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第4章
若い子についていけない
しおりを挟むそういえば、光の試合って初めて見る気がする。練習はたまにみたりしたけど、テニスの試合は初めてだなー。ルールわかんないけど勝ちと負けくらいならわかる気がする。
撮影も無事終わり、光が教えてくれたテニスコートがある運動場へ向かう。
今日撮影終わったらアイルさんに謝りに行こうと思ってたんだけど、それは許されませんでした...
「え、案外広いしどのコートでやってるかわかんねー...」
ぼそ、とつい独り言をつぶやいてしまうくらいには広い。地図をみても何番コートで光試合してるかわからない。一応連絡しとくけどあんまり部活の邪魔はしたくないので到着したことを報告しておく。
とりあえずぐるぐるしてればつくかなーと一周してみることにする。
「さっき5番コートやったんやから次6番ちゃうんかい!意味わからん!!」
私がのんびり光を探してると、コート番号が書かれてる布にめっちゃ怒ってる関西弁の男の子がいて、うわぁリアル関西弁だーと思ったらその子の着ているジャージが自分の母校であり光の中学のものだったので声をかけてみる。
「あの、君三中の子だよね?」
「あ?」
「急に声かけてごめんね。私秋月唯っていいます。弟が君と同じ中学で今日試合見にきたんだけど、コート広くて迷っちゃったんだ。よければついてってもいい?」
「...秋月って...''あの''秋月か...!?」
「えっ、秋月って他にもいる?えーと...身長高くて、ちょっと目つき悪くていつもだるそうな子なんだけど」
声をかけてみるとかなり不機嫌なご様子。
少し長めの黒髪につり目が印象的で...この子も結構目つき悪いな。人のこと言えないけど。
あの秋月かって聞かれてもどの秋月かわからなかったのでとりあえず光の特徴を言ってみると驚いた顔がもっと驚いた顔になった。
「あ、姉貴...!?秋月の!?」
「うん。二個上だから高一だよ」
「嘘やろ!?姉さんあいつに弱みでも握られてるんやろ!?」
「血が繋がった兄弟だよ」
「あかん洗脳されとる!!」
「...理由はわからないけど信じられないのはわかった。弟のとこいけば兄弟ってわかると思うよー、で、三中って何番コートなの?」
「お、おぉ...6番コートのはずやねん、せやからさっきから5番のあたり探してんのに見つからんねん!俺の試合始まってまう!」
怒ったり驚いたり焦ったりと全力で表情が変わって面白い子だなーと眺めてたら今度はしょんぼりし始めてしまった。どうやらこの子も試合があるのに迷子らしい。こらこら引率者ーちゃんとしろー、まぁ私も助かったからいいけど。
しょぼくれてしまった彼の頭をつい癖で光にするように撫でてしまった。
「5番コートがちょうど端っこだから6番コートは向こうの道路渡ったとこって書いてあったよ。ほら、試合あるならしょげてないで急ご。」
「なっな、な、なんやて!それを早よ言わんかい!行くで!!」
「えっちょ、手っ」
入り口で見た地図を覚えていて良かった。
6番コートは道を挟んだあちら側だと教えてあげると彼は急に元気になり私の手を持って全力疾走でコートへ向かう。
手を掴まれてると走りにくい、と言おうと思ったが早すぎて何も言えず引きずられて行くような状態。この子足早いな。私も遅くはないはずなんだがついていくのがやっと...っていうか引きずられてる。
うん、まぁ、こういう中学生らしい子も可愛いよね、うん。
でも私はもーちょっと落ち着いてるほうが好みかな...と頭の中でつぶやいた。
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