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【2】
しおりを挟む口の中に広がった、濃厚なカカオの苦さを消すため、自分のジェラートを食べる。
レアチーズジェラートにちりばめられた、イチゴ、木苺、赤スグリ、ブルーベリーにブラックベリー。
ベリー尽くしのジェラートの甘酸っぱさが、口の中に広がり苦味を消す。
やはりジェラートは甘くなきゃね。
もう一つのフレーバー、イチゴのティラミスを食べ、ちょっと不満な気持ちになる。
「美味くない?」
「美味しいよ。美味しいんだけど――」
目に見えることだけに惑わされず、奥に隠された真実をきちんと掌握し、その場その場で最善を尽くしたい――と思ったのに、失敗の巻。
なんてことだ。ゴロッとしたイチゴが入ったジェラートと、白い色にちりばめられたベリーの鮮やかさに目を奪われて決めた結果、ベースのジェラートがどっちもレアチーズという残念なことに。
何故あの時、ミルクベースの、胡桃と蜂蜜にしなかったんだろう。何故、ヨーグルトベースにリンゴソースの絡むジェラートを選らばなかったんだろう。何故、何故、間違った選択をしてしまったのか。
新しい店舗がお洒落感満載で、雰囲気に飲まれ、判断を鈍らせたからだろうか。
カップにするかコーンにするか、それが問題だと、フレーバー以外の問題に気を取られたことが判断を鈍らせたのだろうか。
トイレの場所に思いを馳せて、気も漫ろなのが駄目だったのだろうか。
店員さんがイケメンで、商品名を噛まずにサッと言い、ドヤ顔をしようと思ったのが良くなかったのだろうか。
お洒落感満載な店だけに、商品名が長い上に、意味解らない単語の羅列で、名前から何のジェラートかすぐ察することが出来なかったのが敗因だろうか。
“清らかな乙女の初恋より生まれた雫”
“妖艶なる踊り子の魅せる一夜の夢”
どんな味だよ。
そういうオシャレ感は要らないから、ソルトとかライチとか、すぐに味の分かる名前希望。
因みにカカオソルベの正式名は“悪に魅入られし王国騎士の苦悩”だ。
最良の選択をすることが出来なかった敗因は、考えても全く解らなかったが、苦悩とは、物凄く苦い代物ということだけは理解出来た。
ベリー尽くしとイチゴティラミスに加え、バナナミルクを頼んだことが、せめてもの救いである。
「しょっちゅうやるよね。」
「人は過ちを繰り返す生き物。」
「うん、まぁ、そうだけど。」
差し出されたピスタチオを食べる。
「どれ?」
「ん~、ティラミス。」
お返しにあげる。
「ココアスポンジ苦めなのに平気なんだ。」
「全体的には甘いから。」
口の端にちょっとついたジェラートを、舌でチロリと舐める三原君の仕草が、なんだかエロかったです。
「まぁ、そうだね。」
「こっちも食べる?」
「ん。…バナナか。美味いね。」
バナナ美味しいですか、そうですか。
今この瞬間が、お祭りの屋台じゃないのが悔やまれる。
屋台だったら、チョコバナナを、三原君が食べるところを舐めるようにじっくり眺め、違った、微笑ましい気持ちで眺めながら、思いを馳せることが出来たのに。
三原君が、チョコバナナを食べるところを眺めるためなら奢ってもいい。
寧ろ奢りたい。
そして、清らかな眼差しでバナナをあ~んさせたい。
「この後本屋寄って良い?」
「いいよ。早速E・狩場を「買わないから。」
光をふんだんに取り込む為の大きな窓の外に、三原君の髪みたいに綺麗な夕焼け。
「このビルの本屋?」
「隣のビルの本屋に行こうかと。あそこが一番品揃え良いからね。」
「そうだね。」
学校は退屈だけど、放課後の、こういう時間は楽しいから好きだ。
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