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祭りの後で

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その日は地元の諏訪神社で祭りがあった。
いろんな屋台が並び、随分と賑やかだった。
お社前では、お宿から来た三獅子が拍子に合わせて舞い、獅子舞が終わると今度は能舞台で倭舞《やまとまい》が行わる。演目は天岩戸、日本神話で有名な話のひとつだ。

「先に帰ってるよ」

俺は一緒に来ていた母と姉と妹にそう言って、家にひとりで帰った。

「ただいま」
「はい、お帰りなさい。お母さん達は?」

祖母に聞かれたので、

「あとから来るよ」

とだけ言って、台所に行った。ずっと下駄を履いていたからか、足裏の感覚がおかしい。床が柔らかく感じる。

まぁ、そのうち治るだろう。

水を飲みつつそう考えていると、ふと背後に何かの気配を感じた。

振り返ってみたが、出入口には誰もいない。廊下も暗い。

何だったんだ?不思議に思いながら、また水を飲み始めたその時。














『死ね』













ドスの効いた声が耳元で聞こえた瞬間、全身が恐怖で粟立った。

とっさに後ろを振り返ると、直ぐ目の前にいたのは――







そこで目が覚めた。

嫌な夢だ。

まだ心臓がバクバクしている。

あぁ、夢で良かった。

でも、あの霊は結局誰だったんだろう?




















蒼白い肌に長い黒髪の隙間から血走った目を覗かせたあの女は…
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