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第二部
第3章〜カワイくてゴメン〜⑯
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「そ、それには、もう少し、近くにいる女子の気持ちに敏感になるべきなだと思いますよ?」
すると、「そっか……」と言って、センパイは、ニコッと笑う。それは、ワタシが、一番好きな表情だ。
そのようすを眺めながらも、ワタシの気持ちになかなか気づいてくれないセンパイに対して、仕返しをしてやりたいという気持ちがわいてくる。
「そう言えば、くろセンパイと放送をしていた時と同じように、去年も山中のお昼の放送で、『こんな告白はイヤだランキング』を発表したんです。この春に二回も告白を実行したセンパイは、ランキングの中身が気になりませんか?」
ワタシの問いかけに、くろセンパイは、
「うっ……それは、気になるが……聞きたいような、聞きたくないような……」
と、苦しそうに声を上げているけど、いつものように、センパイの都合は構わず発表させてもらう。
「山中生が選ぶ、『こんな告白はイヤだランキング』第二位! 『空気も読まず、二人きりになったとたん告白してくる』!」
ワタシが言い終わった途端、「ううっ……」と、うめき声を上げながら、心臓のあたりを右手で押さえて、くろセンパイは、うつむくような体勢に入る。
間髪を与えず、ワタシは発表を続ける。
「山中生が選ぶ、『こんな告白はイヤだランキング』第一位! 『フラッシュモブのように、大掛かりなサプライズ告白を仕掛けてくる』!」
その内容を聞いた瞬間、「ぐはっ……」と、血反吐を吐くような声をあげ、くろセンパイは真横に倒れる。
そして、
「令和◯年五月十三日昼、ぼくは死んだ――――――」
とつぶやいて、省線三ノ宮駅の構内で衰弱死した少年のように、動かなくなってしまった。
その屍のほおをツンツンとつつくと、かすかにセンパイの口元が緩んだ。
コロコロと変化する彼の表情を楽しみつつ、また胸の高鳴りを覚えながら、ワタシは、思い切って口にしてみる。
「も、もし、お礼とかを考えてくれているなら、ひとつ、お願いがあるんですケド……」
「ん? なんだ?」
すぐに起き上がって反応するセンパイに、
(断られたらどうしよう――――――)
と不安になりながら、
「ワタシも、高校生になって、《ミンスタ》を積極的に使っていこうと思ってるので、一緒に写真を撮ってもらえませんか?」
たずねてみると、
「なんだ、そんなことで良いのか? いいぞ、どんな風に撮るんだ?」
彼は、拍子抜けするくらい、あっさりと承諾してくれた。予想外の展開に同時ながらも、この機会を逃すものか――――――と、ワタシは、すぐに提案する。
「じゃあ、同じ広報部としての絆を示すってことで……」
そう言って、目の前のテーブルの上にセンパイの手のひらを置いてもらい、ワタシは、彼の手のひらの上に自分の手を重ねる。
かたわらに置いていた通学カバンから、片手でスマホを取り出し、パシャリ、と一枚目の撮影を終える。
「今度は、少し手のひらを広げてくれませんか?」
リクエストに無言で応じてくれた彼の五本の指のすき間に、ワタシはすかさず、少しだけ位置を移動した四本の指を滑り込ませた。
パシャリ――――――。
二枚目の撮影を終えたワタシは、動揺を悟られないように、できる限りのさわやかな笑顔で、
「ありがとうございます、くろセンパイ! ワタシのアカウント、フォローしてくださいね」
と、お礼の言葉を述べる。ただ、表情を作るのに精一杯だったので、彼の表情や反応を細かくチェックする余裕はなかった。
緊張感から生じる手汗を感じられる前に、くろセンパイの手の上から、サッと手を引いたワタシに対して、
「そ、そうだな……モモカ! モモカのアカウントを教えてくれよ」
彼は、そう言いながら、自分も通学カバンからスマホを取り出す。
そして、くろセンパイは、自身のスマホ画面を確認し、「わっ! 壮馬からLANEが来てる」と、つぶやいたあと、
「えっ!? なんで、紅野と天竹が……」
と、独り言を漏らした。
