蠱毒な少年 -闇に咲く白い花-

こーいち

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其の弐 桃日絆希と篠懸才児のケース

ある探偵の疑問

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「本日未明、閑静かんせいな住宅街で男性の遺体が発見されました。遺体は酷く損傷しており、警察は身元の特定を急いでいます___」

 
 なんとなく付けていたテレビから、不穏ふおんなニュースが流れてくる。また不審死か。最近、この街ではこの手のニュースが相次いでいる。被害者の接点は特になく、死に方も毎回異なるため警察もお手上げ状態のようだ。共通しているのは、犯人の目撃情報がないことと、凶器が発見されないことぐらいか。

 俺はデスクの引き出しからノートを取り出し、事件の大まかな情報を記録する。これは依頼でもなんでもなく、俺の趣味というか、職業病みたいなものだ。ちょっとした情報でもふとした時に役立つ時が意外とある。あらかた書き終えると、ペンを置きポケットから煙草を取り出す。


 俺がこの街で起こる不審死に対して興味を持ったのは、あるがきっかけだった。今が十一月だから、半年ほど前の事だ。

 依頼内容はよくある浮気調査だった。依頼主は女性で、旦那の身辺調査をして欲しいとのことだった。こういう依頼の場合、十中八九旦那は浮気している。女の勘というのは恐ろしいものがある。

 今回もその例に漏れず、旦那は奥さんに隠れて女性と二人で逢っていた。それを奥さんに伝えると、相当ショックを受けているご様子だった。そういう気配は感じていながらも、旦那を信じたいという気持ちもあったのだろう。

 ここまではいい。大体お決まりのパターンだ。ただ、ここから先の展開は俺の予想をはるかに超えていた___。





 奥さんに一旦報告をした数日後、その内容を資料にまとめていると当の奥さんから電話があった。


「主人が亡くなったので、調査はもう大丈夫です。お金は約束通りの金額を振り込んでおきました」


 それを聞いた時、俺は耳を疑った。あまりに急展開過ぎる。というか、、と考えてしまった。ただし、それを調べるのは警察の仕事だ。もしかしたら、うちにも警察が来て事情聴取でもされるかもしれない。面倒な事になったが初めてという訳でもないし、適当に対応しようとその時は考えていた。

 また数日経って、予想取り警官がうちを訪ねてきた。だが、状況はまた大きく変化していた。なんと、今度は依頼主である奥さんが亡くなったのだという。


「犯人の特定は未だに出来ておらず、凶器も見つかっていません。捜査は難航しているのが実情です。ここ最近で、亡くなったご婦人と接点があるのはあなただけです。奥さんのご様子等も含めて話を聞かせて下さい」


 初老の警官からそう切り出された時は、流石に頭を抱えた。ちょうどまとめていた資料を使いながら、俺が知っている限りのことは伝えた。勿論、俺にその日のアリバイがあることも含めて。


「一週間前に亡くなられたご主人の方は、その日に薊潔子あざみきよこという女性と口論になっていました。先程の資料にあった写真の女性の一人と身体的特徴が一致しているように見えますが、いかがですか?」

「確かに、この女性です。若干人相は変わっていますが。つまり、この女性が容疑者ということですか?」

「いえ、薊潔子はその日に殺人未遂で現行犯逮捕されています。ご夫婦が亡くなられたのはその後の事です」

「ほう...。この女性以外の容疑者は?」

「それが…」


 警察の話では、それ以上の目ぼしい情報は出てきていないとの事だった。その後も少し話をしたが、初老の警官は俺からこれ以上の情報が得られないと悟ると、「ご協力感謝します」と言い帰っていった。

 俺は埃をかぶったホワイトボードを持ってくると、自分なりに警察の話をまとめた。まず主人の方は、薊という女性と以前からトラブルになっており(そういえば俺が調査していた時も言い合いになっていたな...)、最終的に女性は主人を殺害しようとしたが、それは成らず女性は現行犯で逮捕された。しかし、その数時間後に主人は遺体となって発見された(場所は隣町か...)。そして、その数日後今度は奥さんの方が自宅で亡くなっているのが発見された、と。

 ホワイトボードに完成した相関図を見て、思う。実に奇妙だ。まあ主人がロクデナシなのに変わりはないが、この因果が渦巻く三者の間にがいる。探偵としての俺の経験と直感がそう告げていた。





 結局その事件の真相は今も明らかになっていないが、これがきっかけだった。その後も空いた時間を使って自分なりにこの"連続不審死事件"について調べては見たが、真相が明らかになるばかりか謎が深まる一方だった。


「さて、今日はもう店じまいとするか」


 この事務所は基本毎日開けてはいるが、客が来ることはめったにない。二~三日に一人来ればましな方だ。今日も結局客は来なかった。我ながらよく食っていけてるなと思う。

 やるせなさを感じながらも、すっかり灰になった煙草を灰皿に押し付け、デスクを片付けている時だった。


 コン、コン


 事務所のドアが小さくノックされる音が部屋に響いた。
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