ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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遠い昔に思いを馳せて

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今から約千年前の、時の権力者は言った。


「超暇。」


それを聞いた歌人は言った。


「札遊びとかど~ッスか。何なら俺、新しいヤツ作っちゃいますよ。」

「んじゃヨロ~。あ、超急いで。札?作り、マジ速ね。」

「俺、マジ天才なんで、まぁ、すぐ閃いちゃう系?だし?軽く百くらいいけちゃう系?」

「うぇ~い、超期待系~。一週間あれば余裕?みたいな?」

「イェア~余裕余裕?」



そんな会話が成され、歌人は創作を開始したが、悲しいかな、彼は天才でも閃いちゃう系でもなく、ただの調子良い系だった。


勿論一週間で百歌など出来る訳もなく、二十でギブだ。



なんとか体裁を保つべく、残りの歌にも着手してみたが、悲しいかな、触り程度のふわっとしたヤツが、八十生まれた。


「超ウケるわ~。」

そう言った権力者の目は少しも笑っておらず


「流されちゃいなYO~」


哀れ調子良い系男子は、島的な場所へ――


これが後に、中途半端の代名詞、中途半端歌人と呼ばれる男、古田である。




そんな感じに、歴史に刻まれる出来事は創られるのだ(多分)


因みに札遊びとは、詠んだ歌の続きの歌を当て、それが書かれている札を取った人が勝ちという遊びだ。




「「今日授業で作るのは『君が為、遠くに見える早梅の――』『青時雨、君と寄り添い――』『早馬の体躯に光る――』の三つの歌の続きです。二つの歌は、当時彼が想いを寄せていた女性を歌ったとされています。」


好きな人を想って作ったのに、中途半端になるってどういうことだ。

そこは好きな気持ちが溢れてこないと駄目だろ。


好きな人を想って作ったヤツは、取り敢えず最後まで作ろうよ。

好かれてる筈なのに中途半端とか、相手が微妙な気持ちになると思う。


まぁ、それがミスター中途半端。古田クオリティと言われてしまえば仕方無いが。


約束を違えた古田に、腹を立てた権力者は、完成した歌を無かったことにし、中途半端な歌だけを発表した。アイツ、中途半端にしか歌作れなくなったんだぜ――という烙印を押し、世間から落ちぶれ歌人と蔑ませる為――と歴史研究家は言ってるが、果たしてそれは真実だろうか。


もしも古田が想いを寄せているのが権力者で、権力者もそれを知っていて、自分を想い作る歌を楽しみにしていたとしたら?



揺れるたっぷりの脂肪、額に張り付く薄毛。滴り落ちる汗と、零れ落ちる交わし合った唾液。何かを守るように密集する胸毛、どこまでも硬い筋肉。奏でる力強い音は束の間。駆ける馬のごときあっという間の終演。


幾度も秘め事を繰り返し、濃密に彩られていく想いは、言の葉を幾ら紡いでも足りない――筈だった。



ファンタジーではなくリアリティーを求めたら、なんだか苦すっぱいものになった。




「皆さんも、好きな人を想いながら作れば、素敵な歌が出来るかもしれませんね。それでは始めてください。」

「「「「「はい」」」」」



完成した歌は長い年月の中で紛失し、中途半端な歌だけが残され、古田がちゃんと歌を詠める歌人だという事実は人々の記憶の彼方で、後世古田は、中途半端歌人として世に定着した。


そんな古田の詠んだ中途半端な歌の数々に、近年、続きを詠んでカードにしようという動きがあり、最も優秀な作品を続きにしようとなった。


そして授業に取り入れられましたとさ。






「なんか変なことを考えてる気配を感じたのは気のせいですか。」

「権力者が何故、古田に、あそこまでの仕打ちをしたかについて考えてた。」

「まともなことを考えていた、だと…?」

「三原君。私は何時だって、まともなことしか考えてないよ。」

「……」


何故黙る。




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