻す。
「先輩、今日はなに作るんスか」
アーノルドはオーウェン先輩のほうに歩いていく。
(そうだ! 3年生がいない今はベストなタイミングじゃん!)
俺は部室の隅のほうで向かい合って何かを作っている2人の先輩のほうへ歩いていく。
「ウィリアムズ先輩、バーロウ先輩! 今、少しお話ししてもいいですか?」
二人が同時に顔を上げる。
ウィリアムズ先輩は伯爵家の次男で、黒髪に青い目のとても愛らしい顔立ちをした先輩だ。小柄なせいもあり、よく女子と間違われることもあるらしい。
アーノルドとは違って見た目通りの性格で、アクセサリーや宝石を作るのが得意のなのだ。
ウィリアムズ先輩の向いに座っているのはバーロウ先輩。
実家は美術品の収集で有名な侯爵家で、薄紫の髪に金色の切れ長の目が特徴的だ。ウィリアムズ先輩と仲がよく、バーロウ先輩のデザインしたアクセサリーを、ウィリアムズ先輩が形にしたりすることも多い。
「ルイスくん、どうしたの?」
ウィリアムズ先輩が優しく話しかけてくる。少し推しに雰囲気が似ていて、俺はこの人がけっこう好きだ。もちろん推しが唯一無二なのだが。
「あの、実は来月がアシュリー兄さまの誕生日なんです」
「クロフォード家は毎年、ご子息のために素晴らしい誕生日パーティーを開かれるので有名だよな。今年も色々と計画は進めているんだろう?」
バーロウ先輩が興味深そうに目を瞬かせる。
「はい、きっと両親が張り切って準備していると思います。ただ、当日は平日なので寮で過ごすことになるんです。それで、あの……僕、せっかくだから当日に何かプレゼントをしたいなと思って。先輩方、相談に乗っていただけないでしょうか」
「わあ! とっても楽しそう! 僕でよければぜひ!」
ウィリアムズ先輩は両手を組んで青い瞳をキラキラさせている。
「いいね。俺にできることなら喜んで協力するよ」
バーロウ先輩がウインクをしながら返事をしてくれた。
(やった! この二人が協力してくれたら勝ち確だぜ!)
俺は二人に頭を下げて礼を言い、さっそく相談を始めた。
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