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第13章~今夜はトークハード~⑫
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「私の方から、言いたいことは、これだけやけど~。有間クンの方から、何か言っておきたいことはない~?」
自ら伝えたいことは語り終えた、と翼が秀明に話しを振ると、
「う~ん、特にないですけど……。あ、言っておきたいって程のことではないですが、せっかく、吉野さんが、熱く語ってくれたメッセージも、聞いてるヒトの記憶に、彼女の言葉として残らないのは、ちょっと寂しいですね」
秀明は、そんな感想を漏らした。
すると、番組プロデューサーは、こんなことを語り出した。
「まあ、情報の受け手の記憶って、曖昧やからね~。聞く側は、責任も問われないし、仕方ないよ~。情報を発信する側は、それもわかった上で、伝えないとアカンから、そもそも公平じゃないし~」
そこまで言ったあと、
「でも、一度、情報を発信する側、伝える側になったら、辞められへんやろ~?」
と、言葉を続けて、ニヤリと笑みを浮かべた。
「《選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり》ですか?」
秀明が応じると、
「有間クンに、太宰治を読む教養があるとは思わなかったわ~」
と、翼は冗談まじりに軽口をたたきながら、
「ホンマは、《撰ばれてあることの恍惚と不安 二つわれにあり》やけどね~。太宰の『晩年』を読み返してみた方がエエよ~」
と付け加えた。
その言葉を聞いた秀明は、目を丸くして、
「高梨センパイが、文学少女だとは思いませんでした」
と、上級生に対して、遠慮なしの言葉をぶつける。
「有間クン、そういう失礼なところが、自分の首を絞めることを自覚しておいた方がエエよ~」
と、翼は、こめかみと口角を少しだけひきつらせながら応じて、
「さあ、話しは終わったし、放送室に戻ろう~」
と、送別会に戻るよう、うながした。
※
放送室の室内に戻ると、亜莉寿と昭聞が、なにやら熱心に話し込んでいた。
翼と秀明が戻ってきたことを確認すると、すぐに昭聞は、秀明に声を掛ける。
「吉野さんが、カヲル君とシンジ君について、熱く語ってたから、映画やマンガのオススメ作品をお互いに出しあってるところやねん」
続けて、亜莉寿も
「私は、『太陽がいっぱい』と『ベニスに死す』を挙げて、坂野クンは『バナナ・フィッシュ』を薦めてくれたんだ!」
と、二人の会話を解説する。
「なるほど……。じゃあ、次に挙がる作品は、映画なら『インタビュー・ウィズ・バンパイア』、マンガなら『トーマの心臓』あたりなん?」
と、秀明が会話に加わると、二人とも言いたいことが伝わったとばかりに、フッと表情を崩した。
「確かに、『バナナ・フィッシュ』は、良いかもな~。アメリカが舞台やし、主人公のアッシュはリバー・フェニックスがモデルになってるって、ウワサやし。『ギルバート・グレイブ』とか『バスケットボール・ダイアリーズ』を観た『バナナ・フィッシュ』のファンは、ディカプリオ主演で実写化してほしい!って思ってるみたいやけど」
と、秀明が言葉を続けると、
「それは、より興味が湧くね!日本での公開は、まだ先になるみたいだけど、ディカプリオといえば、『太陽と月に背いて』も見逃せないし!」
亜莉寿も、嬉しそうに反応する。
昭聞も続けて、
「『太陽と月に背いて』って、ランボーとヴェルレーヌの話しやったっけ?ホンマ、そういう作品が好きなんやね、吉野さん」
と、微苦笑まじりに語る。
さらに、三人の会話を聞いていた上級生は、
「へ~、ヴェルレーヌを描いた映画があるの~?それは、私も興味あるな~。顔に似合わず、《撰ばれてあるものの恍惚と不安 二つわれにあり》って、ヴェルレーヌの言葉を引用する有間クンには、ぜひ『シネマハウスにようこそ』で紹介してもらいたいわ~」
と、彼らの輪の中に入ってきた。
(顔に似合わず、って……。「文学少女とは思わなかった」って言ったことの仕返しッスか!?)