そして、その瞬間、
「ど、どういうことよ! これは~~~~~!?」
という叫び声が、隣室から聞こえてきた。
すると、「そっか……」と言って、センパイは、ニコッと笑う。それは、ワタシが、一番好きな表情だ。
そのようすを眺めながらも、ワタシの気持ちになかなか気づいてくれないセンパイに対して、仕返しをしてやりたいという気持ちがわいてくる。
「そう言えば、くろセンパイと放送をしていた時と同じように、去年も山中のお昼の放送で、『こんな告白はイヤだランキング』を発表したんです。この春に二回も告白を実行したセンパイは、ランキングの中身が気になりませんか?」
ワタシの問いかけに、くろセンパイは、
「うっ……それは、気になるが……聞きたいような、聞きたくないような……」
と、苦しそうに声を上げているけど、いつものように、センパイの都合は構わず発表させてもらう。
「山中生が選ぶ、『こんな告白はイヤだランキング』第二位! 『空気も読まず、二人きりになったとたん告白してくる』!」
ワタシが言い終わった途端、「ううっ……」と、うめき声を上げながら、心臓のあたりを右手で押さえて、くろセンパイは、うつむくような体勢に入る。
間髪を与えず、ワタシは発表を続ける。
「山中生が選ぶ、『こんな告白はイヤだランキング』第一位! 『フラッシュモブのように、大掛かりなサプライズ告白を仕掛けてくる』!」
その内容を聞いた瞬間、「ぐはっ……」と、血反吐を吐くような声をあげ、くろセンパイは真横に倒れる。
そして、
「令和◯年五月十三日昼、ぼくは死んだ――――――」
とつぶやいて、省線三ノ宮駅の構内で衰弱死した少年のように、動かなくなってしまった。
その屍のほおをツンツンとつつくと、かすかにセンパイの口元が緩んだ。
コロコロと変化する彼の表情を楽しみつつ、また胸の高鳴りを覚えながら、ワタシは、思い切って口にしてみる。
「も、もし、お礼とかを考えてくれているなら、ひとつ、お願いがあるんですケド……」
「ん? なんだ?」
すぐに起き上がって反応するセンパイに、
(断られたらどうしよう――――――)
と不安になりながら、
「ワタシも、高校生になって、《ミンスタ》を積極的に使っていこうと思ってるので、一緒に写真を撮ってもらえませんか?」
たずねてみると、
「なんだ、そんなことで良いのか? いいぞ、どんな風に撮るんだ?」
彼は、拍子抜けするくらい、あっさりと承諾してくれた。予想外の展開に同時ながらも、この機会を逃すものか――――――と、ワタシは、すぐに提案する。
「じゃあ、同じ広報部としての絆を示すってことで……」
そう言って、目の前のテーブルの上にセンパイの手のひらを置いてもらい、ワタシは、彼の手のひらの上に自分の手を重ねる。
かたわらに置いていた通学カバンから、片手でスマホを取り出し、パシャリ、と一枚目の撮影を終える。
「今度は、少し手のひらを広げてくれませんか?」
リクエストに無言で応じてくれた彼の五本の指のすき間に、ワタシはすかさず、少しだけ位置を移動した四本の指を滑り込ませた。
パシャリ――――――。
二枚目の撮影を終えたワタシは、動揺を悟られないように、できる限りのさわやかな笑顔で、
「ありがとうございます、くろセンパイ! ワタシのアカウント、フォローしてくださいね」
と、お礼の言葉を述べる。ただ、表情を作るのに精一杯だったので、彼の表情や反応を細かくチェックする余裕はなかった。
緊張感から生じる手汗を感じられる前に、くろセンパイの手の上から、サッと手を引いたワタシに対して、
「そ、そうだな……モモカ! モモカのアカウントを教えてくれよ」
彼は、そう言いながら、自分も通学カバンからスマホを取り出す。
そして、くろセンパイは、自身のスマホ画面を確認し、「わっ! 壮馬からLANEが来てる」と、つぶやいたあと、
「えっ!? なんで、紅野と天竹が……」
と、独り言を漏らした。
そして、その瞬間、
「ど、どういうことよ! これは~~~~~!?」
という叫び声が、隣室から聞こえてきた。
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