15 / 73
第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑬
しおりを挟む
ルートC・浅倉桃の場合
学生生活で、一度あるかないかというドラマティックな場面を吹奏楽部の顧問教師に邪魔され、
(おいおい、先生……生徒のために、空気を読んでくれよ)
という不満をなんとか隠し通したオレに対して、河野雅美は、
「あの……返事をもらうのは、いますぐでなくてイイから……」
と、言い残して、通学カバンを手にすると、そそくさと教室を去ってしまった。
廊下に飛び出した彼女を追ったが、すでに河野は、桜木先生とともに、音楽室の方に歩き出していたため、声をかけるのは、なんとなく憚られるような気がした。
ただ、廊下を歩いていくふたりの姿を見送る時に、桜木先生の方が、チラリとオレの方を振り向いたのが、気にはなったのだが……。
それでも、自分が気になっていた女子から、想いを告げられた、という事実は、保健体育の授業で習った自己肯定感や承認欲求といったオレの心理的欲求を満たしてくれるのに十分だった。
自分は、中学生になった頃からこれまで、自身の存在というモノに、まったく自信を持てなかったのだが、別々のセカイ線ながら、幼なじみの三葉との交際をスタートさせ、クラス委員の河野から友達以上の関係になっている現状をみるに、
(もしかして、オレって、結構モテるのか……?)
という勘違いをしてしまうのも、仕方ないことではないだろうか?
そんな風に、盆と正月どころか、クリスマスとハロウィンが一緒に来たかのような幸運に恵まれ、調子に乗った(という自覚は、自分にもあった)オレは、他にも魅力的なセカイはないかと探索を続ける。
後頭部をなでて、もうすっかり操作に慣れた『セカイ・システム』を呼び出すと、目の前には、いつものように、無数の惑星があらわれた。
せっかくだから、自分と親しく話している女子生徒との仲を深めてみようと考えたオレは、最初に、この『セカイ・システム』にアクセスした頃のことを思い出す。
(そう言えば、桃が同居人になっている惑星があったな……)
上級生に対しても物怖じせず発言し、ときに生意気な印象を受ける浅倉桃なのだが、そんな下級生が、自分のことを「お兄ちゃん……」と、呼ぶセカイも悪くはない。
思わず、ほおが緩むのを感じながら、オレは、名前を付けていた桃と同居しているセカイになっている惑星を見つけ出して、『ルートC・浅倉桃』と変更することにした。
とは言え、このルートでは、下級生との仲をさらに深めようとは考えていない。
中学生の頃から、親しく話す仲でもあるし、なんなら、三葉や河野以上に、互いを良く知る存在とも言えるが、それだけに、スキあらば、オレのことをイジり、非モテぶりをからかってくる彼女が、自分のことを異性として意識するようなことなど、あり得ないと感じているからだ。
とは言え、生まれてから、一人っ子で育ってきた自分に年齢の近い妹のような存在が、自宅に同居しているというシチュエーションは、かなり惹かれるモノがある。
そんなわけで、妹的存在の後輩と、ひとつ屋根の下で暮らすセカイを堪能するために、オレは、『ルートC』と名付けた惑星に降り立つ。
年齢の近い妹的存在が同居する暮らしとはどんなものか、期待に胸を震わせながら、しばらく、その生活を体験してみたのだが……。
こことは別のセカイの三葉と異なり、朝方に相手を起こすのは、オレの役目だった。
「起きろ、桃! 朝だぞ……」
そう言ってから、彼女のベッドに近づき、掛け布団の毛布を剥ぎ取ると、
「寒っ! なにすんの!?」
と、桃は絶叫したあと、手元にあった枕を思い切りオレに投げつけてきた。
呆然とするこちらの手から毛布をひったくて、ふたたびベッドで丸くなる同居人に対して、ため息をつきながら、オレは、顔面にクリーンヒットした枕を床から拾い上げて声をかける。
「そろそろ降りてこないと、ほんとに間に合わなくなるぞ」
そう言い残して、ベッドに枕を置き、桃を待つことなく、リビングに戻ることにする。
朝食を食べると、遅刻ギリギリのタイミングになるので、コーヒーとトーストを準備してダイニングテーブルに置く。
ちなみに、朝は和食派のオレは、とっくに味噌汁、白ご飯、納豆の朝食を済ませている。
また、前日のうちに用意しておいたおかずを詰め合わせたお弁当も、二人分の準備が整っている。
母親が仕事で、朝は早く、帰りが遅くなることが多いため、小学生の頃から料理することには慣れているので、これくらいのことは、苦にならないのだが……。
そうしているうちに、桃が自室として使っている二階の部屋から降りてきた。
低血圧のためか、それとも、冬の寒さのためか、寝起きから不機嫌オーラ全開の同居人は、こちらを一瞥することもないまま、ダイニングチェアに腰掛け、チビチビとトーストにかじりついている。
せめて、可愛らしいパジャマ姿の萌え袖で、コーヒーカップに口を付けているなら、少しは目の保養になろうというものだが――――――。
残念なことに、目の前の下級生かつ同居人は、可愛げのないシャツ姿で、ズルズルとコーヒーを啜っている。
(なんか、思ってたのと違う……)
いまだ、半覚醒状態の桃の姿をヤレヤレと眺めながら、オレは、今朝、何度目かになるため息をついて、登校の準備を整えることにした。
学生生活で、一度あるかないかというドラマティックな場面を吹奏楽部の顧問教師に邪魔され、
(おいおい、先生……生徒のために、空気を読んでくれよ)
という不満をなんとか隠し通したオレに対して、河野雅美は、
「あの……返事をもらうのは、いますぐでなくてイイから……」
と、言い残して、通学カバンを手にすると、そそくさと教室を去ってしまった。
廊下に飛び出した彼女を追ったが、すでに河野は、桜木先生とともに、音楽室の方に歩き出していたため、声をかけるのは、なんとなく憚られるような気がした。
ただ、廊下を歩いていくふたりの姿を見送る時に、桜木先生の方が、チラリとオレの方を振り向いたのが、気にはなったのだが……。
それでも、自分が気になっていた女子から、想いを告げられた、という事実は、保健体育の授業で習った自己肯定感や承認欲求といったオレの心理的欲求を満たしてくれるのに十分だった。
自分は、中学生になった頃からこれまで、自身の存在というモノに、まったく自信を持てなかったのだが、別々のセカイ線ながら、幼なじみの三葉との交際をスタートさせ、クラス委員の河野から友達以上の関係になっている現状をみるに、
(もしかして、オレって、結構モテるのか……?)
という勘違いをしてしまうのも、仕方ないことではないだろうか?
そんな風に、盆と正月どころか、クリスマスとハロウィンが一緒に来たかのような幸運に恵まれ、調子に乗った(という自覚は、自分にもあった)オレは、他にも魅力的なセカイはないかと探索を続ける。
後頭部をなでて、もうすっかり操作に慣れた『セカイ・システム』を呼び出すと、目の前には、いつものように、無数の惑星があらわれた。
せっかくだから、自分と親しく話している女子生徒との仲を深めてみようと考えたオレは、最初に、この『セカイ・システム』にアクセスした頃のことを思い出す。
(そう言えば、桃が同居人になっている惑星があったな……)
上級生に対しても物怖じせず発言し、ときに生意気な印象を受ける浅倉桃なのだが、そんな下級生が、自分のことを「お兄ちゃん……」と、呼ぶセカイも悪くはない。
思わず、ほおが緩むのを感じながら、オレは、名前を付けていた桃と同居しているセカイになっている惑星を見つけ出して、『ルートC・浅倉桃』と変更することにした。
とは言え、このルートでは、下級生との仲をさらに深めようとは考えていない。
中学生の頃から、親しく話す仲でもあるし、なんなら、三葉や河野以上に、互いを良く知る存在とも言えるが、それだけに、スキあらば、オレのことをイジり、非モテぶりをからかってくる彼女が、自分のことを異性として意識するようなことなど、あり得ないと感じているからだ。
とは言え、生まれてから、一人っ子で育ってきた自分に年齢の近い妹のような存在が、自宅に同居しているというシチュエーションは、かなり惹かれるモノがある。
そんなわけで、妹的存在の後輩と、ひとつ屋根の下で暮らすセカイを堪能するために、オレは、『ルートC』と名付けた惑星に降り立つ。
年齢の近い妹的存在が同居する暮らしとはどんなものか、期待に胸を震わせながら、しばらく、その生活を体験してみたのだが……。
こことは別のセカイの三葉と異なり、朝方に相手を起こすのは、オレの役目だった。
「起きろ、桃! 朝だぞ……」
そう言ってから、彼女のベッドに近づき、掛け布団の毛布を剥ぎ取ると、
「寒っ! なにすんの!?」
と、桃は絶叫したあと、手元にあった枕を思い切りオレに投げつけてきた。
呆然とするこちらの手から毛布をひったくて、ふたたびベッドで丸くなる同居人に対して、ため息をつきながら、オレは、顔面にクリーンヒットした枕を床から拾い上げて声をかける。
「そろそろ降りてこないと、ほんとに間に合わなくなるぞ」
そう言い残して、ベッドに枕を置き、桃を待つことなく、リビングに戻ることにする。
朝食を食べると、遅刻ギリギリのタイミングになるので、コーヒーとトーストを準備してダイニングテーブルに置く。
ちなみに、朝は和食派のオレは、とっくに味噌汁、白ご飯、納豆の朝食を済ませている。
また、前日のうちに用意しておいたおかずを詰め合わせたお弁当も、二人分の準備が整っている。
母親が仕事で、朝は早く、帰りが遅くなることが多いため、小学生の頃から料理することには慣れているので、これくらいのことは、苦にならないのだが……。
そうしているうちに、桃が自室として使っている二階の部屋から降りてきた。
低血圧のためか、それとも、冬の寒さのためか、寝起きから不機嫌オーラ全開の同居人は、こちらを一瞥することもないまま、ダイニングチェアに腰掛け、チビチビとトーストにかじりついている。
せめて、可愛らしいパジャマ姿の萌え袖で、コーヒーカップに口を付けているなら、少しは目の保養になろうというものだが――――――。
残念なことに、目の前の下級生かつ同居人は、可愛げのないシャツ姿で、ズルズルとコーヒーを啜っている。
(なんか、思ってたのと違う……)
いまだ、半覚醒状態の桃の姿をヤレヤレと眺めながら、オレは、今朝、何度目かになるため息をついて、登校の準備を整えることにした。
2
あなたにおすすめの小説
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる