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第3章〜ピンチ・DE・デート〜⑬
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カフェを出て行く針太朗を見送りながら、希衣子は軽くため息をつく。
「あんな風に言われたら、協力するしかないじゃん……」
そう言いながら、スマホを操作し、友人をはじめ数多い知人に対して、メッセージアプリで一斉に情報送信を行う。
彼から依頼されたのは、彼女が遭遇し、質問攻めをしてきた外国人女性の目撃情報を集めることだった。
「これは、友だちや知り合いが多い、ケイコにしか頼めないことなんだ!」
熱を込めたその表情に、思わず彼女がうなずくと、針太朗は続けてこう言った。
「今日は、本当に楽しかった! 今度、ここに来るときは、絶対に二人でナイト・パレードを見よう!」
その時の彼の真剣な眼差しを思い出すと、希衣子は頬が火照り、口元が緩くなってしまうのを止めることができない。
「しょうがないな~、シンタローは……どんだけ、アタシとパレード見たいんだよ……」
そう言いながら、彼女は、もう一度、深い溜め息をつく。
「優しくて勇気がある男の子なんて、好きになるに決まってるじゃん……あと、顔が良くて、お金持ちなら言うこと無いけど……」
駆けるように去って行ったクラスメートのことを想いながら、希衣子は、メッセージの送信直後から次々と届く返信の確認に入った。
◆
カフェを出た針太朗は、すぐにスマホを手にして、クラスメートの男子に折り返しの通話発信を行う。通話の相手は、数秒と経たずに応答した。
「どうしたの針本? 気になることでもある?」
スピーカーを通して、そうたずねてくる乾貴志に、針太朗は返答する。
「なんだか悪い予感がするんだ。今から、ある場所に立ち寄ったあと、学校に行ってみようと思う。それで、ボクが移動している間、乾に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと? 僕にデキることなら、なんでもするよ。どんなこと?」
「ひとつ目は、デジタル画像の編集や加工について詳しいヒトを教えてくれないかな? ボク宛に送られてきた画像にデジタル加工が施されていないか確認したいんだ。もうひとつは、これから北川さんからグループLANEの招待状が届くと思うから、そこに送られてくる外国人の目撃情報をまとめて、あとでボクに伝えてほしい。どう、頼めるかな?」
パークの出口ゲートに向かって、小走りで歩きながら友人にたずねると、通話相手は弾んだ声で返答してきた。
「OK! ひとつ目は簡単。僕と針本のそばに、SFとアニメとデジタル技術に詳しい、うってつけの人物がいるよ。ふたつ目の依頼も、任せてくれ! 情報の収集と整理は、僕たち放送メディア研究部の得意分野だ。どちらの依頼も引き受けよう。針本には、クラスみんなでウニバに行けることになった恩があるからね。ささやかだけど、恩返しをさせてほしい」
貴志は、そう言って、針太朗の頼み事を快諾してくれた。
感謝の言葉を述べる彼に、友人は、
「だけど、針本。危険なことにクビを突っ込むのは、止めておきなよ」
と、クギを刺すのを忘れなかった。
その言葉に、「あぁ、気をつけるよ」と答えて通話を終えると、針太朗は、SFアニメ研究会に所属する、もう一人の友人に連絡を取って依頼を行い、駅で列車を待つ間、保健医の幽子から受け取ったメモを頼りに、市外局番から始まる固定電話の番号をタップした。
◆
ひばりヶ丘学院で養護教諭を務める幽子の姉、安心院妖子が経営する味夢古美術堂は、花見の名所として知られる祝川のほとりに店を構えている。
ウニバーサル・シティ駅からJRの普通電車を乗り継いだ針太朗がこの店に到着すると、時刻は午後五時を回ろうとしていた。
「お邪魔します」
ガラスがはめられた木製の引き戸を開け、店内に入ると、古美術店特有の防カビ剤とともに、白檀の香木のニオイが鼻をつく。
「いらっしゃい。待っていたわ、針本針太朗くん」
「突然、お仕掛けてスミマセン。お仕事の邪魔にならないようにしますので……」
店内に客と思われる存在は見られないものの、客商売を営む相手に気を遣った針太朗が、そう申し出ると、
「あら……お気遣いありがとう。でも、この時間は、人払いをしているから、気にしなくてイイわ」
和服姿の店主は、そう言って妖しく微笑む。
姉妹というだけあって、味夢古美術堂の女性店主は、針太朗が通う学院で保健医を務めている妹の幽子と良く似た容姿をしている。
ただ――――――。
針太朗が頼る校内のアドバイザーとは異なり、目の前の古美術道の店主は、全身から漂う妖艶な雰囲気を隠そうともしていない。
香木の香りも相まって、意識がボヤけそうになるのをこらえながら店内を見渡すと、古めかしい造りの店内には不釣り合いなPCの液晶モニターとともに、壁に掛けられた、
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
と文字が書かれている色紙が目に止まった。
「『ドグラ・マグラ』か……」
色紙を目にした針太朗が、つぶやくように口にすると、彼の言葉に反応した妖子が、興味深そうに、
