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第1章
井戸って案外深いから気をつけろ
しおりを挟む秋月唯 16歳 高校一年
秋月家の次女。ちなみに秋月家は五男四女の大家族。
そんな私は剣道の強豪、城南高校で一年にして試合に出ずっぱり。
家庭の事情(貧乏)で稼げるモデルをやっている。
友人も多く家族も(貧乏だけど)仲良しでなんら不満はない。
そう、なんの不満もない。
「唯姉ー!!タツが井戸にあたしのランドセル落としたー!!」
「もー、なにやってんのー。意地悪する子は夕飯のおかず減らす約束だからね、覚悟おし」
「だってユウがー!」
「はいはい、後で聞いたげるから二階で洗濯物畳むの手伝ってきてー。ユウはランドセルとってきてあげるから夕飯の準備してて。」
喧嘩をしてぐずる弟と妹をなだめてから
玄関を出る。全く可愛いことこの上なし。
わが秋月家は古い一軒家で祖父と祖母、両親と合計九人の兄弟たちと住んでいる。
家の裏にはお稲荷さんを祀った小さい祠みたいな場所とその横にもう使っていない井戸がある。井戸の入り口は板で塞いではあるものの、退かそうと思えば退かせてしまう。
そこでよく遊んで危ないからと怒られたのを思い出した。
ガタン、と井戸の上の板を全て退かす。
井戸はすでに枯れていてそこまで深くない。
子供の頃はこの井戸がどこか違う怖い世界に繋がっていると本気で思っていて、怖かった。
体を乗り出して井戸の中を覗き込むと、奥に赤いランドセルがあるのが確認できた。
全く、取りに行くのは誰だと思ってるんだか...
しまい込んでいたハシゴを井戸の下に降ろして降りていく。
成長した後ってこんなに井戸が小さく、狭く感じるんだなぁ
懐かしくなっていたら、ハシゴが揺れて足を踏み外してしまった。
「う、ぉお!!」
なんとも可愛くない声を出して落下する。
あれ、結構下がったのに、ここの井戸、こんな深かったっけ...?
一瞬、目の前が真っ暗になった。
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