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第10章~Smels Like Teen Spilit~③
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「ねぇ、有間クン。私は、自分の考えとか思っていることを話して他のヒトを説得することが得意じゃないから……。もし、良かったら、両親や周りのヒトに、このことを話す時に協力してもらえないかな?」
「えっ……!?」
と、秀明は、この日、三度目の絶句をしそうになるが、
「それは、まだ話していない転校したいということをご両親に話すときに、一緒に居てくれないか、ということ?」
落ち着いて、亜莉寿に聞き返す。
すると、彼女は、
「うん、有間クンが迷惑じゃなければ、だけど……」
とつぶやく様な声で、返答する。
「迷惑とかではないけど……。あ~、今から言うことは、もし、お説教に聞こえたらゴメン。オレが亜莉寿に協力することは構わないけど、やっぱり、迷惑を掛けるかも知れなかったり、お世話になるご両親には、亜莉寿自身がきっちりと向きあって話した方が良いんじゃないかな?」
自分は、他人に、まして吉野亜莉寿の様な優等生に、意見したり、忠告したりできるほど立派な人間ではないが───。
それでも、自分が決めた進路のことは、自身の口で両親に伝えることが、子供なりの誠意ではないか、と秀明は考えた。
秀明の言葉を聞いた亜莉寿は、
「やっぱり、そうだよね……。ゴメンね、変なことお願いして」
と、うつむきながら謝罪の言葉を口にする。
その様子を見た秀明は、慌ててフォローする。
「いや、謝らんといて!それに、亜莉寿に協力したいって気持ちは、ホンマやから。もし、お父さんやお母さんと話し合って、それでも、説得できなかったり、話し合いが長引く様なら、遠慮なく、オレを呼んでくれて良いから!安請け合いじゃなく、絶対に、その場に行かせてもらうからさ!」
その言葉を聞いた亜莉寿は、
「ありがとう!そう言ってもらえるだけで嬉しいな」
と言い、少し笑顔を取り戻す。
秀明も、つられる様に笑顔になり、自らの想いを伝える。
「うん、せっかく亜莉寿が話してくれたことやし……。今は、不安に思う気持ちもあると思うけど、亜莉寿が思い切って決めた、その想いを応援したいな、って思うから」
彼は同時に、こんなことを考えていた。
自分の様な映画やスポーツの観客、小説やコミックの読者、音楽の聴衆である《受け手》側の人間は、自分がファンになった映画監督や俳優、スポーツ選手、作家、ミュージシャンなどが、より大きな舞台に挑もうとするならば、その挑戦を応援したくなる。
しかも、身近にいて、日頃から、創作物に対する知識や見識の深さに対してリスペクトに近い感情を抱いていた、吉野亜莉寿の挑戦ならば───。
誰よりも応援してあげたくなる───。
その純粋な想いに、偽りは無いつもりなのだが───。
ここまで、亜莉寿の突然の発言に対して、理性的に思考し、会話を行っていた脳内に、ようやく、感情が追いついて来たのか、不意に涙が、こぼれそうになる。
その突如として押し寄せた自らの感情を振り払うかの様に、
「うん、とにかく亜莉寿なら、ご両親と話すのも大丈夫やと思うから。オレのことは、もしもの時のための保険くらいに思ってて……」
秀明は、そう言って、「ゴメン、またちょっと席を外すわ」と言い放って、再び男性用化粧室に向かった。
「えっ……!?」
と、秀明は、この日、三度目の絶句をしそうになるが、
「それは、まだ話していない転校したいということをご両親に話すときに、一緒に居てくれないか、ということ?」
落ち着いて、亜莉寿に聞き返す。
すると、彼女は、
「うん、有間クンが迷惑じゃなければ、だけど……」
とつぶやく様な声で、返答する。
「迷惑とかではないけど……。あ~、今から言うことは、もし、お説教に聞こえたらゴメン。オレが亜莉寿に協力することは構わないけど、やっぱり、迷惑を掛けるかも知れなかったり、お世話になるご両親には、亜莉寿自身がきっちりと向きあって話した方が良いんじゃないかな?」
自分は、他人に、まして吉野亜莉寿の様な優等生に、意見したり、忠告したりできるほど立派な人間ではないが───。
それでも、自分が決めた進路のことは、自身の口で両親に伝えることが、子供なりの誠意ではないか、と秀明は考えた。
秀明の言葉を聞いた亜莉寿は、
「やっぱり、そうだよね……。ゴメンね、変なことお願いして」
と、うつむきながら謝罪の言葉を口にする。
その様子を見た秀明は、慌ててフォローする。
「いや、謝らんといて!それに、亜莉寿に協力したいって気持ちは、ホンマやから。もし、お父さんやお母さんと話し合って、それでも、説得できなかったり、話し合いが長引く様なら、遠慮なく、オレを呼んでくれて良いから!安請け合いじゃなく、絶対に、その場に行かせてもらうからさ!」
その言葉を聞いた亜莉寿は、
「ありがとう!そう言ってもらえるだけで嬉しいな」
と言い、少し笑顔を取り戻す。
秀明も、つられる様に笑顔になり、自らの想いを伝える。
「うん、せっかく亜莉寿が話してくれたことやし……。今は、不安に思う気持ちもあると思うけど、亜莉寿が思い切って決めた、その想いを応援したいな、って思うから」
彼は同時に、こんなことを考えていた。
自分の様な映画やスポーツの観客、小説やコミックの読者、音楽の聴衆である《受け手》側の人間は、自分がファンになった映画監督や俳優、スポーツ選手、作家、ミュージシャンなどが、より大きな舞台に挑もうとするならば、その挑戦を応援したくなる。
しかも、身近にいて、日頃から、創作物に対する知識や見識の深さに対してリスペクトに近い感情を抱いていた、吉野亜莉寿の挑戦ならば───。
誰よりも応援してあげたくなる───。
その純粋な想いに、偽りは無いつもりなのだが───。
ここまで、亜莉寿の突然の発言に対して、理性的に思考し、会話を行っていた脳内に、ようやく、感情が追いついて来たのか、不意に涙が、こぼれそうになる。
その突如として押し寄せた自らの感情を振り払うかの様に、
「うん、とにかく亜莉寿なら、ご両親と話すのも大丈夫やと思うから。オレのことは、もしもの時のための保険くらいに思ってて……」
秀明は、そう言って、「ゴメン、またちょっと席を外すわ」と言い放って、再び男性用化粧室に向かった。
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