自ら伝えたいことは語り終えた、と翼が秀明に話しを振ると、
「う~ん、特にないですけど……。あ、言っておきたいって程のことではないですが、せっかく、吉野さんが、熱く語ってくれたメッセージも、聞いてるヒトの記憶に、彼女の言葉として残らないのは、ちょっと寂しいですね」
秀明は、そんな感想を漏らした。
すると、番組プロデューサーは、こんなことを語り出した。
「まあ、情報の受け手の記憶って、曖昧やからね~。聞く側は、責任も問われないし、仕方ないよ~。情報を発信する側は、それもわかった上で、伝えないとアカンから、そもそも公平じゃないし~」
そこまで言ったあと、
「でも、一度、情報を発信する側、伝える側になったら、辞められへんやろ~?」
と、言葉を続けて、ニヤリと笑みを浮かべた。
「《選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり》ですか?」
秀明が応じると、
「有間クンに、太宰治を読む教養があるとは思わなかったわ~」
と、翼は冗談まじりに軽口をたたきながら、
「ホンマは、《撰ばれてあることの恍惚と不安 二つわれにあり》やけどね~。太宰の『晩年』を読み返してみた方がエエよ~」
と付け加えた。
その言葉を聞いた秀明は、目を丸くして、
「高梨センパイが、文学少女だとは思いませんでした」
と、上級生に対して、遠慮なしの言葉をぶつける。
「有間クン、そういう失礼なところが、自分の首を絞めることを自覚しておいた方がエエよ~」
と、翼は、こめかみと口角を少しだけひきつらせながら応じて、
「さあ、話しは終わったし、放送室に戻ろう~」
と、送別会に戻るよう、うながした。
※
放送室の室内に戻ると、亜莉寿と昭聞が、なにやら熱心に話し込んでいた。
翼と秀明が戻ってきたことを確認すると、すぐに昭聞は、秀明に声を掛ける。
「吉野さんが、カヲル君とシンジ君について、熱く語ってたから、映画やマンガのオススメ作品をお互いに出しあってるところやねん」
続けて、亜莉寿も
「私は、『太陽がいっぱい』と『ベニスに死す』を挙げて、坂野クンは『バナナ・フィッシュ』を薦めてくれたんだ!」
と、二人の会話を解説する。
「なるほど……。じゃあ、次に挙がる作品は、映画なら『インタビュー・ウィズ・バンパイア』、マンガなら『トーマの心臓』あたりなん?」
と、秀明が会話に加わると、二人とも言いたいことが伝わったとばかりに、フッと表情を崩した。
「確かに、『バナナ・フィッシュ』は、良いかもな~。アメリカが舞台やし、主人公のアッシュはリバー・フェニックスがモデルになってるって、ウワサやし。『ギルバート・グレイブ』とか『バスケットボール・ダイアリーズ』を観た『バナナ・フィッシュ』のファンは、ディカプリオ主演で実写化してほしい!って思ってるみたいやけど」
と、秀明が言葉を続けると、
「それは、より興味が湧くね!日本での公開は、まだ先になるみたいだけど、ディカプリオといえば、『太陽と月に背いて』も見逃せないし!」
亜莉寿も、嬉しそうに反応する。
昭聞も続けて、
「『太陽と月に背いて』って、ランボーとヴェルレーヌの話しやったっけ?ホンマ、そういう作品が好きなんやね、吉野さん」
と、微苦笑まじりに語る。
さらに、三人の会話を聞いていた上級生は、
「へ~、ヴェルレーヌを描いた映画があるの~?それは、私も興味あるな~。顔に似合わず、《撰ばれてあるものの恍惚と不安 二つわれにあり》って、ヴェルレーヌの言葉を引用する有間クンには、ぜひ『シネマハウスにようこそ』で紹介してもらいたいわ~」
と、彼らの輪の中に入ってきた。
(顔に似合わず、って……。「文学少女とは思わなかった」って言ったことの仕返しッスか!?)
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