病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子

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第二部 3章

<7>

「みんな集まったね? それじゃこの箱からくじを引いてください!」
赤いくじ引き箱を両手で持ったリンチ先輩の声に、俺たち列になってくじを引く。
「兄さま、何番でした?」
「僕は3番。ルイスは?」
「えーっと」
なんということだ。俺が手にしたくじには何度見返しても「2」と書いてある。
(肝心な時に運がない)
がっくり肩を落として口を開きかけた瞬間、腕を強い力で引かれた。
「アーノルドくん?!」
アーノルドは目だけで黙ってろと告げると、推しの方を見た。
「すみませんクロフォード先輩。一瞬、コイツ借ります」
そう言うと推しが答える間もなく俺を引っ張って行く。
「ちょっと、いきなりどうしたの?!」
だがアーノルドくんはそれには答えない。
「おい、おまえ何番だった?」
「え?」
「くじだよ、くじ」
「あ、えーと、2番だけど」
そう言った瞬間、アーノルドくんは俺の手から素早くくじを奪い取り、代わりに自分の持っていたものを押し付けた。
「ちょ、だめだよ、こんなことしちゃ!」
「うるせえ、騒ぐな。番号、見てみろよ」
くじの紙を開くと、中には3という番号が書かれている。
「え、これ……」
「クロフォード先輩の同じ番号だろ? さっき聞こえたんだよ。クロフォード先輩と2人きりなんて俺はぜってー無理。つーわけでおまえと替わられせろ」
「アーノルドくん、いいの?」
こっちとしては願ってもない。
「いいから替えてんだろ、おら行くぞ」
アーノルドは俺を引っ張るようにして皆の場所へと戻った。
「アーノルドと何を話してたの?」
アシュリーが首を傾げて優しく聞いてくる。
「あっ、いや、なんでもありません」
自分の意志ではないにしろ、くじを勝手に替えてしまったという後ろめたさで挙動不審になってしまう。
「そう……ところで結局、ルイスは何番だったの」
「あっ、はい……僕、も3番です」
握りしめた紙を見せると、すみれ色の目が見開かれた。
「僕のペアはルイスだったんだね、嬉しいな」
「ぼっ、僕も!!嬉しいです!!」
優しく細められた目に、直立で大声を出してしまう。
結局、くじの順番は1番がレイとオーウェン、2番がユーリとアーノルド、3番なアシュリーと俺、4番がリンチ先輩とウィリアムズ先輩、5番がルークとバーロウ先輩だった。
「これはこれは。俺の相手はクソチビか。頼むから作り物の化け物ごときに泣き喚いて醜態を晒すなよ?」
「はぁ? 誰に言ってんだコラ! てめぇこそびびって腰抜かすんじゃねーぞ」
俺たちの前ではユーリとアーノルドがいつもの煽り合戦を繰り広げている。
(てかこいつら、実はめちゃくちゃ相性いんじゃねーの?)
そんなことを思いながら2人を眺めていると、トンと肩を叩かれる。
目を上げると、推しと目が合う。
「ルイスは大丈夫? 本当に怖くない?」
「はい。全然」
前世では病院の静まり返った薄暗い廊下や幽霊が出ると噂の病棟を夜間に歩くのも日常茶飯事だったので。
「もし幽霊が出てきても、僕が兄さまをお守りしますから!」
アシュリーは頷きながら頭を撫でてくれる。
「僕も今のところは大丈夫だけど、もし怖くなったらそのときは守ってもらおうかな」
「はい! お任せください!」
はりきって力こぶを作るようなポーズを披露すると、推しは頼もしいねと小さく笑った。
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