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第三部
第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜②
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「それじゃ、黒田くんからのリクエストもあったことだし、必要なメンバーは全員そろったみたいだから、早速、今回の企画について説明させてもらうわね」
鳳花部長が、そう言って放送室の照明を落とすと、白い壁に映し出されたスライドは、よりくっきりとその存在感を際立たせた。
『第1回芦宮高校PRコンテスト(仮)開催について』
UDデジタル教科書体というユニバーサルデザインに配慮したフォント(学校内でプレゼンを行うときは、資料にこのフォントを使うように言われている)で記された表紙スライドを表示させながら、我らが部長は、いつものように落ち着いた口調で語る。
「紅野さんや天竹さんからも聞いてもらったと思うけど、一年生と二年生の部員のみんなには、芦宮高校の広報活動の一環として、クラブ活動のプロモーション動画を制作してもらおうと思います。さらに、この企画を盛り上げるために、今回は、三つのグループに別れて動画を制作し、その動画でプレゼンテーションを行ったあと、生徒投票で順位を決めようと考えています」
ゆったりとした、聞き取りやすい語り口での解説に、オレをはじめ、聞き手一同はうなずいて、説明を理解していることを示す。
その反応に満足したような表情を浮かべ、部長は、オレたち広報部の面々とシロ、紅野、天竹の顔を見渡しながら説明を続ける。
「コンテストの流れは、以下のとおり。まずは、自分たちに動画の制作を依頼する依頼主をみつけて、その依頼主と制作する動画の方向性を決めるオリエンテーションを行ってもらいます。オリエンテーションは、一年生も学校行事で聞いたことがある言葉かも知れないけど……ビジネスの場面では、複数の会社から発注先を決める集まりに参加を募る場合に、具体的な企画や提案をしてもらう時の条件や方向性、希望、留意点などを伝えるために行う会合のことを言うの」
なんだか、少し小難しい話しになってきたが、一年の新入部員は内容について来ているだろうか?
もちろん、二年のオレは、部長の説明をバッチリ理解しているつもりだが――――――。
あとで、壮馬に内容を確認しておくことにしよう。
「このオリエンテーションによる打ち合わせが終わったあと、みんなは、依頼主の要望を持ち帰って、魅力ある提案を作成して、依頼主にプレゼンテーションを行ってもらいます。提案が競合した場合には、依頼主が、最良の案を選ぶことになるし、提案が競合しなかった場合は、依頼主が、その動画を気に入ってくれれば、お仕事完了。期限は一ヶ月後の6月24日(土)。それまでに、制作した動画を生徒会に出品してね」
ここまでの解説を終えた鳳花部長は、説明を簡潔にまとめたスライドを表示させている。
コンテストのフローについて:
動画制作を依頼する依頼主とのオリエンテーションから始まり、そこで依頼主と協議を行って、その後、広報部は案件を持ち帰って魅力ある提案を作成し、後日、依頼主にプレゼンテーションをします。
提案後、動画を作成して、依頼主からのOKが出たら、生徒会に出品。
1.オリエンテーション(案件説明)
2.プレゼンテーション(具体的提案)
3.最良の提案を選定(仕事依頼)
4.動画を生徒会に出品
5.生徒会主催による投票実施
このスライドを表示させたあと、部長は、注意事項を付け足す。
「スライドには、オリエンテーションについて、(案件説明)と記載しているけど、多くのクラブにとって、広報の依頼をするなんて初めてだと思うから、自分たちの活動をPRするための方向性や具体案なんて持っていないと思うわ。その辺りは、自分たちの方から魅力ある提案を行いつつ、依頼主になるクラブの要望や考えをキッチリと反映したものにしてね」
なるほど――――――。
たしかに、部長の言うとおりだ。
これまで、新入生に対するクラブ紹介などでは、自分たちのクラブの自己PRを行っていたとしても、動画を使った広報活動をしていたクラブは多くないだろう。
それをいきなり、「どんな動画を作りたいですか?」と聞かれても、具体的な案を説明するほうが難しそうだ。
ここは、広報部からいくつかの事例を挙げて、相手の気に入った内容を採用してもらう方が良いだろう。
解説を受けているメンバーの表情を見ると、鳳花部長の説明に、ほぼ異論はないようだ。
ここで、部長の隣に立って、その説明にいちいち、うんうん、とうなずいていた生徒会長にして、吹奏楽部副部長を務める寿先輩が、サッと前に躍り出た。
「はい、ちゅ~も~く! ここ、『5.生徒会主催による投票実施』では、ZOOMか、Google Meetを使って、みんなのプレゼンテーションの生配信を行う予定で~す! 今回も、生徒会役員として、私がバッチリ司会を務めさせてもらうから、みんな、がんばってね~」
相変わらずの気さくなノリと、司会として目立とうとするところは変わらないな~、と思っていると、吹奏楽部の部員として後輩にあたる紅野が、苦笑しながら釘を刺す。
「副部長……生徒会の仕事も大事だと思いますけど、私たち吹奏楽部の活動も、しっかりして下さいね」
「もう~、わかってるって~。相変わらず真面目だにゃ~。ウチの後輩ちゃんは~」
紅野と寿生徒会長のやり取りを微笑ましそうに眺めていた鳳花部長が、もう一度、オレたちの方を見渡しながらたずねる。
「ここまで一方的に説明させてもらったけど……なにか、質問や提案したいことはない?」
すると、部長の言葉を待っていたかのように、スッと手を挙げる女子生徒の姿があった。
鳳花部長が、そう言って放送室の照明を落とすと、白い壁に映し出されたスライドは、よりくっきりとその存在感を際立たせた。
『第1回芦宮高校PRコンテスト(仮)開催について』
UDデジタル教科書体というユニバーサルデザインに配慮したフォント(学校内でプレゼンを行うときは、資料にこのフォントを使うように言われている)で記された表紙スライドを表示させながら、我らが部長は、いつものように落ち着いた口調で語る。
「紅野さんや天竹さんからも聞いてもらったと思うけど、一年生と二年生の部員のみんなには、芦宮高校の広報活動の一環として、クラブ活動のプロモーション動画を制作してもらおうと思います。さらに、この企画を盛り上げるために、今回は、三つのグループに別れて動画を制作し、その動画でプレゼンテーションを行ったあと、生徒投票で順位を決めようと考えています」
ゆったりとした、聞き取りやすい語り口での解説に、オレをはじめ、聞き手一同はうなずいて、説明を理解していることを示す。
その反応に満足したような表情を浮かべ、部長は、オレたち広報部の面々とシロ、紅野、天竹の顔を見渡しながら説明を続ける。
「コンテストの流れは、以下のとおり。まずは、自分たちに動画の制作を依頼する依頼主をみつけて、その依頼主と制作する動画の方向性を決めるオリエンテーションを行ってもらいます。オリエンテーションは、一年生も学校行事で聞いたことがある言葉かも知れないけど……ビジネスの場面では、複数の会社から発注先を決める集まりに参加を募る場合に、具体的な企画や提案をしてもらう時の条件や方向性、希望、留意点などを伝えるために行う会合のことを言うの」
なんだか、少し小難しい話しになってきたが、一年の新入部員は内容について来ているだろうか?
もちろん、二年のオレは、部長の説明をバッチリ理解しているつもりだが――――――。
あとで、壮馬に内容を確認しておくことにしよう。
「このオリエンテーションによる打ち合わせが終わったあと、みんなは、依頼主の要望を持ち帰って、魅力ある提案を作成して、依頼主にプレゼンテーションを行ってもらいます。提案が競合した場合には、依頼主が、最良の案を選ぶことになるし、提案が競合しなかった場合は、依頼主が、その動画を気に入ってくれれば、お仕事完了。期限は一ヶ月後の6月24日(土)。それまでに、制作した動画を生徒会に出品してね」
ここまでの解説を終えた鳳花部長は、説明を簡潔にまとめたスライドを表示させている。
コンテストのフローについて:
動画制作を依頼する依頼主とのオリエンテーションから始まり、そこで依頼主と協議を行って、その後、広報部は案件を持ち帰って魅力ある提案を作成し、後日、依頼主にプレゼンテーションをします。
提案後、動画を作成して、依頼主からのOKが出たら、生徒会に出品。
1.オリエンテーション(案件説明)
2.プレゼンテーション(具体的提案)
3.最良の提案を選定(仕事依頼)
4.動画を生徒会に出品
5.生徒会主催による投票実施
このスライドを表示させたあと、部長は、注意事項を付け足す。
「スライドには、オリエンテーションについて、(案件説明)と記載しているけど、多くのクラブにとって、広報の依頼をするなんて初めてだと思うから、自分たちの活動をPRするための方向性や具体案なんて持っていないと思うわ。その辺りは、自分たちの方から魅力ある提案を行いつつ、依頼主になるクラブの要望や考えをキッチリと反映したものにしてね」
なるほど――――――。
たしかに、部長の言うとおりだ。
これまで、新入生に対するクラブ紹介などでは、自分たちのクラブの自己PRを行っていたとしても、動画を使った広報活動をしていたクラブは多くないだろう。
それをいきなり、「どんな動画を作りたいですか?」と聞かれても、具体的な案を説明するほうが難しそうだ。
ここは、広報部からいくつかの事例を挙げて、相手の気に入った内容を採用してもらう方が良いだろう。
解説を受けているメンバーの表情を見ると、鳳花部長の説明に、ほぼ異論はないようだ。
ここで、部長の隣に立って、その説明にいちいち、うんうん、とうなずいていた生徒会長にして、吹奏楽部副部長を務める寿先輩が、サッと前に躍り出た。
「はい、ちゅ~も~く! ここ、『5.生徒会主催による投票実施』では、ZOOMか、Google Meetを使って、みんなのプレゼンテーションの生配信を行う予定で~す! 今回も、生徒会役員として、私がバッチリ司会を務めさせてもらうから、みんな、がんばってね~」
相変わらずの気さくなノリと、司会として目立とうとするところは変わらないな~、と思っていると、吹奏楽部の部員として後輩にあたる紅野が、苦笑しながら釘を刺す。
「副部長……生徒会の仕事も大事だと思いますけど、私たち吹奏楽部の活動も、しっかりして下さいね」
「もう~、わかってるって~。相変わらず真面目だにゃ~。ウチの後輩ちゃんは~」
紅野と寿生徒会長のやり取りを微笑ましそうに眺めていた鳳花部長が、もう一度、オレたちの方を見渡しながらたずねる。
「ここまで一方的に説明させてもらったけど……なにか、質問や提案したいことはない?」
すると、部長の言葉を待っていたかのように、スッと手を挙げる女子生徒の姿があった。
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