ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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口の中に広がった、濃厚なカカオの苦さを消すため、自分のジェラートを食べる。

レアチーズジェラートにちりばめられた、イチゴ、木苺、赤スグリ、ブルーベリーにブラックベリー。

ベリー尽くしのジェラートの甘酸っぱさが、口の中に広がり苦味を消す。


やはりジェラートは甘くなきゃね。



もう一つのフレーバー、イチゴのティラミスを食べ、ちょっと不満な気持ちになる。


「美味くない?」
「美味しいよ。美味しいんだけど――」



目に見えることだけに惑わされず、奥に隠された真実をきちんと掌握し、その場その場で最善を尽くしたい――と思ったのに、失敗の巻。


なんてことだ。ゴロッとしたイチゴが入ったジェラートと、白い色にちりばめられたベリーの鮮やかさに目を奪われて決めた結果、ベースのジェラートがどっちもレアチーズという残念なことに。


何故あの時、ミルクベースの、胡桃と蜂蜜にしなかったんだろう。何故、ヨーグルトベースにリンゴソースの絡むジェラートを選らばなかったんだろう。何故、何故、間違った選択をしてしまったのか。


新しい店舗がお洒落感満載で、雰囲気に飲まれ、判断を鈍らせたからだろうか。


カップにするかコーンにするか、それが問題だと、フレーバー以外の問題に気を取られたことが判断を鈍らせたのだろうか。


トイレの場所に思いを馳せて、気も漫ろなのが駄目だったのだろうか。


店員さんがイケメンで、商品名を噛まずにサッと言い、ドヤ顔をしようと思ったのが良くなかったのだろうか。


お洒落感満載な店だけに、商品名が長い上に、意味解らない単語の羅列で、名前から何のジェラートかすぐ察することが出来なかったのが敗因だろうか。


“清らかな乙女の初恋より生まれた雫”


“妖艶なる踊り子の魅せる一夜の夢”



どんな味だよ。



そういうオシャレ感は要らないから、ソルトとかライチとか、すぐに味の分かる名前希望。



因みにカカオソルベの正式名は“悪に魅入られし王国騎士の苦悩”だ。



最良の選択をすることが出来なかった敗因は、考えても全く解らなかったが、苦悩とは、物凄く苦い代物ということだけは理解出来た。


ベリー尽くしとイチゴティラミスに加え、バナナミルクを頼んだことが、せめてもの救いである。




「しょっちゅうやるよね。」

「人は過ちを繰り返す生き物。」

「うん、まぁ、そうだけど。」


差し出されたピスタチオを食べる。


「どれ?」
「ん~、ティラミス。」


お返しにあげる。


「ココアスポンジ苦めなのに平気なんだ。」

「全体的には甘いから。」


口の端にちょっとついたジェラートを、舌でチロリと舐める三原君の仕草が、なんだかエロかったです。


「まぁ、そうだね。」
「こっちも食べる?」
「ん。…バナナか。美味いね。」

バナナ美味しいですか、そうですか。


今この瞬間が、お祭りの屋台じゃないのが悔やまれる。

屋台だったら、チョコバナナを、三原君が食べるところを舐めるようにじっくり眺め、違った、微笑ましい気持ちで眺めながら、思いを馳せることが出来たのに。


三原君が、チョコバナナを食べるところを眺めるためなら奢ってもいい。

寧ろ奢りたい。

そして、清らかな眼差しでバナナをあ~んさせたい。


「この後本屋寄って良い?」

「いいよ。早速E・狩場を「買わないから。」






光をふんだんに取り込む為の大きな窓の外に、三原君の髪みたいに綺麗な夕焼け。


「このビルの本屋?」

「隣のビルの本屋に行こうかと。あそこが一番品揃え良いからね。」

「そうだね。」





学校は退屈だけど、放課後の、こういう時間は楽しいから好きだ。
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