「あら、若いのに、良く知ってるわね。幽子ちゃんも、なかなか見どころがある男の子を紹介してくれるじゃない」
と言って、妖しく微笑んだ。
「あんな風に言われたら、協力するしかないじゃん……」
そう言いながら、スマホを操作し、友人をはじめ数多い知人に対して、メッセージアプリで一斉に情報送信を行う。
彼から依頼されたのは、彼女が遭遇し、質問攻めをしてきた外国人女性の目撃情報を集めることだった。
「これは、友だちや知り合いが多い、ケイコにしか頼めないことなんだ!」
熱を込めたその表情に、思わず彼女がうなずくと、針太朗は続けてこう言った。
「今日は、本当に楽しかった! 今度、ここに来るときは、絶対に二人でナイト・パレードを見よう!」
その時の彼の真剣な眼差しを思い出すと、希衣子は頬が火照り、口元が緩くなってしまうのを止めることができない。
「しょうがないな~、シンタローは……どんだけ、アタシとパレード見たいんだよ……」
そう言いながら、彼女は、もう一度、深い溜め息をつく。
「優しくて勇気がある男の子なんて、好きになるに決まってるじゃん……あと、顔が良くて、お金持ちなら言うこと無いけど……」
駆けるように去って行ったクラスメートのことを想いながら、希衣子は、メッセージの送信直後から次々と届く返信の確認に入った。
◆
カフェを出た針太朗は、すぐにスマホを手にして、クラスメートの男子に折り返しの通話発信を行う。通話の相手は、数秒と経たずに応答した。
「どうしたの針本? 気になることでもある?」
スピーカーを通して、そうたずねてくる乾貴志に、針太朗は返答する。
「なんだか悪い予感がするんだ。今から、ある場所に立ち寄ったあと、学校に行ってみようと思う。それで、ボクが移動している間、乾に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと? 僕にデキることなら、なんでもするよ。どんなこと?」
「ひとつ目は、デジタル画像の編集や加工について詳しいヒトを教えてくれないかな? ボク宛に送られてきた画像にデジタル加工が施されていないか確認したいんだ。もうひとつは、これから北川さんからグループLANEの招待状が届くと思うから、そこに送られてくる外国人の目撃情報をまとめて、あとでボクに伝えてほしい。どう、頼めるかな?」
パークの出口ゲートに向かって、小走りで歩きながら友人にたずねると、通話相手は弾んだ声で返答してきた。
「OK! ひとつ目は簡単。僕と針本のそばに、SFとアニメとデジタル技術に詳しい、うってつけの人物がいるよ。ふたつ目の依頼も、任せてくれ! 情報の収集と整理は、僕たち放送メディア研究部の得意分野だ。どちらの依頼も引き受けよう。針本には、クラスみんなでウニバに行けることになった恩があるからね。ささやかだけど、恩返しをさせてほしい」
貴志は、そう言って、針太朗の頼み事を快諾してくれた。
感謝の言葉を述べる彼に、友人は、
「だけど、針本。危険なことにクビを突っ込むのは、止めておきなよ」
と、クギを刺すのを忘れなかった。
その言葉に、「あぁ、気をつけるよ」と答えて通話を終えると、針太朗は、SFアニメ研究会に所属する、もう一人の友人に連絡を取って依頼を行い、駅で列車を待つ間、保健医の幽子から受け取ったメモを頼りに、市外局番から始まる固定電話の番号をタップした。
◆
ひばりヶ丘学院で養護教諭を務める幽子の姉、安心院妖子が経営する味夢古美術堂は、花見の名所として知られる祝川のほとりに店を構えている。
ウニバーサル・シティ駅からJRの普通電車を乗り継いだ針太朗がこの店に到着すると、時刻は午後五時を回ろうとしていた。
「お邪魔します」
ガラスがはめられた木製の引き戸を開け、店内に入ると、古美術店特有の防カビ剤とともに、白檀の香木のニオイが鼻をつく。
「いらっしゃい。待っていたわ、針本針太朗くん」
「突然、お仕掛けてスミマセン。お仕事の邪魔にならないようにしますので……」
店内に客と思われる存在は見られないものの、客商売を営む相手に気を遣った針太朗が、そう申し出ると、
「あら……お気遣いありがとう。でも、この時間は、人払いをしているから、気にしなくてイイわ」
和服姿の店主は、そう言って妖しく微笑む。
姉妹というだけあって、味夢古美術堂の女性店主は、針太朗が通う学院で保健医を務めている妹の幽子と良く似た容姿をしている。
ただ――――――。
針太朗が頼る校内のアドバイザーとは異なり、目の前の古美術道の店主は、全身から漂う妖艶な雰囲気を隠そうともしていない。
香木の香りも相まって、意識がボヤけそうになるのをこらえながら店内を見渡すと、古めかしい造りの店内には不釣り合いなPCの液晶モニターとともに、壁に掛けられた、
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
と文字が書かれている色紙が目に止まった。
「『ドグラ・マグラ』か……」
色紙を目にした針太朗が、つぶやくように口にすると、彼の言葉に反応した妖子が、興味深そうに、
「あら、若いのに、良く知ってるわね。幽子ちゃんも、なかなか見どころがある男の子を紹介してくれるじゃない」
と言って、妖しく微笑んだ。
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