洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉

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【非人類の恐怖】幽霊・呪い・宇宙人などの超常現象

第23話:てるてる坊主

今日、高校時代の友達、Tの葬式があった。
当時、Tや俺たちと一緒につるんでいたKも来ていた。
 
葬儀場で会ったとき、Kは苦笑いをしていた。
 
きっと、俺もしていたはずだ。
 
「正直さ、俺、来るの迷ったんだ」
 
Kがそう言ったから、「俺も」と返事した。
本当は来る気はなかった。
というより、来るのが怖かった。
 
けど、それよりもKに会いたかった。
Kが来ない可能性も高かったけど、それでも話を聞きたい気持ちが強かった。
 
それはKも同じだったようで、あっちも俺の話を聞きたかったようだ。
 
「「なんかおかしいことなかったか?」」
 
葬儀の後、俺たちは居酒屋に行き、席に案内されて座ると同時にお互い同じことを言った。
 
考えることは一緒だ。
お互い『次は自分じゃないか』と思っている。
 
「いや、ない。仕事も順調だし、彼女との仲も良好だ」
 
Kが先に質問に答えた。
俺も同じく、何もないと答える。
まあ、俺の場合、彼女はいないんだけど。
 
「Tってさ、自殺だったらしい。飛び降り」
「……やっぱり」
 
俺は怖くて聞けなかったけど、KはTの母親から聞き出したようだ。
Tは飛び降りだって俺も思ったけど、確かめるのが怖かった。
だから、あえて聞かなかった。
けど、そんなことは全く意味がないことだろう。
 
「Yに続いて、Tもか……」
 
俺たちが高校の時につるんでいたのは、俺、K、T、Yの4人だ。
そして、YとTが飛び降り自殺をしている。
 
次は自分の番だと考えるのは自然だろう。
 
「Tのおばさんに聞いたんだけどさ、あいつ、仕事で表彰されたばっかりだったんだって」
「……」
「自殺する3日前の話。で、次の休みには家族でお祝いしようなんて話してたらしい」
 
似ている。
Yのときも、自殺する理由が全くなかった。
会社で健康診断があるから、ダイエットを始めた矢先のことだったらしい。
 
「やっぱ、あいつの呪いなのかな?」
 
Kがポツリとそう言った。
俺はその言葉に答えずに、店員に熱燗を頼んだ。
 
とにかく暖かいものを飲みたかったのと、一気に酔いたかった。
 
俺たちは熱燗を飲み始めると、他愛ない話をした。
その日はYやTのこと、高校のことは一切しないで別れた。


あれは高校2年生の時の話だ。
俺やK、YやTとは中学の時から仲が良かったが、高校の2年生になったときに始めて4人全員が同じクラスになった。
そのこともあり、俺たちは学校ではもちろん、学校が終わった後や休み中も、しょっちゅう集まって遊んでいた。
 
いつも4人一緒で、気が大きくなっていたんだと思う。
時々、学校をサボったり、今では他人に言えないような悪いこともやったりした。
なんていうか、万引きとか覗きとか、そんなの。
 
でも、一番悪くてやっちゃいけないことは、イジメだった。
 
同じクラスにIっていう、不登校の奴がいた。
俺たちは最初、遊び半分で、Iの家を訪ねた。
 
友達だって嘘を付いたら、Iの母親は凄く喜んで、Iの部屋に入れてくれた。
 
それから俺たちはIをイジメ始めた。
誰かに言ったら、これをばら撒くなんて言って、Iの恥ずかしい写真を撮って脅したりした。
 
元々Iは不登校だったから、学校側にはバレないし、Iの母親は俺たちを完全に信用していた。
というより友達だって言うのをずっと信じていた。
 
Iを外に連れ出して、色々なことをさせた。
俺たちがしてきたようなことを全部。
 
そんなことを半年くらい続けたときだった。
 
俺たちは調子に乗って『大掃除』とか言って、あいつの部屋のものを全部捨てた。
 
Iは「これだけは許して」と言って、泣いて懇願してたものがあったけど、今ではなんだったか思い出せない。
 
当時の俺たちはそんなIを見て面白がり、念入りに壊して捨てた。
 
その次の日のことだ。
Iの家に行くと、Iの母親から「誰も部屋に入れるなって言って、閉じこもっちゃって」と言われた。
 
何回言っても、Iは俺たちと会おうとしなかった。
母親に「Iに写真のことを伝えてほしい」とお願いしたが、返って来た言葉は「好きにしろ」だった。
 
俺たちはIに会うことを諦めた。
そろそろ、Iをイジメることにも飽きてきたこともあった。
 
1週間もすると、俺たちはIのことを忘れ、次は何で暇つぶしをしようかと話していた。
 
そんなあるとき、ふとIの家の前を通ると、Iの部屋の窓に『てるてる坊主』が吊るしてあることに気づいた。
 
その日は暑いくらいの晴天だった。
というより、最近、雨なんて降っていなかった。
 
なんだろう?
 
ちょっと気になったが、すぐに忘れた。
 
またIの部屋の前を通ったら、またてるてる坊主が吊るされていた。
気のせいか、前に吊るしていたものよりも大きいてるてる坊主だ。
そして、その日も晴れだった。
 
俺はなんだか、そのてるてる坊主が気になり始めて、よくIの家の前を通るようになった。
毎日毎日、Iは部屋の窓にてるてる坊主を吊るしていた。
そして、それは日に日に大きくなっていく。
 
それはもう1メートルくらいになるんじゃないかって大きさになった頃だった。
 
その日のてるてる坊主は『逆さ』に吊るされていた。
 
なんであんなことをしてるんだ?
 
不思議な思いと、嫌な予感がした。
そして、俺の予感は当たった。
 
Yが階段から落ちて、頭を切った。
結構、深く切れて血が出たけど、命に別状はなかった。
 
俺はホッとした。
 
それからは俺は毎日、Iの部屋を見に行くようになった。
少しずつ大きくなるてるてる坊主を不気味に思いながら。
 
そして、またそのてるてる坊主が逆さまに吊るされていることがあった。
 
今度はTが段差で転んで、頭を切って血を流した。
 
次に逆さまに吊るされたときはKだった。
やっぱり、高いところから落ちて、頭を怪我した。
 
俺は怖くなって、そのことを3人に話した。
3人は信じなかった。
それで、4人で毎日、Iの部屋を見るようになった。
 
次に逆さまに吊るされたら俺の番だ。
そう思うと、凄く怖くなった。
 
でも、それは杞憂に終わった。
 
てるてる坊主が1.5メートルくらいになったときのことだった。
 
Iが自殺して、Iの家族が引っ越していった。
 
俺はホッとした。
これで俺の番はなくなったと。
 
俺たちは高校を卒業するころにはIのことをすっかり忘れていたのだった。
 
 
 
高校を卒業し、俺たち4人はみんなバラバラの大学に進学した。
最初の頃は連絡し合って、時々遊んでいたけど、次第に会わなくなっていった。
 
そして、就職し、日々の仕事に追われ、Kたちのことを忘れかけたときのことだった。
 
Yが自殺した。
 
その連絡が入ってきた。
葬儀場で俺、T、Kが集まった。
 
Yの家族からは、Yが自殺するような前触れは一切なかったと聞いたとき、俺はIのことを思い出した。
 
Tは懐かしそうに「いたな、そんなやつ」と笑った。
Kの方は顔をしかめ、Iの呪いじゃないかと疑っていた。
 
俺は怖くなって「偶然だって、偶然」と言って誤魔化した。
 
それで今度はTが自殺した。
心配しない方がおかしい。
 
俺は念のため、3ヵ所くらいにお祓いに行った。
お守りやお札も買い込んだ。
 
なるべく高いところに行くことも避けた。
心の中でIに何度も何度も謝罪した。
 
Iのことを調べて、お墓に直接謝罪に行った方がいいんじゃないかと思い始めたときだった。
 
Kが自殺したという連絡が入った。
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