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第四部
第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜⑪
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5月らしい絶好の天気に恵まれた日曜日――――――。
海風が心地よい海岸沿いのサイクリングロードに沿って、自転車で集合場所の石宮浜総合公園に到着すると、そこには意外な人物が立っていた。
「やあ、竜司! 教室の外で会うのは、久しぶりだね」
ニコニコと笑いながら声をかけてきたのは、無二の親友であった。
「壮馬、なんでお前がココに居るんだ? 今日は、バスケ部主催のバーベキュー・パーティーだぞ?」
うさん臭い人間にそうぐうしたときのような表情でたずねると、壮馬は、心外だと抗議するように応じる。
「なんだよ、校内で話題になってる不審者を見るような目つきで見て! ボクは、鳳花部長に頼まれて、バスケ部の野外パーティーの取材に来たんだぞ!」
「そうそう、広報部の花金さんから、バーベキュー・パーティーを取材したいから撮影係の二年生を派遣するって連絡があったんだ」
壮馬の反論に呼応するように、女子バスケ部のキャプテンである林先輩が会話に加わってきた。
「私は、てっきり黒田くんのことを言ってると思ってたんだけど……まあ、食材はタップリあるし、会費も広報部からもらえることになってるから、遠慮なく食べて行ってよ」
笑顔で語る女子の先輩に対して、それ以上の満面の笑みで、壮馬は答える。
「ありがとうございま~す!」
(まったく、普段の取材活動のときも、それくらい愛想よくしろよ……)
いつも、広報部で他のクラブに取材に行くときは、ほとんど笑顔を見せない親友に、オレは心のなかでツッコミを入れる。
こいつは、異性に対しては草食系だが、食べ物の好みは、完全な肉食系なのだ。
痩せ型の体型のわりに、焼き肉などを食べに行ったとき、肉に食いつく姿は、普通の十代男子以上に豪快である。
まあ、その食の嗜好を見越しているのか、壮馬に、休日無料奉仕の仕事を振る鳳花部長も鳳花部長だが……。
他のクラブに対する、我が広報部の食い込みぶりに関心しつつ、
「部外者なのに、参加させてもらって、ありがとうございます」
と、林先輩や渡辺先輩にお礼を言ってから、男子メンバーに混じって、火おこしなどを手伝う。
着火剤の周辺に、空気が入りやすいよう工夫して組んだ木炭を置き、点火棒(通称:チャッカ◯ン)で火をつけると、炭の焼ける香りが徐々に強くなっていく。
「あ、火おこし、やってくれてるんだ! 黒田、ありがと」
明るい笑顔で話しかけてきた山吹に、
「こっちこそ、誘ってくれて、ありがとう。こんな晴れた日に外でバーベキューが出来るのは最高だな」
と、応じると、彼女も、「だね!」と、満面の笑みを返す。
「黒田、食材は、だいたい準備できたみたいだよ」
こちらは、女子のメンバーと一緒に野菜などの切り分けを行っていた緑川も声をかけてきた。
シロの考案したルーティーンや、オレが読みふけっている『ザ・ゲーム』に書かれていることによれば、ここはあえて、男子メンバーと話しておくべきだが、いまの緑川には、もう、そんな小細工などは必要ないのだろう。
「おう! サンキュー」
クラスメートに返答しながら、オレは炭火に目を向けた。
着火剤の火が落ち着いてきて、炭に火が移ったので、うちわで空気を送る。火が上がったら空気を送るのをやめ、落ち着いたら再び空気を送る、という工程を繰り返す。
炭の八割ぐらいに火が移ったので、炭を全体に広げていく。その上にさらに大きめの炭を乗せて、また、うちわで空気を送る。
何度か火が上がり、うちわを止める、空気を送るという作業を繰り返すと、再び八割くらいまで、炭に火が移った。
これで、食材を焼く準備は完了だ。
「こっちのコンロは、準備できましたよ~!」
先輩たちに声をかけると、
「こっちも、OKッス!」
と、同じ学年の吉井からも応答があった。
「よし、じゃあ始めるか! みんな、コップにドリンクを注いでくれ!」
渡辺先輩の号令を合図に、参加メンバーが、それぞれの好みのドリンクのペットボトルを手に取り、コップに注いでいく。
全員の準備が整ったのを見計らった渡辺キャプテンは、男女合わせて総勢20名以上の参加メンバーに向かって声を上げる。
「今日は、新入部員歓迎会を兼ねたバーベキュー・パーティーに集まってくれてありがとう! 一年の新入部員も取材に来てくれたみんなも、いっぱい食べて、飲んで、話して、楽しんでくれ! それじゃ、いくぞ!」
キャプテンの声に合わせて、全員で、
「カンパ~イ!」
と、声を揃える。
乾杯を合図に、食材用トングを手にしたオレは、まだ火力が弱い場所に薄い肉を置いていく。
「さあ、焼けるのが早いから、どんどん取って行ってくれよ」
オレがバスケ部員たちに声をかけると、紙の平皿と割り箸を手にした林先輩が苦笑しながら寄ってきた。
「ゲストなのに、肉焼き担当をさせてしまってゴメンね、黒田くん」
「いやいや、焼き担当は慣れてるので……広報部のもう一人は、味見担当なので、オレは自分の役割に徹しますよ」
笑いながら答え、オレは、撮影用のデジタルカメラを置いて、早くも隣のコンロに張り付いている親友を指差す。
「スポーツじゃないけど、キミたち良いコンビだよね」
クスクスと笑いながら語る女子の上級生に返答する。
「こういうのも、もう慣れましたから……」
バーベキュー日和の天候に恵まれたことに感謝しながら、次々と網に肉を置く作業に没頭していたオレは、この集まりに誘ってくれた女子生徒が、乾杯したあとから姿を見せていないことに気づけないでいた。
海風が心地よい海岸沿いのサイクリングロードに沿って、自転車で集合場所の石宮浜総合公園に到着すると、そこには意外な人物が立っていた。
「やあ、竜司! 教室の外で会うのは、久しぶりだね」
ニコニコと笑いながら声をかけてきたのは、無二の親友であった。
「壮馬、なんでお前がココに居るんだ? 今日は、バスケ部主催のバーベキュー・パーティーだぞ?」
うさん臭い人間にそうぐうしたときのような表情でたずねると、壮馬は、心外だと抗議するように応じる。
「なんだよ、校内で話題になってる不審者を見るような目つきで見て! ボクは、鳳花部長に頼まれて、バスケ部の野外パーティーの取材に来たんだぞ!」
「そうそう、広報部の花金さんから、バーベキュー・パーティーを取材したいから撮影係の二年生を派遣するって連絡があったんだ」
壮馬の反論に呼応するように、女子バスケ部のキャプテンである林先輩が会話に加わってきた。
「私は、てっきり黒田くんのことを言ってると思ってたんだけど……まあ、食材はタップリあるし、会費も広報部からもらえることになってるから、遠慮なく食べて行ってよ」
笑顔で語る女子の先輩に対して、それ以上の満面の笑みで、壮馬は答える。
「ありがとうございま~す!」
(まったく、普段の取材活動のときも、それくらい愛想よくしろよ……)
いつも、広報部で他のクラブに取材に行くときは、ほとんど笑顔を見せない親友に、オレは心のなかでツッコミを入れる。
こいつは、異性に対しては草食系だが、食べ物の好みは、完全な肉食系なのだ。
痩せ型の体型のわりに、焼き肉などを食べに行ったとき、肉に食いつく姿は、普通の十代男子以上に豪快である。
まあ、その食の嗜好を見越しているのか、壮馬に、休日無料奉仕の仕事を振る鳳花部長も鳳花部長だが……。
他のクラブに対する、我が広報部の食い込みぶりに関心しつつ、
「部外者なのに、参加させてもらって、ありがとうございます」
と、林先輩や渡辺先輩にお礼を言ってから、男子メンバーに混じって、火おこしなどを手伝う。
着火剤の周辺に、空気が入りやすいよう工夫して組んだ木炭を置き、点火棒(通称:チャッカ◯ン)で火をつけると、炭の焼ける香りが徐々に強くなっていく。
「あ、火おこし、やってくれてるんだ! 黒田、ありがと」
明るい笑顔で話しかけてきた山吹に、
「こっちこそ、誘ってくれて、ありがとう。こんな晴れた日に外でバーベキューが出来るのは最高だな」
と、応じると、彼女も、「だね!」と、満面の笑みを返す。
「黒田、食材は、だいたい準備できたみたいだよ」
こちらは、女子のメンバーと一緒に野菜などの切り分けを行っていた緑川も声をかけてきた。
シロの考案したルーティーンや、オレが読みふけっている『ザ・ゲーム』に書かれていることによれば、ここはあえて、男子メンバーと話しておくべきだが、いまの緑川には、もう、そんな小細工などは必要ないのだろう。
「おう! サンキュー」
クラスメートに返答しながら、オレは炭火に目を向けた。
着火剤の火が落ち着いてきて、炭に火が移ったので、うちわで空気を送る。火が上がったら空気を送るのをやめ、落ち着いたら再び空気を送る、という工程を繰り返す。
炭の八割ぐらいに火が移ったので、炭を全体に広げていく。その上にさらに大きめの炭を乗せて、また、うちわで空気を送る。
何度か火が上がり、うちわを止める、空気を送るという作業を繰り返すと、再び八割くらいまで、炭に火が移った。
これで、食材を焼く準備は完了だ。
「こっちのコンロは、準備できましたよ~!」
先輩たちに声をかけると、
「こっちも、OKッス!」
と、同じ学年の吉井からも応答があった。
「よし、じゃあ始めるか! みんな、コップにドリンクを注いでくれ!」
渡辺先輩の号令を合図に、参加メンバーが、それぞれの好みのドリンクのペットボトルを手に取り、コップに注いでいく。
全員の準備が整ったのを見計らった渡辺キャプテンは、男女合わせて総勢20名以上の参加メンバーに向かって声を上げる。
「今日は、新入部員歓迎会を兼ねたバーベキュー・パーティーに集まってくれてありがとう! 一年の新入部員も取材に来てくれたみんなも、いっぱい食べて、飲んで、話して、楽しんでくれ! それじゃ、いくぞ!」
キャプテンの声に合わせて、全員で、
「カンパ~イ!」
と、声を揃える。
乾杯を合図に、食材用トングを手にしたオレは、まだ火力が弱い場所に薄い肉を置いていく。
「さあ、焼けるのが早いから、どんどん取って行ってくれよ」
オレがバスケ部員たちに声をかけると、紙の平皿と割り箸を手にした林先輩が苦笑しながら寄ってきた。
「ゲストなのに、肉焼き担当をさせてしまってゴメンね、黒田くん」
「いやいや、焼き担当は慣れてるので……広報部のもう一人は、味見担当なので、オレは自分の役割に徹しますよ」
笑いながら答え、オレは、撮影用のデジタルカメラを置いて、早くも隣のコンロに張り付いている親友を指差す。
「スポーツじゃないけど、キミたち良いコンビだよね」
クスクスと笑いながら語る女子の上級生に返答する。
「こういうのも、もう慣れましたから……」
バーベキュー日和の天候に恵まれたことに感謝しながら、次々と網に肉を置く作業に没頭していたオレは、この集まりに誘ってくれた女子生徒が、乾杯したあとから姿を見せていないことに気づけないでいた。
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