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やっていたことがバレたかに思われたが、訳の分からないことを言われて終わったことに、少しだけホッとした麻美子であった。


(好きなら当たり前のことだけど、自分がどれだけ好いてるかなんて、知られるのはやっぱり少し恥ずかしいもの)


麻美子がしていたこと──それは繁明に内緒で繁明の部屋に隠しカメラを設置していたことだった。

録画された繁明の、一人きりの時に見せる表情や、恐らく小鈴を思いながらアレを弄っている表情を、麻美子は恍惚とした顔で眺め、我慢出来なくなった時は──ほぼ我慢出来ないのだが──自分も独りの行為に耽った。


(ああ、早く繁明さんを手に入れて、そして・・・・・・)


麻美子が──というよりも、命令されるまでもなく、麻美子の意を汲み行動する親衛隊が、実は繁明に隠れてしていたことがある。

繁明を含めた小鈴の逆ハーメンバーが、小鈴とセックスしそうになった場合、阻止していた。なので小鈴と彼らの間に肉体的な繋りはない。

あらゆる事柄を予測し、忠誠を誓った主がどう転んでも利益を得るように、使える駒の手数は、使えるかもしれない駒は、たくさんあった方がいいと思った親衛隊は、もしかしたら使うことになるかもしれないと、小鈴が逆ハー以外とも身体を繋げないように邪魔をしていたため、小鈴はいまだに清い身体を保っている。









麻美子は繁明が好きだ。常日頃から一秒でも早く繁明と生活することを夢見る程に。

麻美子は本当に繁明が大好きだ。一緒に暮らし、繁明のいろいろな顔を見たいと思うほどに。


麻美子は繁明が大好きなのだ。

誰にも渡したくないほどに、誰にも見せたくないほどに。自分以外の存在に、自分の知らない表情を見せたとしたら、相手を殺したくなるほどに、大好きで愛して愛して愛してやまない。



繁明の美しい顔を。顔だけを。


麻美子は、繁明がどんな男だろうと気にしない。誰を好きだろうと気にしない。例え浮気性だったとしても、人としても男としても最低だったとしても、屑でもカスでもどうでもいい。

繁明があの顔でさえあったなら、他はどうでもいい。──それが麻美子だった。


(繁明さんは私が小鈴さんにどうのって言ってたけど、あれはなんだったのかしら?)


ふと繁明が言ってたことを考える。全く意味が分からない。

実は良く分からなくて、麻美子は途中から聞き流していた。



(小鈴さんを私が邪魔に思ってるってこと?)


そう思ったが、そんな訳ないと思い直す。


(邪魔だと感じたら、次の日には一家揃って行方不明。それが当たり前なのに、繁明さんの家では違うのかしら?──繁明さんなりの、場を盛り上げるジョークとか?)





麻美子と繁明はあれから間もなく結婚した。

どうしても麻美子と結婚したくなかった繁明が、散々ごねた挙げ句、結婚式前に小鈴と逃げようとしたハプニングはあったが、あっけなく捕縛され、つつがなく式は執り行われ二人は夫婦になった。


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