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第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑪
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針太朗が、心の中のずっと奥深いところで眠っていたままになっていた記憶を呼び覚ましながら、遠い昔の思い出話しを語り終えると、目の前の女子生徒は、一言では言い表すことができないような、とらえどころのない表情で彼を見つめていた。
「えっと……ボクの話しは、これで終わりなんだけど……」
なんとも言えない複雑な表情で自分を見つめている希衣子に対して、なにか、気に障ることをしてしまったのか、と感じた彼は、おそるおそるたずねる。
「やっぱり、つまらなかったかな? ボクの話し……」
オドオドした様子で、自分を気遣うようにたずねてくる針太朗に対して、少々、ふくれっ面に感じる表情で返答する。
「別に? つまんない訳じゃないよ? ハリモトの小さい頃のこととか、好きなことが良くわかったし……何かモヤモヤした気分ってだけ。でも、中学のときにたい焼き屋の話しをしてたコと違って、ハリモトが、女の子と話すのが苦手な理由がわかった」
「えっ? どこが良くなかった? 話しが一方的で長過ぎた?」
相手のダメ出しに狼狽しながらたずね返す針太朗に対して、希衣子は、不機嫌な表情のまま言い返す。
「そうじゃなくて……アタシと二人きりで会ってんのに、他の女の子の話とかすんなって言ってんの」
「えっ……それは……」
針太朗は、希衣子の言葉に絶句したあと、
(ケイコが昔の話しを聞かせてって言ったから話しただけだし、第一、幼稚園の頃の話だよ?)
と、思わずにはいられなかったが、それを口にすると、さらなる事態の悪化を招くのではないか、という本能的直感が働いた。
「ゴメン……昔のことを思い出したから、調子に乗って、そのまま話しちゃった……面白く、なかったよね?」
殊勝な態度で、彼が謝罪の言葉を口にすると、
「だから、面白くなかった訳じゃないって……そんな風に謝られたら、アタシの方がバカみたいになるし……」
と言ったあと、対面の相手には聞こえない程度の声で、つぶやく。
「それに、アイちゃんって、あのコのことじゃん」
ささやくような一言を発する彼女に対して、その言葉を聞き取ろうと身を乗り出すような仕草をとる針太朗を押し止めるようにしがら、
「はい、この話しは、もうオシマイ! アタシも大人気なかったし、ゴメンね」
と、希衣子は、この話題を打ち切ろうとする。
「あっ……うん」
彼女の態度の変化についていけず、曖昧な返事を返す針太朗に彼女は、「それよりさ~」と話題を変えることを示唆する。
「ハリモトって、小さい頃は、女の子から、『シンちゃん』って呼ばれてたんだ。カワイイ~」
急に少しからかうような口調に変わった希衣子に、戸惑った彼は、幼稚園時代のことを回想しながら、説明する。
「いや……さっきの話しに出てきた言葉遣いが乱暴な一部のヤツ以外は、男の子も女の子も、みんなボクのことを『シンちゃん』って呼んでたよ」
そして、目の前のクラスメートに過去の呼び名について話しながら、針太朗は、先ほどまで語っていた、思い出ばなしの中で起きた落下事故のあと、アイと呼んでいた園児が幼稚園に来なくなってしまったこと、そして、しばらくして、自分自身も両親の仕事の都合で中学生まで過ごすことになる遠方の都市に引っ越しすることになり、彼女とは、それきり会えていないことを思い出した。
そんな彼の淡い思い出を打ち破るように、目の前の女子生徒は、「それならさ~」と、針太朗の園児時代の呼び名の話題に話しを戻す。
「アタシもハリモトのこと、名前で呼んでイイ? シンタローって、ちょっとカッコイイ名前じゃん!」
「カッコイイかはわからないけど、政治家とか作家みたいな名前だな、っていうのは昔から良く言われるよ。ボクもケイコって呼んでるし、名前は好きに呼んでもらってイイよ」
過去の思い出から、ドリンク・バー付きのカフェで行われる会話に引き戻された彼は、十数年前に想いをはせていたことを悟られないように、軽く笑みを浮かべながら応える。
すると、希衣子は嬉しそうに微笑んでたずねてきた。
「じゃあさ、シンタロー。シンタローの幼稚園の頃の話しを聞かせてもらったからさ……アタシの小さい頃からの夢も聞いてもらってイイ?」
「うん。ケイコの小さな頃の夢って、なんなの?」
突然、話しが変わったことを不思議に思いながらも、その話題に乗っておこうと考えた針太朗に対して、彼女は長い髪を人差し指でクルクルと絡め、やや頬を赤らめながら語りだす。
「アタシね、ウニバには、子どもの頃から家族で良く来てたんだけど……夜のナイト・パレードが特に好きなんだよね。それで、いつか、自分が『このヒトだ!』って思うような素敵な男の子と、二人でナイト・パレードを観るのが夢だったんだ」
それは、いつも、同性・異性を問わず、明るく自信にあふれた雰囲気で語りあう彼女にしては、珍しい仕草であり、口調だった。
その北川希衣子らしからぬ言動に、ドキリとしながら、針太朗は応える。
「そっか……そうなんだ。ボクは、ケイコが小さい頃に夢見ていた男の子とは程遠いと思うけど……今日は、一緒にナイト・パレードを観ても良い?」
彼の返答に、希衣子は、はにかみながら、コクリと小さく首を縦に振る。
しかし――――――。
そんな二人の雰囲気をぶち壊すように、針本針太朗のスマートフォンに、
乾貴志
の名前で着信があったのは、その時だった。
「えっと……ボクの話しは、これで終わりなんだけど……」
なんとも言えない複雑な表情で自分を見つめている希衣子に対して、なにか、気に障ることをしてしまったのか、と感じた彼は、おそるおそるたずねる。
「やっぱり、つまらなかったかな? ボクの話し……」
オドオドした様子で、自分を気遣うようにたずねてくる針太朗に対して、少々、ふくれっ面に感じる表情で返答する。
「別に? つまんない訳じゃないよ? ハリモトの小さい頃のこととか、好きなことが良くわかったし……何かモヤモヤした気分ってだけ。でも、中学のときにたい焼き屋の話しをしてたコと違って、ハリモトが、女の子と話すのが苦手な理由がわかった」
「えっ? どこが良くなかった? 話しが一方的で長過ぎた?」
相手のダメ出しに狼狽しながらたずね返す針太朗に対して、希衣子は、不機嫌な表情のまま言い返す。
「そうじゃなくて……アタシと二人きりで会ってんのに、他の女の子の話とかすんなって言ってんの」
「えっ……それは……」
針太朗は、希衣子の言葉に絶句したあと、
(ケイコが昔の話しを聞かせてって言ったから話しただけだし、第一、幼稚園の頃の話だよ?)
