59 / 162
遠い昔に思いを馳せて
しおりを挟む今から約千年前の、時の権力者は言った。
「超暇。」
それを聞いた歌人は言った。
「札遊びとかど~ッスか。何なら俺、新しいヤツ作っちゃいますよ。」
「んじゃヨロ~。あ、超急いで。札?作り、マジ速ね。」
「俺、マジ天才なんで、まぁ、すぐ閃いちゃう系?だし?軽く百くらいいけちゃう系?」
「うぇ~い、超期待系~。一週間あれば余裕?みたいな?」
「イェア~余裕余裕?」
そんな会話が成され、歌人は創作を開始したが、悲しいかな、彼は天才でも閃いちゃう系でもなく、ただの調子良い系だった。
勿論一週間で百歌など出来る訳もなく、二十でギブだ。
なんとか体裁を保つべく、残りの歌にも着手してみたが、悲しいかな、触り程度のふわっとしたヤツが、八十生まれた。
「超ウケるわ~。」
そう言った権力者の目は少しも笑っておらず
「流されちゃいなYO~」
哀れ調子良い系男子は、島的な場所へ――
これが後に、中途半端の代名詞、中途半端歌人と呼ばれる男、古田である。
そんな感じに、歴史に刻まれる出来事は創られるのだ(多分)
因みに札遊びとは、詠んだ歌の続きの歌を当て、それが書かれている札を取った人が勝ちという遊びだ。
「「今日授業で作るのは『君が為、遠くに見える早梅の――』『青時雨、君と寄り添い――』『早馬の体躯に光る――』の三つの歌の続きです。二つの歌は、当時彼が想いを寄せていた女性を歌ったとされています。」
好きな人を想って作ったのに、中途半端になるってどういうことだ。
そこは好きな気持ちが溢れてこないと駄目だろ。
好きな人を想って作ったヤツは、取り敢えず最後まで作ろうよ。
好かれてる筈なのに中途半端とか、相手が微妙な気持ちになると思う。
まぁ、それがミスター中途半端。古田クオリティと言われてしまえば仕方無いが。
約束を違えた古田に、腹を立てた権力者は、完成した歌を無かったことにし、中途半端な歌だけを発表した。アイツ、中途半端にしか歌作れなくなったんだぜ――という烙印を押し、世間から落ちぶれ歌人と蔑ませる為――と歴史研究家は言ってるが、果たしてそれは真実だろうか。
もしも古田が想いを寄せているのが権力者で、権力者もそれを知っていて、自分を想い作る歌を楽しみにしていたとしたら?
揺れるたっぷりの脂肪、額に張り付く薄毛。滴り落ちる汗と、零れ落ちる交わし合った唾液。何かを守るように密集する胸毛、どこまでも硬い筋肉。奏でる力強い音は束の間。駆ける馬のごときあっという間の終演。
幾度も秘め事を繰り返し、濃密に彩られていく想いは、言の葉を幾ら紡いでも足りない――筈だった。
ファンタジーではなくリアリティーを求めたら、なんだか苦すっぱいものになった。
「皆さんも、好きな人を想いながら作れば、素敵な歌が出来るかもしれませんね。それでは始めてください。」
「「「「「はい」」」」」
完成した歌は長い年月の中で紛失し、中途半端な歌だけが残され、古田がちゃんと歌を詠める歌人だという事実は人々の記憶の彼方で、後世古田は、中途半端歌人として世に定着した。
そんな古田の詠んだ中途半端な歌の数々に、近年、続きを詠んでカードにしようという動きがあり、最も優秀な作品を続きにしようとなった。
そして授業に取り入れられましたとさ。
「なんか変なことを考えてる気配を感じたのは気のせいですか。」
「権力者が何故、古田に、あそこまでの仕打ちをしたかについて考えてた。」
「まともなことを考えていた、だと…?」
「三原君。私は何時だって、まともなことしか考えてないよ。」
「……」
何故黙る。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界に転生!? だけどお気楽に暮らします。
辰巳 蓮
ファンタジー
「転生して好きに暮らしてください。ただ、不便なところをちょっとだけ、改善していってください」
とゆうことで、多少の便宜を図ってもらった「ナッキート」が転生したのは、剣と魔法の世界でした。
すいません。年表書いてたら分かりにくいところがあったので、ちょっと加えたところがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる