232 / 274
第三部
第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜⑪
しおりを挟む
コーラス部で初めて、前向きな反応をもらったボクたちは、気を良くしながら続く、演劇部と筝曲部への訪問を終えた。
結果から言うと、どちらのクラブでも、コーラス部と同じように好い感触を得ることができたので、明るい気分で図書室に戻る。
それは、文芸部の他の部員さんたちも同じだったようで、活動場所に帰ってきた四人の表情は、前日とは異なり、晴れやかなものだった。
「部長、今日はキチンと、私たちのお話しを聞いてもらえましたよ!」
「美術部と家庭科クラブ、コンピュータークラブからは、取材の許可をもらって来ました!」
一年生の井戸川さんと高瀬さんが、嬉しそうに報告する。
「茶道部・華道部・書道部からも、前向きな返答をもらっているよ」
「黄瀬くん制作の動画が、効果抜群だったみたい」
ボクらと同じ学年の今村さんと、石沢さんも朗らかな表情で、本日の成果を伝えてくれた。
「みんな、成果報告ありがとう! はるか、なつみ、訪問した結果と内容をスプレッドシートにまとめておいてくれない?」
天竹さんが、指示を出すと、
「オッケー!」
「ラジャ!」
石沢さんと今村さんは、快活に応じてタブレット端末を取り出した。
「今日は、前向きなミーティングができそうだね?」
ボクが、天竹部長に声をかけると、彼女も朗らかな表情で、
「それは、みんなの顔色が物語っていますね」
と、嬉しそうに答える。
いつもなら、文芸部は活動を切り上げている時間のようだけど、チーム全体が前向きな気持ちで図書室に戻ってきたため、このまま、取材の方向性を決めるミーティングに入ることにした。
その冒頭で、ボクは、文芸部のメンバーに気になっていたことを聞いてみる。
「最初に確認しておきたいんだけど……実際に、各クラブにインタビューをさせてもらうとして、どんなことを聞き出すか、具体的に決まっているの?」
こんなボクの問いかけには、部長さんが、すぐに答えてくれた。
「はい! 所属するクラブの雰囲気や、部での体験をとおしてのやり甲斐や魅力などを話してもらったうえで、今年の活動の目標や抱負を話してもらおう考えています。もう取材用の資料もできているんですよ」
そう言って、彼女は、スプレッドシートの確認用に起動させていたタブレット端末の画面をこちらに向けて、Googleドキュメントで作成した取材用メモを見せてくれた。
ドキュメントのファイルに記載された文書には、こんな項目が並んでいた。
1.クラブ名:
2.回答者:
3.クラブの雰囲気
4.部活動のやり甲斐・魅力
5.今年の活動の目標・抱負
なるほど、質問の項目に過不足はないと思うけど……。
「こういうアンケート形式の質問は、ちょっと、お硬い感じの回答になってしまわないかな?」
竜司や佐倉さん、白草さんのように、突飛な企画を思いついたり実行できるタイプではないボクが意見することが憚られるのは承知の上で言わせてもらえば、この質問項目だと、完成した動画が地味な内容にならないか、少し気になった。
ただ、天竹さんをはじめ、文芸部のみんなは、そうしたことは、あまり気にならないようで、
「その点は、あまり心配していません。回答者の許可が取れたら、インタビューは、録画形式で行おうと考えていますし、なるべく、リラックスして回答してもらえるような雰囲気を作るようにします。その内容に、部活動のようすを撮影した映像を挿し込めば、見映えも問題ないと思います」
動画の編集については自分に一任されると思っていたけど、文芸部の方でも、映像の完成形までイメージしていてくれているのは心強い。
「そっか……それなら、インタビューのメモ用と録画用に、タブレットやノートPCが、最低二台は必要になりそうだね」
「そうですね。あと、録画を行うクラブに関しては、黄瀬くんに、インタビューの撮影係をお願いしたいのですが、構いませんか?」
「うん! もちろん、そのつもりだよ。基本的にカメラは固定で録画することになると思うけど、機材の準備は、ボクたちの専門だからね!」
ボクが、天竹さんの依頼を快諾すると、取材インタビューに関する大まかな内容が決まった。
その他の活動風景の撮影方法については、各クラブと相談の上で決定することになると思うので、ここからは、インタビュー取材のリハーサルを行うことにする。
文芸部のメンバーが、取材者として、インタビューの相手と、どのように会話するかロールプレイングで実践しようということになった。
各クラブの代表者になりきったメンバーに対して、インタビュアー役は、相手に質問を重ねていく。
撮影者として、録画を行いながら観察していると、部長の天竹さんは、落ち着いた口調で相手をリラックスさせながら、話しを聞き出す術に長けていることがわかった。
「葵は、こういう取材に向いてるよね……そう思わない、黄瀬くん?」
録画中の動画に音声が入らないよう気を使いながら、石沢さんが、ボクに語りかけてくる。
だまって、二度うなずいたあと、彼女に返答する。
「そうだね……インタビューを受ける相手も、とても話しやすそうだ」
