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第二部 3章
<5>
海から戻った俺たちは、一度部屋に戻り夕食の時間に再びテラスへと集まった。
俺と推しの部屋は隣同士。しかも部屋を繋ぐドアがありお互いの部屋を行き来できるようになっている。
「喜べ。ブラコンのおまえのために俺がこの部屋にしてやったんだぜ」
アーノルドが耳元で囁いてくる。
「別にブラコンじゃないけど」
口ではそう言いながら、心の中ではアーノルドに菓子折りを渡したいぐらいには嬉しい。
テラスにはすでにバーベキューの準備がされていた。
俺の想像していた庶民バーベキューとは比較にならないセレブのバーベキューを前に、食欲が漲ってくる。
あのあと、結局皆で海に入って遊んだりといつもの数倍は体を動かしたせいか腹の虫がいまにも鳴り出しそうだ
「めっちゃ腹減ったー。すげえうまそうな匂いするし」
ルークがよだれを垂らさんばかりの目でテーブルや鉄板の上を見ている。
「待てもできないのか。頭の悪い犬だな」
ユーリが口の両端を上げて煽ると、ルークが泣きまねをしながら俺の腕に縋りついてきた。
「ルイスぅ! おまえからも何か言ってくれよ!」
「えっ!?」
他人事のようにじゃれ合いをぼーっと眺めていたら、いきなり巻き込まれてしまった。
しゃがんで上目遣いで俺を見上げるルークは本当の子犬のようでちょっと可愛い。
思わずよしよししてしまうと、ルークが顔を真っ赤にしてピシリとと固まってしまう。
「あわわ、ご、ごめんなさいすみませんっ! あんまり可愛くてつい……」
しまった。これでもルークは今や俺の先輩なんだった。
「コイツが可愛いだと? どう見ても俺のほうが可愛いだろうが」
ユーリが眉を跳ね上げたかと思うと、突然しゃがみこんで俺のもう片方の腕に抱きついてくる。
「ひぃっ! な、ななななにしてんですか!」
慌てる俺にユーリは見たこともないような下がり眉で目を潤ませている。
「どうだ? そのバカ駄犬よりも俺のほうがずっと可愛いだろう」
セリフはまったく可愛くない。だが悔しいことに顔の破壊力は凄まじかった。
(コイツ、黙ってればやっぱめちゃくちゃ可愛いな。クソ、ダメだ騙されるな俺! コイツはユーリ。コイツはユーリだ……)
「なあそっちばっか見んなよ。ユーリより俺のほうが可愛いよな?」
ぐいっと反対側が引っ張られ、見るとルイスが「くぅーん」という鳴き声が今にも聞こえそうな目で俺を見上げている。
「はぇっ!? う、あ、えっと……」
(いやいや、こっちはこっちでバカ可愛い。いつもやんちゃなくせにどうしたんだよルーク!)
もともと属性が「お兄ちゃん」な俺は、実は甘えられるのに弱い。もちろん推しが一番ではあるが、種類の違う可愛さを前にあたふたしていると、急に視界が高くなった。
「……え?」
一拍遅れて誰かに背後から抱き上げられたのだと理解する。
「ア、アシュリー兄さま!?」
顔だけ振り返ると、すみれ色の瞳と視線がぶつかる。持ち上げられているせいで、同じくらいの目線になっていて、なんだかドキドキしてしまう。
「二人とも、あまりうちの弟を困らせないでくれるかな」
微笑みを浮かべた推しが、しゃがみこんだままのユーリとルークを制する。
先にユーリが立ち上がると、肩を竦めた。
「ずいぶんとわかりやすい牽制だな……つまらん。ルーク、行くぞ」
「おあっ! ちょ、おいユーリ!」
ユーリはルークの右腕を掴むと、他の先輩たちの輪のほうへと歩いて行った。
その場には推しと、推しに持ち上げられたままの俺が取り残される。
「あ、あの。アシュリー兄さま」
「ん? どうしたのルイス」
「えっと、その……おろしていただいてもいいでしょうか」
「どうしようかな」
「はぇっ!?」
いつもならすぐにおろしてくれるはずの推しの言葉に動揺してしまう。
「だだだだだめですっ! 僕は重いですし兄さまが腕を痛めてしまいますっ!」
だがアシュリーはいたずらっぽく笑うだけだ。
「全然重くないけど? 僕だって男なんだからルイスを持ち上げるくらいわけないんだよ」
「えっ! あ……うう……」
そんな笑顔を見せられたら、どうしていいかわからなくなる。ぎゅっと目を閉じて唇を引き結ぶと、アシュリーが小さく笑った。
そうしてすぐに地面に足が着く。目を開けると、すみれ色の瞳が俺を見下ろしている。
「ごめんね。ちょっとからかいすぎたかな。初めてルイスや友達と過ごす夏休みに、思ったより浮かれてるみたいだ」
海風に銀色の髪をなびかせながら恥ずかしそうに笑う推しがエモすぎて眩暈がしそうだ。
なぜか胸の奥がぎゅっとなるような、切ないような苦しさでいっぱいになる。
「浮かれて当然です! 僕も浮かれてます! 兄さま、絶対に楽しい夏休みにしましょうね!!」
俺が力いっぱい叫ぶと、推しは目を見開いた後、くすくすと楽しそうに笑った。
俺と推しの部屋は隣同士。しかも部屋を繋ぐドアがありお互いの部屋を行き来できるようになっている。
「喜べ。ブラコンのおまえのために俺がこの部屋にしてやったんだぜ」
アーノルドが耳元で囁いてくる。
「別にブラコンじゃないけど」
口ではそう言いながら、心の中ではアーノルドに菓子折りを渡したいぐらいには嬉しい。
テラスにはすでにバーベキューの準備がされていた。
俺の想像していた庶民バーベキューとは比較にならないセレブのバーベキューを前に、食欲が漲ってくる。
あのあと、結局皆で海に入って遊んだりといつもの数倍は体を動かしたせいか腹の虫がいまにも鳴り出しそうだ
「めっちゃ腹減ったー。すげえうまそうな匂いするし」
ルークがよだれを垂らさんばかりの目でテーブルや鉄板の上を見ている。
「待てもできないのか。頭の悪い犬だな」
ユーリが口の両端を上げて煽ると、ルークが泣きまねをしながら俺の腕に縋りついてきた。
「ルイスぅ! おまえからも何か言ってくれよ!」
「えっ!?」
他人事のようにじゃれ合いをぼーっと眺めていたら、いきなり巻き込まれてしまった。
しゃがんで上目遣いで俺を見上げるルークは本当の子犬のようでちょっと可愛い。
思わずよしよししてしまうと、ルークが顔を真っ赤にしてピシリとと固まってしまう。
「あわわ、ご、ごめんなさいすみませんっ! あんまり可愛くてつい……」
しまった。これでもルークは今や俺の先輩なんだった。
「コイツが可愛いだと? どう見ても俺のほうが可愛いだろうが」
ユーリが眉を跳ね上げたかと思うと、突然しゃがみこんで俺のもう片方の腕に抱きついてくる。
「ひぃっ! な、ななななにしてんですか!」
慌てる俺にユーリは見たこともないような下がり眉で目を潤ませている。
「どうだ? そのバカ駄犬よりも俺のほうがずっと可愛いだろう」
セリフはまったく可愛くない。だが悔しいことに顔の破壊力は凄まじかった。
(コイツ、黙ってればやっぱめちゃくちゃ可愛いな。クソ、ダメだ騙されるな俺! コイツはユーリ。コイツはユーリだ……)
「なあそっちばっか見んなよ。ユーリより俺のほうが可愛いよな?」
ぐいっと反対側が引っ張られ、見るとルイスが「くぅーん」という鳴き声が今にも聞こえそうな目で俺を見上げている。
「はぇっ!? う、あ、えっと……」
(いやいや、こっちはこっちでバカ可愛い。いつもやんちゃなくせにどうしたんだよルーク!)
もともと属性が「お兄ちゃん」な俺は、実は甘えられるのに弱い。もちろん推しが一番ではあるが、種類の違う可愛さを前にあたふたしていると、急に視界が高くなった。
「……え?」
一拍遅れて誰かに背後から抱き上げられたのだと理解する。
「ア、アシュリー兄さま!?」
顔だけ振り返ると、すみれ色の瞳と視線がぶつかる。持ち上げられているせいで、同じくらいの目線になっていて、なんだかドキドキしてしまう。
「二人とも、あまりうちの弟を困らせないでくれるかな」
微笑みを浮かべた推しが、しゃがみこんだままのユーリとルークを制する。
先にユーリが立ち上がると、肩を竦めた。
「ずいぶんとわかりやすい牽制だな……つまらん。ルーク、行くぞ」
「おあっ! ちょ、おいユーリ!」
ユーリはルークの右腕を掴むと、他の先輩たちの輪のほうへと歩いて行った。
その場には推しと、推しに持ち上げられたままの俺が取り残される。
「あ、あの。アシュリー兄さま」
「ん? どうしたのルイス」
「えっと、その……おろしていただいてもいいでしょうか」
「どうしようかな」
「はぇっ!?」
いつもならすぐにおろしてくれるはずの推しの言葉に動揺してしまう。
「だだだだだめですっ! 僕は重いですし兄さまが腕を痛めてしまいますっ!」
だがアシュリーはいたずらっぽく笑うだけだ。
「全然重くないけど? 僕だって男なんだからルイスを持ち上げるくらいわけないんだよ」
「えっ! あ……うう……」
そんな笑顔を見せられたら、どうしていいかわからなくなる。ぎゅっと目を閉じて唇を引き結ぶと、アシュリーが小さく笑った。
そうしてすぐに地面に足が着く。目を開けると、すみれ色の瞳が俺を見下ろしている。
「ごめんね。ちょっとからかいすぎたかな。初めてルイスや友達と過ごす夏休みに、思ったより浮かれてるみたいだ」
海風に銀色の髪をなびかせながら恥ずかしそうに笑う推しがエモすぎて眩暈がしそうだ。
なぜか胸の奥がぎゅっとなるような、切ないような苦しさでいっぱいになる。
「浮かれて当然です! 僕も浮かれてます! 兄さま、絶対に楽しい夏休みにしましょうね!!」
俺が力いっぱい叫ぶと、推しは目を見開いた後、くすくすと楽しそうに笑った。
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