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第二部 3章
<12>
アシュリーの捜索はヴァイオレット公爵が自ら指揮を取ってくれている。
両親も仕事が終わり次第、こちらへ向かうと報せもあった。
それを聞いて少しだけ安心したが、俺たち子どもは当然、捜索には加わらせてもらえない。
何かあればすぐに連絡するからと言われても不安で、皆でなんとなくダイニングに集まっていた。
だが二日目の今日も、アシュリーに関するなんの情報もなく日が暮れてしまった。
「ルイス、今日はもう休んだほうがいい」
レイが声をかけてくる。隣ではアーノルドも心配そうにこっちをじっと見ていた。
「……レイの言うとおりだ。休養を取らないとおまえまで倒れてしまうぞ」
ユーリが静かな声で言う。
さすがのユーリも、この状況ではいつものように煽ったりしてくることはない。
だが、それが逆にことの重大さを示しているような気がして、胸が重苦しくなる。
休んだほうがいいことなんて、俺が一番よくわかっているのだ。
でも今もどこかでアシュリーが1人つらい思いをしているのかと思うと、何もできない自分に苛立ち、叫び出したくなる。
こんな状況で休めるはずがない。
だが、そんなのはただの八つ当たりでしかないこともわかっている。
レイもアーノルドもユーリも、俺のことを心から案じてくれているだけなのだ。
(それなのに、俺ときたら……)
自分の情けなさに涙が零れそうになり、下唇を噛んで俯く。
その途端、ポンと頭に大きな手が置かれる。
勢いよく顔を上げると、ジェシーが笑っていた。
「ルイス、なんて顔してるんだ。大丈夫だぞ、アシュリーは絶対に見つかる!」
いつもは声がでかい、うっとおしい、暑苦しいと逃げてしまうジェシーの言葉に、荒れていた心が少しずつおさまっていく。
「ちょ……、ジェシー兄さま! なにするんですか!」
ジェシーは素早く屈みこむと、片手で俺を抱き上げた。
この年になって人前で兄貴に抱っこされるなんて恥ずかしすぎる。
だがジェシーは暴れる俺を子猫のように扱い、もう片方の手でユーリの髪の毛をかき混ぜるように撫でた。
「おい、やめろクソ従兄弟!」
ユーリも必死にジェシーの手を振り払おうとするが、体格の差がありすぎて意味がない。
「大丈夫だ、アシュリーはすぐ帰ってくる。なんてったって俺の弟だからな!」
誰もが不安で絶望している中で、ジェシーはいつもの大声で叫ぶ。
なんの根拠もないはずの一言に、なぜかその場の空気が少しずつほぐれていくのがわかった。
「皆さん、俺がルイスを休ませてきます。きみたちももう休んだほうがいい。アシュリーが戻って来たときに、俺たちの誰かが倒たりしていたら、弟はきっと自分を責める。弟のためにもしっかり食べて、寝て、元気でいよう!」
ジェシーの明るく力強い声に俺たちはしっかりと頷いた。
「ジェシー兄さま、お願いですからもう降ろしてください! 僕、自分で歩けます!」
辿り着いた部屋で、俺は5回目になるお願いを口にする。
「わかったわかった! そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
ジェシーはやっと俺を降ろしてくれた。
ほっと息を吐くと、今度は腕を強く引っ張られる。
「兄さま!?」
瞬く間にバスルームへと連行され、小さな子どものようにあっという間に衣類をはぎ取られて体を洗われ、大きなバスタブへと放り込まれた。
同時にザブンとものすごい水音とともに、ジェシーもバスタブに入ってくる。
「ヴァイオレット家の別荘は初めて来たが、風呂が大きくていいな! 大浴場だけじゃなくて、各部屋にもついてるんだろう? さすがだな!」
広いバスルームにぐわんぐわんとジェシーの大声が反響する。
「……そうですね」
小さな声で返事をすると、ぐいと引き寄せられた。
当たり前だけれど、その仕草にいやらしさは一切ない。
きっとこれがアシュリーだったら、俺は恥ずかしさで気絶していただろう。
ジェシーも静かになり、俺たちはしばし温かい湯舟でぼんやりと過ごす。
しばらくすると、ジェシーが俺の顔を覗き込んで笑った。
「お。だいぶあったまってきたみたいだな。顔色もよくなってる。もう少ししたら上がるぞ!」
「は、はい。でも兄さま、どうして急にお風呂に……」
「おまえが真っ青な顔で冷たくなっていたからな。騎士団長がよく仰るんだが、人間、冷えると体がこわばって心もネガティブになるらしい。どうだ、少しは気持ちも落ち着いたんじゃないか?」
たしかに、さっきまでの望的な気分はいつのまにか消えていた。
「うん。だいぶ温もったな!」
ジェシーは大きな両手で俺の頬を挟むように触れると二ッと笑って、入ったときと同じように勢いよくバスタブから出た。
「のぼせる前に上がろう!」
振り向いて、俺に片手を伸ばしてくる。
全裸なのに少しもいやらしくないのはm人間離れするほど鍛え上げられた肉体のせいだろうか。その手を握ると、強い力で引っ張り上げられた。
「脱衣所まで抱っこしてやろうか?」
「だ、大丈夫です! 自分で歩けますっ!」
冗談じゃない。慌てて叫ぶと、ジェシーは豪快に笑った。
両親も仕事が終わり次第、こちらへ向かうと報せもあった。
それを聞いて少しだけ安心したが、俺たち子どもは当然、捜索には加わらせてもらえない。
何かあればすぐに連絡するからと言われても不安で、皆でなんとなくダイニングに集まっていた。
だが二日目の今日も、アシュリーに関するなんの情報もなく日が暮れてしまった。
「ルイス、今日はもう休んだほうがいい」
レイが声をかけてくる。隣ではアーノルドも心配そうにこっちをじっと見ていた。
「……レイの言うとおりだ。休養を取らないとおまえまで倒れてしまうぞ」
ユーリが静かな声で言う。
さすがのユーリも、この状況ではいつものように煽ったりしてくることはない。
だが、それが逆にことの重大さを示しているような気がして、胸が重苦しくなる。
休んだほうがいいことなんて、俺が一番よくわかっているのだ。
でも今もどこかでアシュリーが1人つらい思いをしているのかと思うと、何もできない自分に苛立ち、叫び出したくなる。
こんな状況で休めるはずがない。
だが、そんなのはただの八つ当たりでしかないこともわかっている。
レイもアーノルドもユーリも、俺のことを心から案じてくれているだけなのだ。
(それなのに、俺ときたら……)
自分の情けなさに涙が零れそうになり、下唇を噛んで俯く。
その途端、ポンと頭に大きな手が置かれる。
勢いよく顔を上げると、ジェシーが笑っていた。
「ルイス、なんて顔してるんだ。大丈夫だぞ、アシュリーは絶対に見つかる!」
いつもは声がでかい、うっとおしい、暑苦しいと逃げてしまうジェシーの言葉に、荒れていた心が少しずつおさまっていく。
「ちょ……、ジェシー兄さま! なにするんですか!」
ジェシーは素早く屈みこむと、片手で俺を抱き上げた。
この年になって人前で兄貴に抱っこされるなんて恥ずかしすぎる。
だがジェシーは暴れる俺を子猫のように扱い、もう片方の手でユーリの髪の毛をかき混ぜるように撫でた。
「おい、やめろクソ従兄弟!」
ユーリも必死にジェシーの手を振り払おうとするが、体格の差がありすぎて意味がない。
「大丈夫だ、アシュリーはすぐ帰ってくる。なんてったって俺の弟だからな!」
誰もが不安で絶望している中で、ジェシーはいつもの大声で叫ぶ。
なんの根拠もないはずの一言に、なぜかその場の空気が少しずつほぐれていくのがわかった。
「皆さん、俺がルイスを休ませてきます。きみたちももう休んだほうがいい。アシュリーが戻って来たときに、俺たちの誰かが倒たりしていたら、弟はきっと自分を責める。弟のためにもしっかり食べて、寝て、元気でいよう!」
ジェシーの明るく力強い声に俺たちはしっかりと頷いた。
「ジェシー兄さま、お願いですからもう降ろしてください! 僕、自分で歩けます!」
辿り着いた部屋で、俺は5回目になるお願いを口にする。
「わかったわかった! そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
ジェシーはやっと俺を降ろしてくれた。
ほっと息を吐くと、今度は腕を強く引っ張られる。
「兄さま!?」
瞬く間にバスルームへと連行され、小さな子どものようにあっという間に衣類をはぎ取られて体を洗われ、大きなバスタブへと放り込まれた。
同時にザブンとものすごい水音とともに、ジェシーもバスタブに入ってくる。
「ヴァイオレット家の別荘は初めて来たが、風呂が大きくていいな! 大浴場だけじゃなくて、各部屋にもついてるんだろう? さすがだな!」
広いバスルームにぐわんぐわんとジェシーの大声が反響する。
「……そうですね」
小さな声で返事をすると、ぐいと引き寄せられた。
当たり前だけれど、その仕草にいやらしさは一切ない。
きっとこれがアシュリーだったら、俺は恥ずかしさで気絶していただろう。
ジェシーも静かになり、俺たちはしばし温かい湯舟でぼんやりと過ごす。
しばらくすると、ジェシーが俺の顔を覗き込んで笑った。
「お。だいぶあったまってきたみたいだな。顔色もよくなってる。もう少ししたら上がるぞ!」
「は、はい。でも兄さま、どうして急にお風呂に……」
「おまえが真っ青な顔で冷たくなっていたからな。騎士団長がよく仰るんだが、人間、冷えると体がこわばって心もネガティブになるらしい。どうだ、少しは気持ちも落ち着いたんじゃないか?」
たしかに、さっきまでの望的な気分はいつのまにか消えていた。
「うん。だいぶ温もったな!」
ジェシーは大きな両手で俺の頬を挟むように触れると二ッと笑って、入ったときと同じように勢いよくバスタブから出た。
「のぼせる前に上がろう!」
振り向いて、俺に片手を伸ばしてくる。
全裸なのに少しもいやらしくないのはm人間離れするほど鍛え上げられた肉体のせいだろうか。その手を握ると、強い力で引っ張り上げられた。
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