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第4章〜悪魔が来たりて口笛を吹く〜⑪
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「どういうこと? 私が、シンちゃんを狙うリリムだと思って、二人きりになることを避けようとしたんじゃないの?」
針太朗の言葉を疑問に思った仁美は、ストレートに質問をぶつける。
すると、彼は、ややバツが悪そうに、そして、少しだけ顔を紅潮させながら、一枚の写真をテーブルに置いた。
「この写真といっしょに、真中さんを信じるな、っていう意味のメモが入った封筒が届いたんだ」
彼が示した写真には、一年生の男子生徒・西高裕貴に微笑みかける真中仁美の姿が写されていた。
「ナニこれ? 私、西高くんと、こんなにそばに近づいて写真を撮ったことなんてないよ!」
珍しく、やや憤慨したように言う仁美の言葉にうなずきながら、針太朗は答える。
「うん、これは別の女子生徒の画像に、真中さんの顔をはめ込んだコラージュ画像らしい。このテの解析に詳しいボクのクラスの辰巳が、そう言ってた」
彼の言葉を受けて、マジマジと写真に視線を向けて細かく観察した仁美は、独り言のようにつぶやいた。
「これって、ホントは、私のクラスの高見さんが写ってた写真かな?」
「さすがだね! 辰巳も、同じことを言ってたよ」
針太朗が、感心したように言うと、彼女は、その賞賛の言葉を意に介するようすもなく質問をぶつける。
「でも、わからないことがあるんだ。この写真を見て、シンちゃんはどうして、私を避けようと思ったの?」
仁美からすれば、当然の疑問をたずねただけだったが、それは、彼にとって、余裕を持ってはぐらかすことが出来ない、どストレートな内容だった。
「そ、それは……」
針太朗は、たどたどしい口調で答えようとする。
「キミが、他の男子と親しそうにしているのを見て、ちょっと面白くなかった、って言うか……」
視線を反らしながら、挙動不審なようすで応じる彼に、キョトンとしながら、仁美は、さらにたたみ掛ける。
「私が、西高くんと仲良くすると、シンちゃんは面白くないの? それって、私と西高くんの仲を誤解して、嫉妬してたってこと?」
メジャーリーグのクローザーを務める投手のような、立て続けのストレート攻めに、針太朗は、だまって「うん」と、首をたてに振るより他に術がない。
そして、ここまで来て、ようやく彼のバツの悪そうな態度の理由に気づいたのか、仁美は、針太朗の表情をもう一度、確認したあと、
「もしかして、それって……」
と、言葉を発したあと、両手を口元にあてて、
「そういうことなの?」
と小声でつぶやき、ニヤける口角を覆う。
ちょうど、そのとき、二人が注文したコーヒーがテーブルに運ばれてきた。
「ねぇねぇ、シンちゃん! そのお話し、もう少し詳しく聞かせて? シンちゃんは、どうして、私が、他の男子と親しそうにしているのを見ると、面白くないって思うのかな? コーヒーを飲みながら、じっくり聞かせてくれない?」
屋上でのトラブル以降、明るい表情を見せることが少なくなった彼女は、一転して、こみ上げる嬉しさを抑えきれないようすで、針太朗への問いを続ける。
「そ、それは、もう勘弁してよ……今日の本題は、演劇部の『わたしの貴公子さま』についての話し合いなんだから……」
苦し紛れに針太朗が返答すると、
「え~、私は、シンちゃんが本当に考えてることを知りたいだけなんだけどな~」
と、仁美は、可愛らしく駄々をこねるように言う。
しかし、肘をついた右腕に頭を乗せ、すっかり、やり込められてしまったという針太朗のようすを確認した彼女は、
「シンちゃん、カワイイ……」
と、つぶやいたあと、
「じゃあ、私が出す条件を受け入れてくれたら、このことについては、これ以上、聞かないであげる」
と、提案してきた。
「えっ!? 条件って、それは、どんなこと?」
針太朗がたずね返すと、仁美は、テーブルに置かれた写真の表情よりも朗らかな笑顔で、自身の考える条件を提示する。
「ねぇ、シンちゃん。私のことは、あの頃みたいに『アイちゃん』って呼んでよ。真中さん、なんてナンだか他人行儀じゃない?」
覚悟していたよりも、ずいぶんとハードルが低い条件に、内心で安堵した針太朗は、
「まあ、それぐらいのことなら……わかったよ、アイちゃん」
と、アッサリと条件をのんだ。
自身の提示した条件が受け入れられたことに満足した仁美は、満面の笑みで答える。
「うん! これからもヨロシクね、シンちゃん!」
彼女の表情に気持ちが和んだ針太朗は、彼女の呼びかけにうなずいたあと、思い切って、これまで疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところで、名前は仁美なのに、どうして、アイちゃんって呼ばれてるの?」
「それはね……名前を決めるときに、お母さんは、目の瞳の漢字を使いたかったんだって。でも、それじゃ、私が生まれる前に活動していた女優さんと同姓同名になっちゃうって反対されて、仁と美の漢字になったんだ。ただ、お母さんは、瞳の字を諦めたくなくて、いまでも、瞳 = アイちゃんって呼ぶんだ」
彼女は、ニックネームの由来を嬉しそうに語る。
そのようすを見ながら、針太朗は、真中家の仲睦まじさを感じ取り、微笑ましく感じるのだった。
針太朗の言葉を疑問に思った仁美は、ストレートに質問をぶつける。
すると、彼は、ややバツが悪そうに、そして、少しだけ顔を紅潮させながら、一枚の写真をテーブルに置いた。
「この写真といっしょに、真中さんを信じるな、っていう意味のメモが入った封筒が届いたんだ」
彼が示した写真には、一年生の男子生徒・西高裕貴に微笑みかける真中仁美の姿が写されていた。
「ナニこれ? 私、西高くんと、こんなにそばに近づいて写真を撮ったことなんてないよ!」
珍しく、やや憤慨したように言う仁美の言葉にうなずきながら、針太朗は答える。
「うん、これは別の女子生徒の画像に、真中さんの顔をはめ込んだコラージュ画像らしい。このテの解析に詳しいボクのクラスの辰巳が、そう言ってた」
彼の言葉を受けて、マジマジと写真に視線を向けて細かく観察した仁美は、独り言のようにつぶやいた。
「これって、ホントは、私のクラスの高見さんが写ってた写真かな?」
「さすがだね! 辰巳も、同じことを言ってたよ」
針太朗が、感心したように言うと、彼女は、その賞賛の言葉を意に介するようすもなく質問をぶつける。
「でも、わからないことがあるんだ。この写真を見て、シンちゃんはどうして、私を避けようと思ったの?」
仁美からすれば、当然の疑問をたずねただけだったが、それは、彼にとって、余裕を持ってはぐらかすことが出来ない、どストレートな内容だった。
「そ、それは……」
針太朗は、たどたどしい口調で答えようとする。
「キミが、他の男子と親しそうにしているのを見て、ちょっと面白くなかった、って言うか……」
視線を反らしながら、挙動不審なようすで応じる彼に、キョトンとしながら、仁美は、さらにたたみ掛ける。
「私が、西高くんと仲良くすると、シンちゃんは面白くないの? それって、私と西高くんの仲を誤解して、嫉妬してたってこと?」
メジャーリーグのクローザーを務める投手のような、立て続けのストレート攻めに、針太朗は、だまって「うん」と、首をたてに振るより他に術がない。
そして、ここまで来て、ようやく彼のバツの悪そうな態度の理由に気づいたのか、仁美は、針太朗の表情をもう一度、確認したあと、
「もしかして、それって……」
と、言葉を発したあと、両手を口元にあてて、
「そういうことなの?」
と小声でつぶやき、ニヤける口角を覆う。
ちょうど、そのとき、二人が注文したコーヒーがテーブルに運ばれてきた。
「ねぇねぇ、シンちゃん! そのお話し、もう少し詳しく聞かせて? シンちゃんは、どうして、私が、他の男子と親しそうにしているのを見ると、面白くないって思うのかな? コーヒーを飲みながら、じっくり聞かせてくれない?」
屋上でのトラブル以降、明るい表情を見せることが少なくなった彼女は、一転して、こみ上げる嬉しさを抑えきれないようすで、針太朗への問いを続ける。
「そ、それは、もう勘弁してよ……今日の本題は、演劇部の『わたしの貴公子さま』についての話し合いなんだから……」
苦し紛れに針太朗が返答すると、
「え~、私は、シンちゃんが本当に考えてることを知りたいだけなんだけどな~」
と、仁美は、可愛らしく駄々をこねるように言う。
しかし、肘をついた右腕に頭を乗せ、すっかり、やり込められてしまったという針太朗のようすを確認した彼女は、
「シンちゃん、カワイイ……」
と、つぶやいたあと、
「じゃあ、私が出す条件を受け入れてくれたら、このことについては、これ以上、聞かないであげる」
と、提案してきた。
「えっ!? 条件って、それは、どんなこと?」
針太朗がたずね返すと、仁美は、テーブルに置かれた写真の表情よりも朗らかな笑顔で、自身の考える条件を提示する。
「ねぇ、シンちゃん。私のことは、あの頃みたいに『アイちゃん』って呼んでよ。真中さん、なんてナンだか他人行儀じゃない?」
覚悟していたよりも、ずいぶんとハードルが低い条件に、内心で安堵した針太朗は、
「まあ、それぐらいのことなら……わかったよ、アイちゃん」
と、アッサリと条件をのんだ。
自身の提示した条件が受け入れられたことに満足した仁美は、満面の笑みで答える。
「うん! これからもヨロシクね、シンちゃん!」
彼女の表情に気持ちが和んだ針太朗は、彼女の呼びかけにうなずいたあと、思い切って、これまで疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところで、名前は仁美なのに、どうして、アイちゃんって呼ばれてるの?」
「それはね……名前を決めるときに、お母さんは、目の瞳の漢字を使いたかったんだって。でも、それじゃ、私が生まれる前に活動していた女優さんと同姓同名になっちゃうって反対されて、仁と美の漢字になったんだ。ただ、お母さんは、瞳の字を諦めたくなくて、いまでも、瞳 = アイちゃんって呼ぶんだ」
彼女は、ニックネームの由来を嬉しそうに語る。
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