BLゲームのメンヘラ悪役令息に転生したら腹黒ドS王子に激重感情を向けられています

松原硝子

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第二部 1章

プロローグ

前世で熱中していた十八禁のBLゲーム『アルティメットラバー』の世界に転生してしまったと気づいてから、もう数年が経過した。
メンヘラ悪役令息の俺——ユージン・ジェニングスに用意された破滅ルートを回避して生きていくうちに、俺は気がついたら婚約者かつ攻略対象であるクレーニュ王国の王子、ジェラルド・クレーニュに本気で恋してしまったのである。

さらに本来の主人公のウォルター・シャーリーや、ジェラルド以外の攻略対象である隣国フルールのジュリアン王子やアウスブルク帝国のルートヴィヒにも好意(?)を寄せられるというカオスな状況になったりもした。
さまざまなトラブルに巻き込まれたり、すれ違ったりしまくった挙句、
俺とジェラルドはようやくお互いの気持ちを確かめ合い、晴れて両想いになったのだ。

これがゲームであったなら、攻略対象と両想いでハッピーエンドを迎える。
だが、俺にとってこの世界は今や現実だ。ユージン・ジェニングスの人生はこれからも続いていくのである。

「ふあ……そろそろ寝るか」

寮の私室。ベッドライト以外の照明を落とし、横になったそのとき。
窓の近くの床が青白く光りはじめる。俺は素早く上体を起こす。
(まさか、誰か忍び込んできたのか!?)
瞬間、魔法陣が軌道する音がかすかに聞こえた気がした。
そこから姿を現したのは、数週間前に学院を卒業したばかりの俺の婚約者だった。

「ジェラルド⁉ ど、どうしてここに⁉」
「サプライズは成功ってことでいいな?」

驚きで叫ぶと、ジェラルドは勝ち誇ったような微笑みを浮かべてベッドのすぐ脇まで歩いてくる。

「……いつのまに繋げたんですか、この魔法陣」
「内緒だ。だがユージンの部屋と俺の部屋が繋がっているなんて、最高だろう? エディやウォルターには言うなよ。大騒ぎして文句を言ってきそうだからな」

ジェラルドは言いながら遮音結界を強化する。

「言っておくが、今夜だけで終わらせる気はない。これからはできるだけ会いに来るつもりだ」
「そんなの……勝手すぎますよ」

あきれ顔で呟くと、ジェラルドは目を細めて甘ったるい声を出した。

「ユージンのことが好きで、独占したくてたまらない。魔法でも止める術がないくらい、俺はおまえに夢中なんだよ」

そう言うと俺の手首をぐいっと掴み、ベッドに押し倒す。すぐにベッドサイドの灯りがふっと消え、あたりは薄闇に包まれる。
真上から見下ろすジェラルドのアクアマリンの瞳は闇の中で肉食獣のように爛々と光っていた。

「ジェ、ジェラルド様?」

ジェラルドは俺のよびかけには何も答えず、ゆっくりと顔を近づけてくる。
唇や頬に息がかかるくらいに近づかれると、ぞわりと鳥肌が立つ。俺はもう一度だけ名前を呼んだ。

「ジェラルド……様、あ、あの。ちょっと……目が……怖い、です……」

ジェラルドはくすりと笑いながら右手を俺の手首から放すと、頬に指を這わせる。

「こんなにもおまえのことが欲しいのに、卒業してから一緒にいる時間が減ったからかもしれない」
視線を逸らそうとすると、すぐに顎を掴まれ、なかば無理矢理に視線を合わせられる。

「逃げたいか? 俺から」

答えるより先に、甘い囁きが耳孔に流し込まれる。

「逃げないよな? ユージンも俺のことが欲しいって目をしてる」
「そんなこと、ありません……っ」
「無自覚なのか。では確かめてみようか」
「な、なにを言って……ん……っ」

言いかけた言葉はジェラルドの口内に吸い込まれる。唇は何度も何度も、触れては離れていく。

「っ、ジェラルド様……もう……っ」
「だめだ。まだ全然足りない」
「や、ちょっ……ま、んう」

再び重なる唇。角度を変え、深さを変え、まるで口内を味わうかのように、何度となく舌を絡めてくる、

「ジェ、ラルド……さっ、ん、ぅ……も、無理……」

ギラギラと光る目が、熱っぽく俺を見下ろす。くちび

「ユージは俺のものだ……逃がさない。誰にも渡さない……おまえは俺だけのものなんだよ……好きだ、ユージン。愛してる」

再び始まったキスと同時に、ジェラルドはうわごとのように同じ言葉を繰り返す。
息を吸う間もなく唇を塞がれているうちに、俺の脳内からも理性が少ずつ剥がれていくような気がする。

「……や、はげし……っ」
「激しくしてるんだよ。俺が隣にいない時間も自分が誰のものか、一瞬たりとも忘れることのないように、身体に覚えさせてやらないとな」

唇が腫れるほどキスされた後、くったりと脱力した俺の姿にジェラルドは満足そうな笑みを浮かべた。

「さあ、次は……首筋にも胸元にも、おまえの中にも……全部に俺のものだと刻んでくぞ」

(こんなの……無理だ。逃げられるわけがないし……逃げたくない)
魔法よりも強力な愛の呪縛を全身に受けて、俺は目を閉じた。

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