初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第二部

第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑮

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 ※

5月16日(月)

 桃華やシロ、紅野、天竹たちが、オレたちの利用している《編集スタジオ》に集まり、騒がしい放課後となった金曜日から休日をはさみ、週が明けた月曜日のこと――――――。
 オレと壮馬は、シロとともに放送室に向かっていた。
 先週の火曜日に入部を断られた彼女が、なぜ、自分たちと広報部の活動場所に向かっているかといえば……。
 前日の日曜日、シロの広報部入部を断った当の本人である鳳花ほうか部長から、グループLANEで、こんなメッセージが届いていたからだ。

==============

広報部メンバー、一同へ

週末に入部希望の一年生の訪問
がありました。

ついては、体験入部を兼ねて
メンバー紹介を行います。

明日の放課後、放送室に集合
してください。

追記:

黒田くんは、同じクラスの
白草さんを連れてくること

==============

「シロに声がかかった、ということは、また何か新しい企画でもあるのか?」

 部長からのメッセージを思い返しながら、左側を歩く壮馬にたずねると、自分と同じように、この親友も広報部の責任者の意図を伝えられていないらしく、

「さぁ、なんだろう? しばらく、大きな学校行事はないと思うんだけどね」

と、不思議そうに返答する。

「そっか、壮馬にも知らされてないんだな……シロ、スマンな。放課後に付き合ってもらって」

 今度は、オレの右手側を歩くシロにも声をかける。
 広報部の部外者である白草四葉には、貴重な放課後の時間を自分たちの活動に付き合わせて申し訳ない、という気持ちがあるのだが、意外にも彼女は、

「わたしも、どうしてお呼びがかかったのかわからないけど、広報部の活動についてなら、大歓迎だよ!」

などと、笑顔で答えるほど、すこぶる機嫌が良い。
 三日前の金曜日に、桃華と言い争ったあと、

「クッ……覚えていなさいよ……」

と、まるで転生されなかった悪役令嬢のような捨てゼリフを吐いて、オレたちの元を去ったとは思えない上機嫌ぶりである。
 この一ヶ月半ほどの間に、さまざまな経験をしたオレは、さすがに、

(シロは、もしかして、オレと一緒にいられるのが嬉しいのか――――――?)

などと、楽観的な考えを即座に否定するくらいには、オ《・》ト《・》ナ《・》になっていた。
 それでも、自分の隣を歩くクラスメート(十日ほど前に『お友だちでいましょう』といわれたばかりだ)が、ウキウキと、ご機嫌であるようすであることは気になるので、それとなく理由を聞いてみた。

「シロ、今日はやけに楽しそうだが、なにか良いことでもあったのか?」

 そんな、こちらの問いかけに、微笑んだ彼女は、

「ふふ……なんだと思う?」

と、意味深な表情を送ってくる。
 
「いや、わかんないから、聞いてんだけどな……」

 彼女の謎の問いかけを受け流しながら返答すると、

「そうだな~。理由のひとつは、クロが中学生の頃の校内放送を聞かせてもらったこと」

などと、これまた、謎の答えを返してきた。
 それは、おそらく、オレと桃華が山の手中学校時代に行っていた校内放送のことだろう。
 金曜日の夕方、シロが《編集スタジオ》を立ち去ったあと、しばらくしてから、壮馬に、

「竜司、白草さんから、竜司たちが担当していた山中やまちゅう時代の放送音源を聞いてみたい、ってリクエストがあったんだけど、問題ない?」

と、たずねられたことを思い出す。

「あぁ、別にシロが個人的に楽しむだけなら、オレ的には大丈夫だ! モモカはどうだ?」

 まだ、《編集スタジオ》に残っていた桃華にも確認すると、一緒に放送を担当していた後輩は、一瞬、怪訝な表情を見せたが、特に反対する理由もなかったためか、

「まぁ、くろセンパイが良いと言うのであれば……」

と、オレと同じように、アッサリと了承してくれた。
 ただ、それでも、シロが、オレたちの中学生時代の校内放送を聞いて、上機嫌になる理由がわからない。

 最近、気がついたことなのだが――――――。

 シロは、オレが紅野や桃華など、他の女子と親しく話したり、彼女たちのことを話題にすると、機嫌が悪くなることが多い。
 壮馬がシロに提供したと思われる、オレと桃華が担当していた『ももクロ・ミュージック・カウントダウン』の放送は、楽曲をながしている場面以外は、ほぼ全編に渡って、オレたち二人のトークで成立しているため、シロにとっては、面白くないシロモノではないかと考えていたが、どうやら、その心配は杞憂に終わったらしい。
 オレとしては、その番組の放送中、ずっと桃華にイジられっぱなしだった記憶しかないので、あの内容を元に、シロから、

「他の女子とイチャイチャしている!」

などと指摘されたのでは、たまったモンじゃない、と感じていたので、とりあえず彼女の機嫌が損なわれていないだけでも、良しとしたかった。
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