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第六部
第1楽章〜アレグロ〜⑤
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同日 午前9時すぎ
~白草四葉の想い~
「え~、リッカちゃん来れなくなったんですか?」
「そうなの。こっちの方で、急に出演依頼が入っちゃって。今朝、一番の飛行機で羽田に来てもらうことになったのよ」
「そう、なんですか……リッカちゃんとは、久々に二人きりで会えると思って楽しみにしてたのに……」
夏休みまっただ中の朝、観光地でのモデル撮影の相手が来られなくなった、という突然もたらされた悲しいお知らせにショックを受けるわたしに対して、モデルの仕事や動画配信の案件のお仕事を紹介してくれている通話相手の光石古都乃さんは、申し訳なさそうに謝罪する。
「ゴメンね。四葉ちゃんの気持ちは、良く分かるわ。立花ちゃんも、とても残念がっていたし、彼女は『突然、こんな事になってゴメンナサイ、と四葉ちゃんに伝えておいて下さい』と言っていたわ」
「そんな……リッカちゃんのせいじゃないのに―――わたしからも、彼女に連絡しておこうと思いますけど、こっちに戻ってきたら、すぐにご飯でも食べに行こう、って伝えておいてもらえませんか? お互いの近況報告もしておきたいので……」
わたしが、そう伝言を頼むと、古都乃さんは、「オッケー、わかったわ!」と快諾したあと、
「今日は、立花ちゃんの撮影現場に私も同行するから、直接、本人に伝えておく。今回の埋め合わせは、四葉ちゃんにも立花ちゃんにもキチンとさせてもらうし、予約したペンションの空きが出た一人分は、お友達を誘ってくれて良いからね。なんなら、気になってる男の子でも良いわよ? 今回は、こっちの都合を優先しちゃったからね。そこは、大目に見るわ」
なんて、とんでもないことを言い出す。
「そ、そ、そんな! 男の子をペンションに誘うなんて、そんなこと出来ませんよ!」
焦って返答するわたしに、古都乃さんは、アハハと笑って答える。
「あら、四葉ちゃんにもそういう相手がいると思っていたんだけど……最近じゃ、恋人がいることをオープンにするインフルエンサーも少なくないし、なんなら、ファンの方でも、相手と一緒にカップル推ししようって風潮じゃない? 同世代の女子からの支持が高い四葉ちゃんなら、彼バレなんて、全然イメージダウンにならないわよ」
「いや、そういうことじゃなくて……まだ、ワタシには、そういうのは早いって言うか……」
「あらあら、動画では、恋愛指南や、恋のお悩み相談が得意なのに、意外に奥手なのね? カリスマ女子に彼氏の一人も居ないなんて、四葉ちゃんを推す人たちにとっては、逆にショックなんじゃないの? って、余計なことを言っちゃったわね。こんなこと、いまのご時世で言っちゃいけないのに……いま言ったことは、忘れてね」
古都乃さんは、そう言って取り繕うとするけど、
「カリスマ女子に彼氏の一人も居ないなんて―――」
という一言は、いまのわたしにとって、もっとも、触れられたくないことでもあった。
もちろん、わたし個人としては、見栄や外聞のために恋人を作ろうとすることに賛成できない。
ただ、古都乃さんが言うように、配信する動画で恋愛指南や、恋のお悩み相談を行なっている自分に交際相手が居ないという事実は、視聴者のみんなに申し訳ない、という想いがあったのだ。
(それもこれも、クロが、もう一回わたしに告白してきていれば―――)
小学生の頃からよく知る男子に責任を転嫁しつつも、もし、明日の夜、彼と二人きりになったなら――――――。
(美しい星空が見えるペンションで、男女が二人きり……なにも起きないはずがなく―――)
「シロ、今日のキミは、この星空よりキレイだ……おれは、もう我慢できない」
なんて――――――ちょ……無理無理無理無理無理無理!
やっぱり、そういうことは、まだ早いって……こういうことは、もう少しキッチリと段階を踏んでからでないと……。
そんなことを考えていると、スマートフォンのスピーカーから、古都乃さんの声がする。
「もしもし、四葉ちゃん大丈夫? 私、余計なこと言っちゃった?」
しばらく、別の世界に飛んで行っていた思考をこちらの世界に引き戻すような言葉に、わたしは、返答する。
「は、はい! 大丈夫ですよ。もう、古都乃さんが、おかしなこと言うから……ペンションには、女の子を誘うつもりですから、ご心配なく。相手から返事をもらえたら、すぐに古都乃さんに連絡しますね」
最後は、少し冗談めかした口調で語ると、通話の相手は、少し安心したようだ。
「そっか……それなら良かった。今回は、急なことで本当にゴメンね。今回も、四葉ちゃんの仕事ぶりには期待しているから、しっかりお願い。それじゃ、また何かあったら、連絡してね」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って通話を終えたわたしは、早速、同じ学校に通う下級生の女子に連絡を取ることにした。
(あの娘なら、きっと着いて来てくれるはず……)
そんな、期待を抱きながら、彼女のミンスタグラムにDMを送ろうとしたとき……。
「な、なんなの! コレは!?」
わたしは、思わず声をあげる。
スマートフォンの画面には、モデル仲間で友人の名和立花ちゃんが、明日の撮影に来られなくなった、ということ以上にショッキングな内容の投稿が表示されていた。
~白草四葉の想い~
「え~、リッカちゃん来れなくなったんですか?」
「そうなの。こっちの方で、急に出演依頼が入っちゃって。今朝、一番の飛行機で羽田に来てもらうことになったのよ」
「そう、なんですか……リッカちゃんとは、久々に二人きりで会えると思って楽しみにしてたのに……」
夏休みまっただ中の朝、観光地でのモデル撮影の相手が来られなくなった、という突然もたらされた悲しいお知らせにショックを受けるわたしに対して、モデルの仕事や動画配信の案件のお仕事を紹介してくれている通話相手の光石古都乃さんは、申し訳なさそうに謝罪する。
「ゴメンね。四葉ちゃんの気持ちは、良く分かるわ。立花ちゃんも、とても残念がっていたし、彼女は『突然、こんな事になってゴメンナサイ、と四葉ちゃんに伝えておいて下さい』と言っていたわ」
「そんな……リッカちゃんのせいじゃないのに―――わたしからも、彼女に連絡しておこうと思いますけど、こっちに戻ってきたら、すぐにご飯でも食べに行こう、って伝えておいてもらえませんか? お互いの近況報告もしておきたいので……」
わたしが、そう伝言を頼むと、古都乃さんは、「オッケー、わかったわ!」と快諾したあと、
「今日は、立花ちゃんの撮影現場に私も同行するから、直接、本人に伝えておく。今回の埋め合わせは、四葉ちゃんにも立花ちゃんにもキチンとさせてもらうし、予約したペンションの空きが出た一人分は、お友達を誘ってくれて良いからね。なんなら、気になってる男の子でも良いわよ? 今回は、こっちの都合を優先しちゃったからね。そこは、大目に見るわ」
なんて、とんでもないことを言い出す。
「そ、そ、そんな! 男の子をペンションに誘うなんて、そんなこと出来ませんよ!」
焦って返答するわたしに、古都乃さんは、アハハと笑って答える。
「あら、四葉ちゃんにもそういう相手がいると思っていたんだけど……最近じゃ、恋人がいることをオープンにするインフルエンサーも少なくないし、なんなら、ファンの方でも、相手と一緒にカップル推ししようって風潮じゃない? 同世代の女子からの支持が高い四葉ちゃんなら、彼バレなんて、全然イメージダウンにならないわよ」
「いや、そういうことじゃなくて……まだ、ワタシには、そういうのは早いって言うか……」
「あらあら、動画では、恋愛指南や、恋のお悩み相談が得意なのに、意外に奥手なのね? カリスマ女子に彼氏の一人も居ないなんて、四葉ちゃんを推す人たちにとっては、逆にショックなんじゃないの? って、余計なことを言っちゃったわね。こんなこと、いまのご時世で言っちゃいけないのに……いま言ったことは、忘れてね」
古都乃さんは、そう言って取り繕うとするけど、
「カリスマ女子に彼氏の一人も居ないなんて―――」
という一言は、いまのわたしにとって、もっとも、触れられたくないことでもあった。
もちろん、わたし個人としては、見栄や外聞のために恋人を作ろうとすることに賛成できない。
ただ、古都乃さんが言うように、配信する動画で恋愛指南や、恋のお悩み相談を行なっている自分に交際相手が居ないという事実は、視聴者のみんなに申し訳ない、という想いがあったのだ。
(それもこれも、クロが、もう一回わたしに告白してきていれば―――)
小学生の頃からよく知る男子に責任を転嫁しつつも、もし、明日の夜、彼と二人きりになったなら――――――。
(美しい星空が見えるペンションで、男女が二人きり……なにも起きないはずがなく―――)
「シロ、今日のキミは、この星空よりキレイだ……おれは、もう我慢できない」
なんて――――――ちょ……無理無理無理無理無理無理!
やっぱり、そういうことは、まだ早いって……こういうことは、もう少しキッチリと段階を踏んでからでないと……。
そんなことを考えていると、スマートフォンのスピーカーから、古都乃さんの声がする。
「もしもし、四葉ちゃん大丈夫? 私、余計なこと言っちゃった?」
しばらく、別の世界に飛んで行っていた思考をこちらの世界に引き戻すような言葉に、わたしは、返答する。
「は、はい! 大丈夫ですよ。もう、古都乃さんが、おかしなこと言うから……ペンションには、女の子を誘うつもりですから、ご心配なく。相手から返事をもらえたら、すぐに古都乃さんに連絡しますね」
最後は、少し冗談めかした口調で語ると、通話の相手は、少し安心したようだ。
「そっか……それなら良かった。今回は、急なことで本当にゴメンね。今回も、四葉ちゃんの仕事ぶりには期待しているから、しっかりお願い。それじゃ、また何かあったら、連絡してね」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って通話を終えたわたしは、早速、同じ学校に通う下級生の女子に連絡を取ることにした。
(あの娘なら、きっと着いて来てくれるはず……)
そんな、期待を抱きながら、彼女のミンスタグラムにDMを送ろうとしたとき……。
「な、なんなの! コレは!?」
わたしは、思わず声をあげる。
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