と、思わずにはいられなかったが、それを口にすると、さらなる事態の悪化を招くのではないか、という本能的直感が働いた。
「ゴメン……昔のことを思い出したから、調子に乗って、そのまま話しちゃった……面白く、なかったよね?」
殊勝な態度で、彼が謝罪の言葉を口にすると、
「だから、面白くなかった訳じゃないって……そんな風に謝られたら、アタシの方がバカみたいになるし……」
と言ったあと、対面の相手には聞こえない程度の声で、つぶやく。
「それに、アイちゃんって、あのコのことじゃん」
ささやくような一言を発する彼女に対して、その言葉を聞き取ろうと身を乗り出すような仕草をとる針太朗を押し止めるようにしがら、
「はい、この話しは、もうオシマイ! アタシも大人気なかったし、ゴメンね」
と、希衣子は、この話題を打ち切ろうとする。
「あっ……うん」
彼女の態度の変化についていけず、曖昧な返事を返す針太朗に彼女は、「それよりさ~」と話題を変えることを示唆する。
「ハリモトって、小さい頃は、女の子から、『シンちゃん』って呼ばれてたんだ。カワイイ~」
急に少しからかうような口調に変わった希衣子に、戸惑った彼は、幼稚園時代のことを回想しながら、説明する。
「いや……さっきの話しに出てきた言葉遣いが乱暴な一部のヤツ以外は、男の子も女の子も、みんなボクのことを『シンちゃん』って呼んでたよ」
そして、目の前のクラスメートに過去の呼び名について話しながら、針太朗は、先ほどまで語っていた、思い出ばなしの中で起きた落下事故のあと、アイと呼んでいた園児が幼稚園に来なくなってしまったこと、そして、しばらくして、自分自身も両親の仕事の都合で中学生まで過ごすことになる遠方の都市に引っ越しすることになり、彼女とは、それきり会えていないことを思い出した。
そんな彼の淡い思い出を打ち破るように、目の前の女子生徒は、「それならさ~」と、針太朗の園児時代の呼び名の話題に話しを戻す。
「アタシもハリモトのこと、名前で呼んでイイ? シンタローって、ちょっとカッコイイ名前じゃん!」
「カッコイイかはわからないけど、政治家とか作家みたいな名前だな、っていうのは昔から良く言われるよ。ボクもケイコって呼んでるし、名前は好きに呼んでもらってイイよ」
過去の思い出から、ドリンク・バー付きのカフェで行われる会話に引き戻された彼は、十数年前に想いをはせていたことを悟られないように、軽く笑みを浮かべながら応える。
すると、希衣子は嬉しそうに微笑んでたずねてきた。
「じゃあさ、シンタロー。シンタローの幼稚園の頃の話しを聞かせてもらったからさ……アタシの小さい頃からの夢も聞いてもらってイイ?」
「うん。ケイコの小さな頃の夢って、なんなの?」
突然、話しが変わったことを不思議に思いながらも、その話題に乗っておこうと考えた針太朗に対して、彼女は長い髪を人差し指でクルクルと絡め、やや頬を赤らめながら語りだす。
「アタシね、ウニバには、子どもの頃から家族で良く来てたんだけど……夜のナイト・パレードが特に好きなんだよね。それで、いつか、自分が『このヒトだ!』って思うような素敵な男の子と、二人でナイト・パレードを観るのが夢だったんだ」
それは、いつも、同性・異性を問わず、明るく自信にあふれた雰囲気で語りあう彼女にしては、珍しい仕草であり、口調だった。
その北川希衣子らしからぬ言動に、ドキリとしながら、針太朗は応える。
「そっか……そうなんだ。ボクは、ケイコが小さい頃に夢見ていた男の子とは程遠いと思うけど……今日は、一緒にナイト・パレードを観ても良い?」
彼の返答に、希衣子は、はにかみながら、コクリと小さく首を縦に振る。
しかし――――――。
そんな二人の雰囲気をぶち壊すように、針本針太朗のスマートフォンに、
乾貴志
の名前で着信があったのは、その時だった。
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