文芸部の部長さんの頼もしい姿を眺めながら、ボクは自分の気持ちの中に、この取材が楽しいものになるんじゃないか、という期待が膨らんできていることに気づいた。
結果から言うと、どちらのクラブでも、コーラス部と同じように好い感触を得ることができたので、明るい気分で図書室に戻る。
それは、文芸部の他の部員さんたちも同じだったようで、活動場所に帰ってきた四人の表情は、前日とは異なり、晴れやかなものだった。
「部長、今日はキチンと、私たちのお話しを聞いてもらえましたよ!」
「美術部と家庭科クラブ、コンピュータークラブからは、取材の許可をもらって来ました!」
一年生の井戸川さんと高瀬さんが、嬉しそうに報告する。
「茶道部・華道部・書道部からも、前向きな返答をもらっているよ」
「黄瀬くん制作の動画が、効果抜群だったみたい」
ボクらと同じ学年の今村さんと、石沢さんも朗らかな表情で、本日の成果を伝えてくれた。
「みんな、成果報告ありがとう! はるか、なつみ、訪問した結果と内容をスプレッドシートにまとめておいてくれない?」
天竹さんが、指示を出すと、
「オッケー!」
「ラジャ!」
石沢さんと今村さんは、快活に応じてタブレット端末を取り出した。
「今日は、前向きなミーティングができそうだね?」
ボクが、天竹部長に声をかけると、彼女も朗らかな表情で、
「それは、みんなの顔色が物語っていますね」
と、嬉しそうに答える。
いつもなら、文芸部は活動を切り上げている時間のようだけど、チーム全体が前向きな気持ちで図書室に戻ってきたため、このまま、取材の方向性を決めるミーティングに入ることにした。
その冒頭で、ボクは、文芸部のメンバーに気になっていたことを聞いてみる。
「最初に確認しておきたいんだけど……実際に、各クラブにインタビューをさせてもらうとして、どんなことを聞き出すか、具体的に決まっているの?」
こんなボクの問いかけには、部長さんが、すぐに答えてくれた。
「はい! 所属するクラブの雰囲気や、部での体験をとおしてのやり甲斐や魅力などを話してもらったうえで、今年の活動の目標や抱負を話してもらおう考えています。もう取材用の資料もできているんですよ」
そう言って、彼女は、スプレッドシートの確認用に起動させていたタブレット端末の画面をこちらに向けて、Googleドキュメントで作成した取材用メモを見せてくれた。
ドキュメントのファイルに記載された文書には、こんな項目が並んでいた。
1.クラブ名:
2.回答者:
3.クラブの雰囲気
4.部活動のやり甲斐・魅力
5.今年の活動の目標・抱負
なるほど、質問の項目に過不足はないと思うけど……。
「こういうアンケート形式の質問は、ちょっと、お硬い感じの回答になってしまわないかな?」
竜司や佐倉さん、白草さんのように、突飛な企画を思いついたり実行できるタイプではないボクが意見することが憚られるのは承知の上で言わせてもらえば、この質問項目だと、完成した動画が地味な内容にならないか、少し気になった。
ただ、天竹さんをはじめ、文芸部のみんなは、そうしたことは、あまり気にならないようで、
「その点は、あまり心配していません。回答者の許可が取れたら、インタビューは、録画形式で行おうと考えていますし、なるべく、リラックスして回答してもらえるような雰囲気を作るようにします。その内容に、部活動のようすを撮影した映像を挿し込めば、見映えも問題ないと思います」
動画の編集については自分に一任されると思っていたけど、文芸部の方でも、映像の完成形までイメージしていてくれているのは心強い。
「そっか……それなら、インタビューのメモ用と録画用に、タブレットやノートPCが、最低二台は必要になりそうだね」
「そうですね。あと、録画を行うクラブに関しては、黄瀬くんに、インタビューの撮影係をお願いしたいのですが、構いませんか?」
「うん! もちろん、そのつもりだよ。基本的にカメラは固定で録画することになると思うけど、機材の準備は、ボクたちの専門だからね!」
ボクが、天竹さんの依頼を快諾すると、取材インタビューに関する大まかな内容が決まった。
その他の活動風景の撮影方法については、各クラブと相談の上で決定することになると思うので、ここからは、インタビュー取材のリハーサルを行うことにする。
文芸部のメンバーが、取材者として、インタビューの相手と、どのように会話するかロールプレイングで実践しようということになった。
各クラブの代表者になりきったメンバーに対して、インタビュアー役は、相手に質問を重ねていく。
撮影者として、録画を行いながら観察していると、部長の天竹さんは、落ち着いた口調で相手をリラックスさせながら、話しを聞き出す術に長けていることがわかった。
「葵は、こういう取材に向いてるよね……そう思わない、黄瀬くん?」
録画中の動画に音声が入らないよう気を使いながら、石沢さんが、ボクに語りかけてくる。
だまって、二度うなずいたあと、彼女に返答する。
「そうだね……インタビューを受ける相手も、とても話しやすそうだ」
文芸部の部長さんの頼もしい姿を眺めながら、ボクは自分の気持ちの中に、この取材が楽しいものになるんじゃないか、という期待が膨らんできていることに気づいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる