平行世界でハーレム生活を堪能していたら彼女たちがひとつの世界線に集まってきました

遊馬友仁

文字の大きさ
71 / 73

第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜⑭

しおりを挟む
「今日こそ、目が覚めるでしょうか……?」

「担当の先生によると、『昨日から、検査の数値が良くなった』って、ことだけど……もう半年以上も、このままだからね……」

 薄ボンヤリとした意識の中で、オレの良く知るふたりの声が聞こえたような気がした。

もも……かあさん……そこに居るのか?」

 頬や口元の筋肉も衰えてしまっていたのだろう……おそらく、リハビリが必要だと思われる動かしにくなっている唇から、そう言葉を発すると、

「「えっ!?」」

という、ふたりの声が重なった。

 ぼうっとした視界の中、まぶしさをこらえながら目を開けると、記憶どおりの声の主の表情が見える。

「なんだよ、ふたりとも……そんな驚いた顔してさ」

 声を発するのと同じく、表情筋も衰えてしまっているので、上手く笑えたのかわからない。
 そんな自身の身体能力の劣化を実感しつつも、自分の発言に対して、

(いや、7ヶ月も眠ったままなら、ふたりの反応も当然だよな……)

セルフでツッコミを入れられるくらいには、脳のはたらきは、活性化している。
 
「くろセンパイ……!」

雄司ゆうじ……」

 続けて声をあげるふたりに、ゆっくりとうなずいて応答すると、母親が後輩女子に対して、指示を出した。

ももちゃん、ちょっと、このバカのようすを見ていて! 私、先生と看護師さんを呼んでくるから!」

 その声に、何度もうなずいたももは、母が出ていったあと、オレの左手を握って言葉をかけてきた。

「センパイ……ようやく、目を覚ましてくれて、ホントに良かった……ワタシの誕生日に目覚めるなんて、サプライズしすぎですよ……」

 涙ぐみながら語りかける彼女に、

もも、心配かけちまったな……」

と返答し、感謝を示すため、両手で握り返そうとするものの、右手を自分の左側に動かすことすら困難なことがわかる。

(これは、クリーブラットに語った以上の努力が必要かもな……)

 と、今後の我が身に降りかかるハードモードぶりを考えて苦笑する。
 その直後、母親が看護師を伴って病室に戻ってきて、慌ただしく検査の日程調整などが始まった。

 そして、一週間後――――――。

 初期のリハビリの経過が順調だということで、友人が面会に訪ねてきてくれた。
 病室に訪れた冬馬とうまと、しばらく、ふたりで話したいと頼むと、母と看護師さんは、快く席を外してくれる。

 親友とふたりきりになったところで、声をかけてみる。

「ゲルブ、聞いてるか? 冬馬とうまとふたりになったことは見えてるんだろう?」

 オレの問いかけの中に聞き慣れない名前が出てきたからだろう、友人は一瞬、怪訝な顔色になったが、少しだけ痙攣するように身体を震わせたあと、にこやかな表情で応じる。

「良くわかったね、玄野雄司くろのゆうじ。体調も良いみたいでなによりだ」

「ありがとう。わざわざ、並行世界から見舞いに来てくれて、すまないな」

「お礼を言ってもらえるほどのことはないよ。ボクは、銀河連邦捜査官としての職務を果たしに来ただけだからね」

「そうか……相変わらず仕事熱心だな。で、今日はどんな用なんだ?」

 あくまで、任務に忠実な公務員ぶりの苦笑しつつたずねると、親友の姿を借りた捜査官は、穏やかな笑みのまま応答する。

「目覚めた後のキミの経過観察と、トリップ能力の確認だよ」
 
 予想していたとおりの返答があったので、こちらも、あらかじめ準備していた答えを返す。

「体調も精神状態もいたって良好だ。なんなら、担当医にも確認してくれて良いぞ。あと、の方は、きれいサッパリ消えちまったみたいだ」

 実際、ようやく右腕を後頭部までスムーズに動かすことができるようになったタイミングで、事故後に覚醒したトリップ能力が使用できるか試してみたのだが、目の前に、一瞬だけ巨大な天体が見えたものの、巨大ディスプレイの電源がオフになったかのようにプツンと画面が真っ黒になって、すぐに入院中の病室の光景に切り替わった。

 オレの返答に、「そうか……」と短く応じたゲルブは、

「だけど、一応、念のために……」

と、ことわりを入れて、懐からトリップ能力の有無を見極めるトリッパー・ジャッジメント・マシンT・J・Mのデバイスを取り出し、こちらに向けて照射する。

 端末から放たれたレーザー光線の色は、青のまま変化はなかった。

「なるほど……キミの言ったとおりだね。捜査官としては、トラブルの種が減って、めでたしめでたしだけど……ボク個人としては、イレギュラーな存在という特異な観察対象がいなくなってしまうのは、ちょっと寂しいな」

 ゲルブは、皮肉交じりの表情で語るが、その言葉には、並行世界のトリッパー仲間が居なくなる喪失感が感じられたのは、自分のうぬぼれだろうか?

「そっか……こっちからゲルブに会いに行くのは難しくなったけど、良かったら、たまには、オレたちのセカイにも遊びに来てくれよ。アンタが身体を借りる冬馬とうまには、オレから何か奢っておくよ」

 そう返答すると、彼は笑顔で応じる。

「あぁ、許可が降りたら、そうさせてもらうよ。タイミングが合えば、ブルームやクリーブラットも一緒にね。キミも、浅倉桃あさくらももと一緒に卒業できるようにがんばりなよ」

 ゲルブの言葉には、こちらも「おう……!」と、笑顔でうなずき、握手を交わす。

 二学期から半年もの間あいらんど高校を長期欠席したオレには、見事に留年という結果が言い渡された。

 それでも、オレが、その処分をスンナリと受け入れ、四月から高校二年生をやり直す気持ちになったのは、異なるセカイで、同居人という側面も持っていた下級生の存在が大きい。

ももたちと、一年余分に高校生活を送れるなら、それも悪くない」

 自分に言い聞かせるように返答した言葉に、ゲルブも無言でうなずく。
 
 ふと、病室の窓に目を向けると、病院の中には、桃の花が見頃を迎えていた。
 
 季節は、三月の上旬。
 まだまだ、気温が低いは続いているが、春は、もう目の前に迫っている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜

妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。 男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。 現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。 そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。 しかし、ただの転生では終わらなかった―― 彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。 無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。 護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、 毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく…… 個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。 ――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。 そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。 「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」 恋も戦場も、手加減なんてしてられない。 逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...