初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第3章〜裏切りのサーカス〜⑪

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 吹奏楽部へのインタビュー取材が終了して図書室に戻ると、時計の針は6時を回っていた。
 
 必要なら、最終下校時刻の午後8時まで居残りをするボクたちの広報部と違って、普段の文芸部なら、とっくに帰り支度をしている時間帯なのだろうけど、この日は、約一週間をかけて、ふたつのグループに別れてインタビュー取材をしてきた結果を持ち寄って、内容をまとめるためのミーティングを行うことになっている。

「みんな、お疲れさま。インタビュー取材を終えた感想は、どう?」

 天竹さんにしては、ずいぶんとアバウトな質問の仕方だな、と思ったけど、ボクの感じ方に反して、文芸部のメンバーは、部長さんの問いかけに即座に反応する。

「思っていた以上に、面白い話しが聞けたと思うよ~」

「みんな、積極的に話しをしてくれて、協力的だったよね!」

「他のクラブの人たちも、こんなに熱い想いを持って活動してるんだな、って、ちょっと感動しちゃいました」

 ボクや天竹さんとは、別のグループとして取材にあたってくれた石沢いしざわさん、今村いまむらさん、井戸川いどがわさんが、次々に感想を口にした。

 彼女たちの表情と言葉から判断すると、ボクたちと同じように、今回の各クラブへのインタビュー取材に、かなりの手応えを感じているようだ。

 さらに、彼女たちに続いて、ボクや天竹さんと一緒に取材をしていた高瀬たかせさんが、発言する。
 
「たしかに! 私も、色んなクラブの代表者さんのお話しが聞けて、とても良かったと感じてます! とくに、最後に訪問した吹奏楽部で、いいお話しが聞けたと思っています。ですよね、黄瀬先輩?」

 いきなり、下級生から話しを振られて、少しばかり面食らったボクは、しどろもどろになりそうなところをなんとか、取り繕って返答する。

「そ、そうだね……自分たちのこれからの活動だけじゃなくて、お世話になった先輩たちへの恩返しを考えているっていうのは、素晴らしいことだな、って思ったよ」

 ボクの返答に、別行動のグループだった石沢さんが、たずねてくる。

「先輩たちへの恩返し、ってどういうこと?」

 彼女の問いかけに対して、すぐに反応できなかったボクに変わって、取材メモを参考に天竹さんが答えてくれる。
 文芸部の部長さんは、高瀬さんが記載したメモを確認しながら、

 ・3月に卒業した先輩たちが、感染症の影響で主要な大会や演奏会が相次いで中止に追い込まれて、最後の一年間は、まともにブラスバンドの活動ができなかったこと。
 
 ・その卒業生が、紅野さんたちを熱心に指導し、演奏力の向上に努めてくれたこと。
 
 ・上級生たちへの感謝と御礼を込めて、紅野さんたちが、卒業した先輩たちとの交流演奏会を企画したこと。

を端的に説明する。
 さらに、彼女は、クラブの代表者と顧問の先生の承認も得て、卒業生との交流演奏会が、今月末の日曜日に開催される予定であることをつけ加えた。

 天竹さんの説明を受けて、今村さんが、彼女たちのグループの取材メモをめくりながら、
 
「へぇ~、吹奏楽部は、そんなことを考えてたんだ。たしかに、私たちが、取材した演劇部と茶道部・華道部・書道部でも、卒業した先輩たちに対する想いを話してくれてたよね……」

と、同意すると、彼女に同行した石沢さんと井戸川さんも、しきりにうなずいて賛同の意を示した。

「吹奏楽部のこのお話し、私たちが取材させてもらったクラブにも、伝えることができたらイイですね……もしかしたら、他のクラブでも、今年の活動の参考にしてもらえるかも……」

 一年生の井戸川さんがつぶやくように言うと、天竹さんが、身を乗り出して、彼女にしては珍しく、少し興奮気味に語る。

「それ、良いかも知れないね! 今回の動画コンテストとは直接的に関係ないかも知れないけど……せっかく、取材をさせてもらって仲が良くなった相手もいると思うし……自分たちが、良いと感じたことを他のクラブとも共有できたら素敵だと思わない?」

 部長さんの一言で、文芸部のメンバーは、

「うん、そうだね! いいかも!」

「今度の撮影のときに、みんなに話してみよう!」

と、盛り上がっている。
 
 親友のアイデアが他の部員にも認められたことが嬉しかったのだろう、天竹さんの言葉に活気づく図書室内だけど、ボクには、現状を楽観できない理由があった。

 8つのクラブへの取材の結果、どこのクラブにも共通した想いや意気込みを持っていることは伝わってきた。

 ただし、それを一言でまとめて映像として表現するすべを、ボクは、まだ見つけることができていない。

 白草さんや竜児たちのグループは、すでに、SNS上の既存アカウントや新規アカウントを使って、独自の宣伝活動を始めている。
 特に、白草さんとダンス部のプロペラ・ダンスの練習風景は、最初の投稿後、三日も経たない間にインフルエンサーの新ダンス動画として、ネットニュースに取り上げられるほど、注目を集め始めていた。
 
 事前の宣伝対策をまったく打てていないボクたちは、本番の上映会による一発勝負に頼るほかない。

 そして、動画コンテストの投票数が最下位になれば、『鼻うがいの撮影』という地獄が待っている。
 紅野さんや天竹さんをそんな目に合わせるわけにはいかない、という最低限の責任感は、ボクにもある。
 
 そんなことを考えつつ、映像編集のカギになる言葉を探しながら、腕組みをして天井を見上げていると、ついさっきまで、文芸部のみんなと表情をほころばせていた天竹さんが、心配そうな表情でたずねてきた。

「どうしたんですか、黄瀬くん? 難しい顔をしているようですが……」

「いや……みんなのおかげで、今回の映像のコンセプトのようなモノはつかみかけているんだけど……なにか、キャッチコピーのようなフレーズが、ボクの中に降りてこないかなと思ってね……取材させてもらったクラブの人たちをはじめ、ボクたちが伝えたい言葉をなにか一言で表せれば良いんだけど……」

 ボクは返答しつつ、内心でため息をつく。

(思えば、こういうのは竜司の役目なんだよなぁ……)

 今回、Vtuberのキャラクターを使って広報活動を行う友人は、こういったときに、

「これって、つまり、こういうことだよな……」

と、コンセプトなり、キャッチコピーになりそうな言葉を一言でまとめてくれる。

 ボクは、そのフレーズをテーマにして、映像を編集する機会が多かった。
 そんな無二の親友の不在を嘆いていることを悟られないように、考えを巡らせていると、

「なるほど、キャッチコピーですか? 本のカバーの帯に書かれているような言葉と考えて良いですか?」

と、再び文芸部の部長さんがたずねてくる。

「うん……そうだね。天竹さんたちも、なにか良い言葉を思いついたら、知らせてくれないかな?」

 そうお願いをしたうえで、ボクは、これまで頭の片隅に放置していた、鳳花ほうか部長の

「もしも、活動中に迷うことがあれば、ここに来なさい。私で良ければ、いつでも相談に乗るから」

という言葉を思い出していた。
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